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フェス化する中国最大のゲームショウ~2017 ChinaJoy~ 鴻海傘下の“液晶の父” SHARPも登場

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毎年7月末に上海で開催される中国最大のゲームショウ「ChinaJoy 2017」(チャイナジョイ)に行ってきました。場所は例年と同じく上海新国際展覧中心です。
Chinajoy 2017 場所:上海新国際展覧中心
開催期間:2017年7月27日~30日 一般入場チケット 平日:100元 週末:150元
公式サイト http://2017.chinajoy.net/


開催期間4日のうちビジネス向けが7月27日~29日、一般向けが7月27日~30日です。
ビジネス向けはW館(西館)を専門に使っているので、ビジネスと一般向けエリアは分かれていますが、日程がかぶっているのでビジネス参加者は一般ブースも参観できます。

Chinajoyは2003年から始まり、今年で第15回目を迎えました。
公式データによると、ChinaJoy2017は、
参加者:のべ32.5万人
展示面積:14万㎡以上
出展作品数:4000以上
となっています。

近年の東京ゲームショウの来場者数が25万人~27万人で推移しているので、規模からいうとChinaJoyが上回ります。

一般公開向けの週末チケットは1枚150元、日本円に換算すると約2400円です。安くはありませんが、上海の商業イベントの入場料の相場から考えると許容範囲内です。
むしろ、150元(2400円)を払う価値のあるおトクなイベントかもと思いました。同じくらいの値段をとっても、もっとしょぼいイベントはたくさんあるからです。

ChinaJoyは毎年7月に上海で開催されます。私は過去3回行ったことがあり、今年を含めて4回行きました。
この15年間、毎年上海で開催しているのに過去3回しか行ったことがないということは、ChinaJoyは「毎年行きたいとは思わない」イベントだったのです。

特に2015年のChinaJoyはあまりにも殺伐としていて、もう二度と行きたくないとすら思いました。
2015年は当時ヒットしていたオンラインゲーム、LOL(League of Legend/中国名:英雄聨盟)の亜流(パクリ)ゲームばかりが出展されていました。
中国のオンラインゲームは、ひとつヒット作が出ると、キャラのビジュアルと名前を変えただけだけの類似ゲームが大量に発行されるという悪習慣があります。
2015年前後は中国ゲーム業界がPCオンラインゲームからスマホゲームへの転換期であり、行き詰まっていた時期です。
過激なコスチュームのコンパニオンも規制され、カメラ小僧の出入りも下火になってきた頃でした。
もうこのまま突破口が見つからずに、ChinaJoyもダメになっていくのかな・・・と2015年に行ったときは思いました。
翌年の2016年はChinaJoyに行きませんでした。
2017年、2年ぶりに行ってみたのですが、これが予想外に面白かったのです。

2017年中国はスマホゲーム業界が絶好調でした。業界自体に勢いがあるのが大きな原因ですが、ひとつのイベントとしてすごく面白かったです。
ChinaJoy 2017は上海新国際展覧中心の全館を使用して行われました。
【会場見取り図】


一般客はE1から入場し、E2、E3、E4と進みます。館を進むごとに、だんだん1ブースあたりのスペースが大きくなっていきます。
展示館をひとつずつ移動していくのですが、実質上、後戻りはできません。
移動方向が制限されているわけではないのですが、会場が広いので体力的に後戻りすることがほぼ不可能です。入口がE1館にあり、出口がN1館を出たところにしかないので、N館のエリアまで行ってしまったら、もうE館エリアに戻る気にはなれません。
そして、E1からE7まで進み、N5からN1まで一方方向に進むに従い、だんだんブース面積が大きくなり、強豪ゲーム会社のブースが登場します。
これはフェスの楽しみ方に似ています。
今年のトリはテンセントかNetEASEか、それとも・・・といったワクワク感があります。

入場すると最初に入る館がE2「CAWAE」テーマ館です。
「中国国際アニメゲーム・派生製品授権展覧会」として、ゲーム会社以外の、アニメ・漫画・周辺グッズ企業が出展するエリアです。
動画サイト、漫画アプリ、フィギュア、ネットライブ配信、雑多な企業が出展しており、カオスでした。

展示ブース同士の間隔が狭すぎたり、通路スペースが僅かしかないのに、その真正面でステージパフォーマンスを始めて渋滞を引き起こしたりと、レイアウトがぐちゃぐちゃでした。この混沌とした雰囲気はどこかで見たことがある・・・・
それは・・・安さの殿堂・ドンキホーテーーー
ドンキホーテみたいな雰囲気の中で、そのジャンルではかなりの知名度のある企業がわらわらとブースを出しているのです。
開催15年にもなる成熟した展示会で、こんな雑然とした賑わいを作り出せるのは、ある意味すごいと思いました。

