11月7日(金)の夜、上海で行われたフィギュアスケート2014年中国杯を観にいってきました。
羽生くんが2日目の練習中の事故で、負傷しながらフリーのプログラムを滑り2位に入り、大きなニュースになりました。
私は羽生くんが負傷した2日目のフリーではなく、1日目のショートプログラムのみを見ました。
中国杯には日本からたくさんのファンが観戦に来ていました。大会はショート、フリー、エキジビジョンと3日間に渡り行われます。
私が見た11月7日(金)夜19時半からの男子ショートプログラムは、前5列目くらいまではほとんど日本からの観戦客で埋まっていました。
大会の会場は東方体育センターという上海のやや郊外にある屋内スポーツアリーナですが、会場に足を踏み入れると、
ここは日本か・・・・・?
と思うほど、日本企業のスポンサー広告で埋め尽くされていました。
メインスポンサーのトヨタLexusはまだ中国向け宣伝といえますが、リンクを取り囲む日本企業、高須クリニック、ほけんの窓口、JACCSなどほとんどの企業が、中国とはほぼ関係がなく、明らかにテレビ中継を通じた日本向けの宣伝枠として機能していました。広告だけ見ていると、中国杯は場所だけ上海のスポーツアリーナを借りた、日本の衛星試合のようでした。
■トヨタLexusの屋外展示
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■リンク周辺は日本企業の広告と、日本ファンが持参した垂れ幕に囲まれる
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羽生くんの所属クラブである全日空も全面的に協賛しています。
■会場内の全日空プロモーションブース
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■「頑張れ!羽生!」
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男子ショートプログラムには11人の選手がエントリーされており、日本人選手は2人です。
海外の会場まで足を運ぶようなファンは、かなり熱心なフィギュアファンといえますが、日本の選手だけを応援しているわけではなく、フィギュアというスポーツ自体を応援しています。
ミーシャ・ジーというウズベキスタン代表の男子選手がいます。
ミーシャ・ジーが出てきたとき、前列のお客さんがいっせいにウズベキスタンの旗を出してミーシャを応援しました。
ウズベキスタン人が上海にスケートを見に来たりしません。
中国人の中に、ミーシャのファンがそれほどいるはずもありません。
日本から観に来たファンが、ウズベキスタンの旗をかかげでミーシャ・ジーを応援しているのです。
この応援マナーは独特だと思いました。
会場には上海在住と思われるアメリカ人のグループが観戦に来ていましたが、彼らはアメリカ選手が出てくるときのみ星条旗を掲げて賑やかに応援します。これが一般的なスポーツの応援風景だと思います。
ですが日本人ファンは、個人的に応援している選手が出場すると、その選手の国の国旗をかざしてアピールします。日本、ロシア、中国、ウズベキスタンの旗をとっかえひっかえ出します。いったい何種類の国旗を持ってきているのでしょうか・・・。
よく、ロシアやヨーロッパのフィギュア選手が「日本が好き」とか「日本は第二の故郷」と発言してメディアに取り上げられますが、そりゃ日本を好きになるわと思いました。これほど海外フィギュア選手を暖かく迎える国は、日本だけなのでは・・・。
テレビでフィギュアの海外の大会が中継されるとき、客席がガラガラのときがあります。日本大会以外は、ガラガラのときの方が多いかもしれません。中国杯も、男子は羽生くんのおかげもあり前方は埋まっていましたが、ペアのショートプログラムはガラガラでした。
私が観にいった翌日、大会2日目のフリーの6分間練習で、羽生くんがあんなことになってしまって本当に驚きました。
1日目はあんなに元気に滑っていたのに---。
事故が起きたのは「本番前の6分間練習」ですが、ショートプログラムの前にも「6分間練習」はあります。見ていて危ないなとは思いました。
中国杯の場合、男子シングルのエントリー選手は11名だったので、前半5名、後半6名に分かれて演技します。
つまり、前半5名の6分間練習 → 前半選手5名がひとりずつ演技 → 後半6名の6分間練習 → 後半選手6名がひとりずつ演技という流れで行われます。
スコアで順番が決まるので、羽生くんは上位者が集まる後半グループに入ります。
男子ショートの滑走順序はラストの11番目でした。
つまり、羽生くんが6分間練習をしていたときは、6名の選手が同時にリンクでウォームアップすることになります。
