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黄景瑜出演の映画『紅海行動』(OPERATION RED SEA)異例のロングラン

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今年の春節は遅く、2月16日が旧暦の正月でした。約1週間に及ぶ春節休暇は映画業界にとってかきいれ時で、国産映画を中心にいくつもの大作が公開されます。
春節映画のひとつである『紅海行動』(OPERATION RED SEA)は、2月16日の公開から1ヶ月近く経つ現在も口コミで興行成績を伸ばしています。

この映画には、BL実写ドラマ『上瘾』(Addicted)の攻役・顧海(グーハイ)を演じていた黄景瑜(Johnny Huang)が主要キャストとして出演しています。
(黄景瑜について:過去ログ

『紅海行動』(OPERATION RED SEA)2018年2月16日公開 138分 3D


興行収入:33億元突破(3月12日現在。日本円換算で約550億円)
監督:林超賢(ダンテ・ラム)香港の監督で「紅海行動」の前に「湄公河行動」(OPERATION MEKONG)という同ジャンルの映画を成功させています。
出演:張澤、黄景瑜、海清、杜江、蒋璐霞(いずれも中国大陸の俳優)
製作:博納影業、中国人民解放軍海政電視芸術中心(人民解放軍海軍が製作バックについています)

ストーリー:ソマリア海域で海賊に襲われた中国商船の救出のため、中国海軍の特殊部隊が出動する。続いて、北アフリカの某国(架空の国)で動乱が勃発し、部隊は中国人居留者を避難させる任務を命じられる。しかし、動乱は化学兵器の技術秘密の取引が絡んでおり、中国人が人質に取られている。その人質を救出するため、8人の特殊部隊のレンジャーたちがアフリカの反乱軍に挑む・・という話です。

「紅海行動」の興行収入は33億元を突破しており、歴代中国映画の中でも2位になりそうな勢いです。
大ヒット映画のメインキャラとして出演したことで、黄景瑜の株が急上昇しています。
一連の中国実写BLドラマで攻役をやってた子たちは概して演技が上手かったですが、黄景瑜は特に俳優として恵まれた素質を持っています。
187cmの長身に筋肉質な体格、なおかつ顔が小さいのでさっぱりした印象を与えます。アクションものでは重宝されるルックスの持ち主です。
飄々とした目つきと声が個性的で、幅のある役柄ができそうです。





「上瘾」(Addicted)は黄景瑜の出世作ですが、中国国内では放送・配信が厳禁されており、公式の場で「上瘾」の名が出ることはありません。インタビュー記事などでも「上瘾」のタイトルは伏せて「某人気ネットドラマ」などと書かれます。

「『上瘾』に出てた子がこんな映画に出てるんだな・・・」くらいの気持ちで観にいったのですが、とんでもない映画でした。
「紅海行動」は全編3Dの戦闘シーンで、残酷で血なまぐさいシーンの連続です。個人的にはあまり好きな題材の映画ではないのですが、それでも映像力があまりにもすごくて、観終わった後は「すごかった」と「面白かった」の二言しか出てきませんでした。
薄暗い船室や砂埃の舞う荒野で戦いが繰り広げられ、緊張感が緩むときが一瞬もありません。
特殊部隊の8人の隊員は選び抜かれた精鋭ではあるものの、突出したヒーローや天才がいるわけではありません。
冷静で実直な隊長の指揮のもと、各自の技能を生かしてチームで戦います。ただし、その戦いぶりは軍人というよりは、現代武器を駆使する剣客のような印象を与えます。
正規の中国軍人という設定なので、国に対する忠誠は絶対的で、戦いに怯えることはあっても任務に抗うことはありません。
どんなに不可能と思われる任務も諦めずに、ひたすら冷静に立ち向かっていきます。





ここ数年、中国では軍事映画が流行っています。
「湄公河行動」、「戦狼Ⅰ・Ⅱ」、「紅海行動」と軒並み成功しているので、今後も同ジャンルの映画ができるのではと思います。
このジャンルの名作として知られるのが米国映画「ブラックホーク・ダウン」(2001年、リドリー・スコット監督)で、雛形として影響を与えていると思われます。
しかし、中国の一連の現代戦争映画がどんなに映像的に優れていても、海外では評価されにくいかもしれません。
なぜなら、戦争映画でありながら、平和を希求するというメッセージ性に欠けるからです。
中国の戦争映画は、「この世から争いや衝突を完全になくすことは現実的に不可能。それならば自分が強くなるしかない。」という価値観に基づいています。
「紅海行動」のラストに中国海軍の艦隊が出てきます。そのシーンは「あくまでも自衛のために戦うのだ」と強調しています。
つまり、反戦的とはいえないけれど、好戦的というわけでもなく、刺激的な商業大作でありつつ国の価値観を絶妙に反映させた非常にハイレベルな映画です。

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