大手動画サイトYouku


暴走漫画/閲文集団


米漫伝媒/ANIPLEX


コスプレなどのイベントステージスペース。準備時間中。こちらは整然と整備されておりノウハウの蓄積を感じます。


台湾の鴻海グループに買収されたシャープがChinaJoyに登場したことも話題になりました。
シャープはE3館 esmart館に出展。


ロゴ表記は「SHARP POWERED BY FOXCONN」となっています。
「FOXCONN」(富士康)というのは半導体部品のOEMで拡大してきた台湾企業で、シャープを買収した鴻海グループの本体ともいえる会社です。
シャープは鴻海傘下に入ってから3年ぶりに黒字に転じ、中国向けの販売が好調です。最近シャープ製品の宣伝もよく見かけます。
ChinaJoyでも8kディスプレイ製品を中心に大々的に宣伝していました。「液晶の父」としてシャープAQUOSは中国で強いブランド力を持っています。



インテル専門館。インテルはE4館を丸ごと使用。


インテルは競技としてのゲーム、いわゆる「eスポーツ」を全面に打ち出したプロモーションをしています。
eスポーツの国際大会は、パソコンゲームの世界におけるF1のようなもので、CPUの技術革新がより高度なプレイを可能にします。
ゲーミングPC、ゲーミングキーボード、マウスなど、ゲーム向けに設計された商品がPC及び周辺機器の販売を支えており、各社力をゲームユーザー向けのプロモーションに力を入れていますが、ChinaJoyでのインテルの戦略はその最たるものとえいます。
eスポーツは日本ではまったく流行っていませんが、中国では非常に流行っていて、世界的にみてもかなり流行っているものです。
インテルの広告イメージキャラクターになっているのは、プロリーグに所属し国際大会でも活躍する中国人プロゲーマーです。

eスポーツは1チーム5人編成で、二つのチームが対戦するのが基本。


バンダイナムコ上海。2017年ChinaJoyは大手の集うN3館に進出。
バンナムカラーのスタッフコスチュームがかっこいいです。バンナム上海のキャラをイメージさせる女の子たちがショーをやっていました。
「ワンピース」スマホゲームの制作陣の登場するイベントを行っていましたが、周囲の中国企業のブースの音響が大きすぎるので、トークショーなどは通常の音量でやっていると声が聞こえないです。


中国で根強い人気を誇る「剣網三」(『剣侠情縁』オンライン版Ⅲ)。N3館 西山居。
2009年8月のベータ版リリースから8周年を迎えた「剣網三」、2017年はリマスター版をリリース。
移り変わりの速い中国オンラインゲームの中では粘着度の高いファンを持つタイトル。





スマホゲーム「王者栄耀」(King of honor)が絶好調のテンセント。N2はテンセント館。プロゲーマーのチーム対戦イベント。


N1館を使って今年ChinaJoyのトリを務めたのはNetEASE。
NetEASE(網易/ネットイーズ)ゲームの20年史を紹介するきちんとした展示をしていました。入場制限するほどの人気。


和風スマホRPG「陰陽師」の宣伝は一切行わず、新作ゲーム「荊棘王座」に注力していました。


中国のゲーム業界はテンセントとNetEASE(網易)の二強のシェアが大きすぎて、中小・新規のゲーム開発会社の参入が年々難しくなっていると言われています。

ChinaJoy2017では最新ゲームのほか、VRシステム、先端ディスプレイ機器、ゲーミングPC、動画サイト、フィギュア、周辺グッズなど幅広いジャンルの商品やサービスを知ることができました。体力さえ持てば丸1日いても十分楽しめます。
なぜか入力システム(百度入力法)のブースまでもが自然に出展されている、この器の大きさがChinaJoy2017の魅力です。

2017年10月新番アニメ「宝石の国」bilibili動画で中国配信好調

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2017年秋クール・10月新番アニメも中盤を迎えています。
中国ではbilibili動画、Youku、IQIYIなどの大手動画サイトで、多くの日本新番アニメがサイマル配信されています。
TVシリーズの新番の場合、日本でのテレビ放送が終了してから1~2時間後に中国動画サイトでの配信が始まるのが一般的です。

毎年、秋クールの新番は質・量ともに充実しており、今年もたくさんの話題作が生まれています。
その中でも、bilibili動画で独占配信中の「宝石の国」は10月新番のダークホースと言われ、人気を集めています。

「宝石の国」 アニメ2017年10月スタート
原作:市川春子(月間アフタヌーン連載)
アニメ制作:オレンジ
公式サイト:http://land-of-the-lustrous.com/


公式サイトのストーリー紹介:
「今から遠い未来、かつて存在した生物が、不死の身体をもつ「宝石」になった世界で、月から飛来する謎の敵“月人”と宝石たちとの激しい戦いを描く、強くてもろくて美しいアクションファンタジーコミック。」