男子はウォームアップで3回転ジャンプを跳ぶ選手も多く、すれすれのところまで選手同士が接近することもありました。
かなりひやっとするシーンもありましたが、選手はこういう状況にある程度慣れてしまっているのかもしれません。
■男子ショート 6分間練習
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1日目の男子ショートの日、羽生くんは6分間練習のとき、まっさきにリンクに飛び出しました。
リンクに出たときは最初は背中にJAPANとロゴの入った黒いジャージを羽織っていました。が、途中でジャージを脱ぎました。
脱いだ瞬間、女性ファンの大歓声で会場にどよめきが起きました。
羽生くんのスケートを会場で見たのは初めてでしたが、ものすごくオーラがあってきれいです。
ジャンプの精巧さがよく話題になりますが、一番の魅力は柔軟性だと思います。
スケーティング自体が滑らかできれいです。会場で見ていると、スケート靴の刃と氷が触れる音が聞こえますが、羽生くんは音もなく滑ります。
ソチオリンピックで金メダルを取ったときは、プルシェンコの棄権、フリーでの転倒などもあり、疑問視する声もありましたが、中国杯に登場した羽生くんは実力と才能に溢れた選手でした。出てきただけで別格オーラがあります。
そして、小顔で細身なルックスからは繊細なイメージを抱きがちですが、羽生くんは勝利への渇望がみなぎるファイターだと思いました。
羽生くんの背後には、「僕は勝つ僕は勝つ僕は勝つ---」という闘志の炎がめらめらと燃えているように見えます。
日本ではフィギュアスケートは冬季オリンピックの花形競技です。オリンピックでは選手は日の丸を背負って戦っている・・・少なくともメディアではそのような姿が報道されます。ですが、フィギュアスケートというものは、競技者の絶対人口が少なく、国別に戦うような競技でもないんだなと改めて思いました。
中国杯で1位、2位になった選手と、9位、10位になった選手の演技を比べると、素人がみても一目でレベルの違いが分かります。世界大会で1位と10位のレベル差がこれほど明白というのは、不思議な感じがしました。
層が薄いという言い方もできるかもしれませんが、絶対的な競技人口が少なく、しかも、トップレベルに上り詰めるまでの過程が非常に困難なスポーツだということが分かります。
特に男子フィギュアスケーターは、存在自体がレアで、世界は広いけれど同じステージで戦える選手はほんの少ししかいなくて、このような大会にエントリーできる選手たちは敵というより「全員仲間」なんじゃないかと思ってしまいました。
2日目のフリー、なぜ羽生くんは出場することを選んだのか。それは羽生くんにしか分からないことですが、「なぜ」と考えずにはいられません。あの羽生くんにのしかかったスポンサー広告の数々を見ると、誰だって疑問を持つと思います。
羽生くんと2日目の練習中にぶつかったのは、イェン・ハンという中国人の選手でした。中国国内ではとても有望視されている選手です。イェン・ハンも負傷しながら、フリーの演技を敢行しました。
私は羽生くんを応援してはいますが、「日本人」という生まれたときに自動的に与えられた属性しか、羽生くんと共通点がありません。イェン・ハン選手は中国人ですが、「男子のトップクラスのスケーター」という世界に数名しかいない稀有な属性を共有していて、客観的にみて羽生くんにずっと近い存在です。
羽生くんが棄権しなかった気持ちを分かることができるのは、イェン・ハン選手なのかもしれません。
羽生くんのスケートを会場で観たのはこの1回だけですが、羽生くんはファイターだと思いました。
2日目のフリーに羽生くんが出場したとき「格闘技じゃないんだから、血を流してまでリンクに立たなくても」という意見もありました。
フィギュアは格闘技ではありません。でも羽生くんはファイターだと思いました。
■男子ショートプログラム 羽生くん滑走後のリンク。前に座っていた日本人ファンがいっせいに立ち上がり、多くの花束やプレゼントがたくさん投げ込まれました。
羽生くんが2日目の練習中の事故で、負傷しながらフリーのプログラムを滑り2位に入り、大きなニュースになりました。
私は羽生くんが負傷した2日目のフリーではなく、1日目のショートプログラムのみを見ました。
中国杯には日本からたくさんのファンが観戦に来ていました。大会はショート、フリー、エキジビジョンと3日間に渡り行われます。
私が見た11月7日(金)夜19時半からの男子ショートプログラムは、前5列目くらいまではほとんど日本からの観戦客で埋まっていました。
大会の会場は東方体育センターという上海のやや郊外にある屋内スポーツアリーナですが、会場に足を踏み入れると、
ここは日本か・・・・・?
