9月2日(金)、映画「寄生獣」が中国全国の劇場で公開されました。中国映画市場にとっても日本映画にとっても画期的な出来事といえます。
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日本映画が中国の映画館で全国的に上映されることは多くありません。
中国では、映画館で公開できる外国映画の本数に制限があり、しかもその限られた「枠」の大部分がアメリカ映画に割当てられているので、アメリカ映画以外の外国映画が劇場公開されるケースは大変少ないです。
ただし、2015年あたりから少しずつ状況が変わり、日本映画が劇場公開される動きが出ていました。
2015年5月に中国で3D版ドラえもん映画『STAND BY MEドラえもん』が劇場公開されて大ヒットしたことが大きいです。これを契機に、日本側からの中国映画市場に対する関心も大幅に高まりました。
2016年1月には、「NARUTO」の映画版『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』(ボルト ナルト・ザ・ムービー)が大々的に公開され、2016年6月には有村架純の『ビリギャル』も劇場公開されています。
毎年6月に行われる上海映画祭の「日本映画ウィーク」では多くの新作日本映画が上映されており非常に人気がありますが、2016年は『世界から猫が消えたならなら』など最新の作品をもってきて「初の海外並行上映」を実施するなど、例年以上に力を入れていました。
日本映画の中国劇場進出がじわじわと進む中、まさかの「寄生獣」公開です。
中国では、政府機関(広電総局)による審査、すなわち検閲に通過しなければ映画を劇場公開することができません。
「寄生獣」が政府の審査に通過したことに誰もが驚き、中国メディアでは「奇跡の上映」などとも言われています。
2014年10月~翌年3月にかけて、アニメ版の「寄生獣」もテレビ放送されていました。
アニメ版は日本放送と並行して、中国動画大手サイト「youku&tudou」が正規版を配信していました。
ところが、2015年4月に中国政府機関(文化部)の指導により、配信停止処分を受けてしまったのです。
これは、日本アニメに対する「ブラックリスト通達事件」と呼ばれており、このとき名指しで指摘された「残響のテロル」「Blood-C」「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」ほか、「進撃の巨人」「東京グール」などとともに「寄生獣」も配信停止措置がとられました。
なぜ「寄生獣」が上映?と驚きの声が挙がっていますが、『STAND BY MEドラえもん』ヒットの実績のある山崎貴監督の作品であったことも大きいと思います。
中国公開版は、二部構成の作品だったところ、一本の作品(125分)に短縮されています。
つまり、ほぼ半分に縮められています。
そのため、大幅なカットが施されており作品の印象がかなり違っています。
最大の違いは、中国大陸版「寄生獣」には、重要なキャラクターである浦上が登場しません。浦上か関係する市役所包囲のシーンも大幅にカットされています。
その結果、ラストシーンが大幅に変更されています。
「え、ここで終わりなの!?」
と声を上げてしまうくらい驚愕のエンディングでした。
ですが、尺を半分に削り、浦上が登場しない以上、あの終わり方が一番自然かもしれません。
中国で公開するにあたり、過激なシーンがことごとくカットされるのではと懸念する声もありましたが、そういう観点からではなく、尺を半分に縮めることを目的にエピソードカットがなされています。
細部のエピソードがカットされ、主人公新一の変化に関する描写が省略されている部分があるので、作品のスケールが一回り小さくなっているようには感じられますが、かえって共感しやすいかもしれません。中国語字幕のクオリティもとても良かったです。
125分の尺に収められた中国バージョンは、新一の回想のような視点で編集されているように思います。
これはこれで、一本の作品としてまた違った解釈ができて面白いのではないでしょうか。
中国観衆の反応ですが、「寄生獣」は「ドラえもん」と違って万人に受け入れられるタイプの作品ではありません。
しかし、実際に鑑賞した人の評価は決して悪くありません。
作品テーマの深さ、染谷将太、深津絵里の演技、ミギーのキャラクター、CGの創意性などは高い評価と好感を寄せられています。
とはいえ、中国の映画市場が娯楽偏重であるため、興業的にどのような結果になるかはまだ何ともいえません。
9月3日時点の評価は10点満点中の8.4。54%の観衆が9点~10点をつけています。
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9月2日は9月の第一金曜日で、多くの新作が公開されましたが、「寄生獣」は4位となっています。
2016年9月3日の劇場公開映画ランキング 映画チケットサイトGewaraの統計
http://www.gewara.com/movie/
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1位:『スター・トレック BEYOND』(9月2日公開)
2位:『ジェイソン・ボーン(Jason Bourne)』(8月23日公開)
3位:『アイス・エイジ 5(Ice Age: Collision Course)』(8月23日公開)
4位:『寄生獣』(9月2日公開)
5位:『我們的十年 Days Of Our Own』(9月2日公開、中国映画)
1位から3位を占める作品はアメリカの3D・IMAX映画です。
視覚的な刺激を重視する、アトラクション的な楽しみ方が根付いてしまっているといえます。
「寄生獣」を皮切りに、より多くの日本映画が中国公開されるかもしれません。
日本でヒットしても海外市場では反応が良くないこともあり、その逆もありえます。
中国のスクリーンには、ハリウッド大作、CGを駆使しスターを大勢使った中国の大作映画が溢れているので、リアリティを重視する日本映画を観るとギャップを感じるはずです。
そのギャップを好む人と、受け入れられない人がいるはずです。
社会的情緒の変化に左右されるので、何が中国でウケるのか、何が売れるのか、どんなにマーケティングしても読めない部分があると思います。
中国で公開される日本映画が増えると、意外な作品がヒットしたりするのでは・・・と期待しています。