と思うほど、日本企業のスポンサー広告で埋め尽くされていました。
メインスポンサーのトヨタLexusはまだ中国向け宣伝といえますが、リンクを取り囲む日本企業、高須クリニック、ほけんの窓口、JACCSなどほとんどの企業が、中国とはほぼ関係がなく、明らかにテレビ中継を通じた日本向けの宣伝枠として機能していました。広告だけ見ていると、中国杯は場所だけ上海のスポーツアリーナを借りた、日本の衛星試合のようでした。
■トヨタLexusの屋外展示

■リンク周辺は日本企業の広告と、日本ファンが持参した垂れ幕に囲まれる

羽生くんの所属クラブである全日空も全面的に協賛しています。
■会場内の全日空プロモーションブース

■「頑張れ!羽生!」

男子ショートプログラムには11人の選手がエントリーされており、日本人選手は2人です。
海外の会場まで足を運ぶようなファンは、かなり熱心なフィギュアファンといえますが、日本の選手だけを応援しているわけではなく、フィギュアというスポーツ自体を応援しています。
ミーシャ・ジーというウズベキスタン代表の男子選手がいます。
ミーシャ・ジーが出てきたとき、前列のお客さんがいっせいにウズベキスタンの旗を出してミーシャを応援しました。
ウズベキスタン人が上海にスケートを見に来たりしません。
中国人の中に、ミーシャのファンがそれほどいるはずもありません。
日本から観に来たファンが、ウズベキスタンの旗をかかげでミーシャ・ジーを応援しているのです。
この応援マナーは独特だと思いました。
会場には上海在住と思われるアメリカ人のグループが観戦に来ていましたが、彼らはアメリカ選手が出てくるときのみ星条旗を掲げて賑やかに応援します。これが一般的なスポーツの応援風景だと思います。
ですが日本人ファンは、個人的に応援している選手が出場すると、その選手の国の国旗をかざしてアピールします。日本、ロシア、中国、ウズベキスタンの旗をとっかえひっかえ出します。いったい何種類の国旗を持ってきているのでしょうか・・・。
よく、ロシアやヨーロッパのフィギュア選手が「日本が好き」とか「日本は第二の故郷」と発言してメディアに取り上げられますが、そりゃ日本を好きになるわと思いました。これほど海外フィギュア選手を暖かく迎える国は、日本だけなのでは・・・。
テレビでフィギュアの海外の大会が中継されるとき、客席がガラガラのときがあります。日本大会以外は、ガラガラのときの方が多いかもしれません。中国杯も、男子は羽生くんのおかげもあり前方は埋まっていましたが、ペアのショートプログラムはガラガラでした。
私が観にいった翌日、大会2日目のフリーの6分間練習で、羽生くんがあんなことになってしまって本当に驚きました。
1日目はあんなに元気に滑っていたのに---。
事故が起きたのは「本番前の6分間練習」ですが、ショートプログラムの前にも「6分間練習」はあります。見ていて危ないなとは思いました。
中国杯の場合、男子シングルのエントリー選手は11名だったので、前半5名、後半6名に分かれて演技します。
つまり、前半5名の6分間練習 → 前半選手5名がひとりずつ演技 → 後半6名の6分間練習 → 後半選手6名がひとりずつ演技という流れで行われます。
スコアで順番が決まるので、羽生くんは上位者が集まる後半グループに入ります。
男子ショートの滑走順序はラストの11番目でした。
つまり、羽生くんが6分間練習をしていたときは、6名の選手が同時にリンクでウォームアップすることになります。
男子はウォームアップで3回転ジャンプを跳ぶ選手も多く、すれすれのところまで選手同士が接近することもありました。
かなりひやっとするシーンもありましたが、選手はこういう状況にある程度慣れてしまっているのかもしれません。
■男子ショート 6分間練習



1日目の男子ショートの日、羽生くんは6分間練習のとき、まっさきにリンクに飛び出しました。
リンクに出たときは最初は背中にJAPANとロゴの入った黒いジャージを羽織っていました。が、途中でジャージを脱ぎました。
脱いだ瞬間、女性ファンの大歓声で会場にどよめきが起きました。
羽生くんのスケートを会場で見たのは初めてでしたが、ものすごくオーラがあってきれいです。
ジャンプの精巧さがよく話題になりますが、一番の魅力は柔軟性だと思います。
スケーティング自体が滑らかできれいです。会場で見ていると、スケート靴の刃と氷が触れる音が聞こえますが、羽生くんは音もなく滑ります。
ソチオリンピックで金メダルを取ったときは、プルシェンコの棄権、フリーでの転倒などもあり、疑問視する声もありましたが、中国杯に登場した羽生くんは実力と才能に溢れた選手でした。出てきただけで別格オーラがあります。
そして、小顔で細身なルックスからは繊細なイメージを抱きがちですが、羽生くんは勝利への渇望がみなぎるファイターだと思いました。
羽生くんの背後には、「僕は勝つ僕は勝つ僕は勝つ---」という闘志の炎がめらめらと燃えているように見えます。
日本ではフィギュアスケートは冬季オリンピックの花形競技です。オリンピックでは選手は日の丸を背負って戦っている・・・少なくともメディアではそのような姿が報道されます。ですが、フィギュアスケートというものは、競技者の絶対人口が少なく、国別に戦うような競技でもないんだなと改めて思いました。
中国杯で1位、2位になった選手と、9位、10位になった選手の演技を比べると、素人がみても一目でレベルの違いが分かります。世界大会で1位と10位のレベル差がこれほど明白というのは、不思議な感じがしました。
層が薄いという言い方もできるかもしれませんが、絶対的な競技人口が少なく、しかも、トップレベルに上り詰めるまでの過程が非常に困難なスポーツだということが分かります。
特に男子フィギュアスケーターは、存在自体がレアで、世界は広いけれど同じステージで戦える選手はほんの少ししかいなくて、このような大会にエントリーできる選手たちは敵というより「全員仲間」なんじゃないかと思ってしまいました。
2日目のフリー、なぜ羽生くんは出場することを選んだのか。それは羽生くんにしか分からないことですが、「なぜ」と考えずにはいられません。あの羽生くんにのしかかったスポンサー広告の数々を見ると、誰だって疑問を持つと思います。
羽生くんと2日目の練習中にぶつかったのは、イェン・ハンという中国人の選手でした。中国国内ではとても有望視されている選手です。イェン・ハンも負傷しながら、フリーの演技を敢行しました。
私は羽生くんを応援してはいますが、「日本人」という生まれたときに自動的に与えられた属性しか、羽生くんと共通点がありません。イェン・ハン選手は中国人ですが、「男子のトップクラスのスケーター」という世界に数名しかいない稀有な属性を共有していて、客観的にみて羽生くんにずっと近い存在です。
羽生くんが棄権しなかった気持ちを分かることができるのは、イェン・ハン選手なのかもしれません。
羽生くんのスケートを会場で観たのはこの1回だけですが、羽生くんはファイターだと思いました。
2日目のフリーに羽生くんが出場したとき「格闘技じゃないんだから、血を流してまでリンクに立たなくても」という意見もありました。
フィギュアは格闘技ではありません。でも羽生くんはファイターだと思いました。
■男子ショートプログラム 羽生くん滑走後のリンク。前に座っていた日本人ファンがいっせいに立ち上がり、多くの花束やプレゼントがたくさん投げ込まれました。