日本映画が中国の映画館で全国的に上映されることは多くありません。
中国では、映画館で公開できる外国映画の本数に制限があり、しかもその限られた「枠」の大部分がアメリカ映画に割当てられているので、アメリカ映画以外の外国映画が劇場公開されるケースは大変少ないです。
ただし、2015年あたりから少しずつ状況が変わり、日本映画が劇場公開される動きが出ていました。
2015年5月に中国で3D版ドラえもん映画『STAND BY MEドラえもん』が劇場公開されて大ヒットしたことが大きいです。これを契機に、日本側からの中国映画市場に対する関心も大幅に高まりました。
2016年1月には、「NARUTO」の映画版『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』(ボルト ナルト・ザ・ムービー)が大々的に公開され、2016年6月には有村架純の『ビリギャル』も劇場公開されています。
毎年6月に行われる上海映画祭の「日本映画ウィーク」では多くの新作日本映画が上映されており非常に人気がありますが、2016年は『世界から猫が消えたならなら』など最新の作品をもってきて「初の海外並行上映」を実施するなど、例年以上に力を入れていました。
日本映画の中国劇場進出がじわじわと進む中、まさかの「寄生獣」公開です。
中国では、政府機関(広電総局)による審査、すなわち検閲に通過しなければ映画を劇場公開することができません。
「寄生獣」が政府の審査に通過したことに誰もが驚き、中国メディアでは「奇跡の上映」などとも言われています。
2014年10月~翌年3月にかけて、アニメ版の「寄生獣」もテレビ放送されていました。
アニメ版は日本放送と並行して、中国動画大手サイト「youku&tudou」が正規版を配信していました。
ところが、2015年4月に中国政府機関(文化部)の指導により、配信停止処分を受けてしまったのです。
これは、日本アニメに対する「ブラックリスト通達事件」と呼ばれており、このとき名指しで指摘された「残響のテロル」「Blood-C」「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」ほか、「進撃の巨人」「東京グール」などとともに「寄生獣」も配信停止措置がとられました。
なぜ「寄生獣」が上映?と驚きの声が挙がっていますが、『STAND BY MEドラえもん』ヒットの実績のある山崎貴監督の作品であったことも大きいと思います。
中国公開版は、二部構成の作品だったところ、一本の作品(125分)に短縮されています。
つまり、ほぼ半分に縮められています。
そのため、大幅なカットが施されており作品の印象がかなり違っています。
最大の違いは、中国大陸版「寄生獣」には、重要なキャラクターである浦上が登場しません。浦上か関係する市役所包囲のシーンも大幅にカットされています。
その結果、ラストシーンが大幅に変更されています。
「え、ここで終わりなの!?」
と声を上げてしまうくらい驚愕のエンディングでした。
ですが、尺を半分に削り、浦上が登場しない以上、あの終わり方が一番自然かもしれません。
中国で公開するにあたり、過激なシーンがことごとくカットされるのではと懸念する声もありましたが、そういう観点からではなく、尺を半分に縮めることを目的にエピソードカットがなされています。
細部のエピソードがカットされ、主人公新一の変化に関する描写が省略されている部分があるので、作品のスケールが一回り小さくなっているようには感じられますが、かえって共感しやすいかもしれません。中国語字幕のクオリティもとても良かったです。
125分の尺に収められた中国バージョンは、新一の回想のような視点で編集されているように思います。
これはこれで、一本の作品としてまた違った解釈ができて面白いのではないでしょうか。
中国観衆の反応ですが、「寄生獣」は「ドラえもん」と違って万人に受け入れられるタイプの作品ではありません。
しかし、実際に鑑賞した人の評価は決して悪くありません。
作品テーマの深さ、染谷将太、深津絵里の演技、ミギーのキャラクター、CGの創意性などは高い評価と好感を寄せられています。
とはいえ、中国の映画市場が娯楽偏重であるため、興業的にどのような結果になるかはまだ何ともいえません。
9月3日時点の評価は10点満点中の8.4。54%の観衆が9点~10点をつけています。

9月2日は9月の第一金曜日で、多くの新作が公開されましたが、「寄生獣」は4位となっています。
2016年9月3日の劇場公開映画ランキング 映画チケットサイトGewaraの統計
http://www.gewara.com/movie/

1位:『スター・トレック BEYOND』(9月2日公開)
2位:『ジェイソン・ボーン(Jason Bourne)』(8月23日公開)
3位:『アイス・エイジ 5(Ice Age: Collision Course)』(8月23日公開)
4位:『寄生獣』(9月2日公開)
5位:『我們的十年 Days Of Our Own』(9月2日公開、中国映画)
1位から3位を占める作品はアメリカの3D・IMAX映画です。
視覚的な刺激を重視する、アトラクション的な楽しみ方が根付いてしまっているといえます。
「寄生獣」を皮切りに、より多くの日本映画が中国公開されるかもしれません。
日本でヒットしても海外市場では反応が良くないこともあり、その逆もありえます。
中国のスクリーンには、ハリウッド大作、CGを駆使しスターを大勢使った中国の大作映画が溢れているので、リアリティを重視する日本映画を観るとギャップを感じるはずです。
そのギャップを好む人と、受け入れられない人がいるはずです。
社会的情緒の変化に左右されるので、何が中国でウケるのか、何が売れるのか、どんなにマーケティングしても読めない部分があると思います。
中国で公開される日本映画が増えると、意外な作品がヒットしたりするのでは・・・と期待しています。