公式サイトでPVが公開されていますが、PVより本編の方が絵も音楽も動きも遥かにきれいで、尚且つ面白いです。

中国bilibili動画での配信時間は毎週土曜日22:00からです(中国時間)。
東京MXの放送が毎週土曜日22:00~(日本時間)なので、日本放送終了から1時間後となっており、MBSの放送よりも中国動画配信の方が時間的に早いことになります。

11月18日(土)に配信された第7話は、同時視聴者数が4万を超えました。
土曜日の夜10時という時間帯がネット視聴に適しているとはいえ、すごい数字です。

「宝石の国」第7話 「冬眠」 同時視聴者数 41228人 bilibili動画



22:00に更新されると同時に、視聴数があっという間に1万を超え、どんどん増えます。
視聴者は更新されるタイミングを待っています。
22:20頃に同時視聴者数のピークを迎え、第7話は同時視聴者数4万を超えました。

7話まで配信された11月24日の時点で「宝石の国」1~7話の合計再生回数は877.1万回です。
1話あたり平均100万を超えており、秋のヒット作のひとつです。

中国で配信される日本アニメの場合、1話あたりの再生回数が1000万回を超えるとメガヒット(ワンピース、ナルト、コナンなど)、100万回を超えるとヒットに入ります。

bilibili動画 2017年11月24日現在の新番上位作品。

Fate/Apocrypha     5905.6万回(~19.5話)
干物妹!うまるちゃんR 2343.7万回(~7話)
十二大戦        1259.9万回(~8話)
妹さえいればいい。   1247.5万回(~7話)
僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件 1078.6万回(~7話)
宝石の国        877.1万回(~7話)
鬼灯の冷徹 第二期    720.3万回(~7話)
血界戦線 & BEYOND(第2期)820.2万回(~7話)

※血界戦線のみ非独占配信。その他はすべてbilibili独占配信。

Fate、うまるちゃん、十二大戦が強いですが、この3作が強いのは想定内です。
こうやってランキング化してみると、「宝石の国」はダークホースであると同時に、中国アニメファンの志向性に合致した作品だと感じます。
中国視聴者の求めるものと「宝石の国」が表現するものが共鳴したのだと思います。

中国のアニメファンは年齢層が若く13歳から24歳の学生層が大半を占めます。
また、女子より男子視聴者の方が多いのではと思います。

3DCGの表現が斬新な「宝石の国」がbilibiliユーザーに受け入れられることがすごく嬉しいです。

中国の視聴者は年齢的に若いこともあり、新技術に対して柔軟です。
日本で3Dを使うと「なぜ3Dにする必要があるんだ」という議論が起きやすいですが、中国ではそういう発想がありません。
3DCGを使うことに、もともと何の違和感も持っていません。3Dの中でのクオリティを追求しています。

基本的にアニメを動画配信で見ているので、イヤホンの使用率が高く、音のクオリティにも敏感に反応します。
「宝石の国」は物質の砕ける音や、衝突する音、音楽の美しさも話題になっています。

瞬間風速では「Fate/Apocrypha」に続いて2位に。2017年11月17日~20日のランキング。



「宝石の国」が中国アニメファンの興味を引き付けた原因のひとつ?宝石たちに攻撃してくる「月人」は、中国視聴者から「敦煌楽隊」と呼ばれています・・・。


「宝石の国」第8話も楽しみにしています!!

中国版「花より男子」~「新版・流星花園 」2017年制作開始 キャストを発表

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アジア圏で何度もドラマ化され、各地で社会現象的ブームを起こしてきた「花より男子」中国版ドラマ「新生・流星花園」の制作発表会が行われました。
「新生・流星花園」クランクイン発表会 日時:2017年11月9日 主催:湖南衛視



大ヒット漫画「花より男子」(1992年~2004年 マーガレット連載)はこれまでに何度もドラマ・映画化されてきました。
まず、1995年に内田有紀主演で映画化されています。漫画連載開始から比較的早い時期の映像化でしたが、旬のアイドル女優とそのファンのための映画というかんじでした。当時はレンタルビデオで見た人も多いのでは。

「花男」ブームのきっかけとなったのが、アジア圏で社会現象的ブームを巻き起こした台湾ドラマ「流星花園」(2001年)です。

このドラマは中華圏で大ヒットし、主要キャラ4人を演じた台湾俳優たちは「F4」としてCDもリリースし、熱狂的な人気を得ました。
「流星花園」(Meteor Garden)は原作に比較的忠実な丁寧な脚本で、F4が全員180cm超えの長身でロン毛というビジュアル的に強いインパクトがありました。



「流星花園」の成功は日本にも衝撃を与えました。
台湾人の手によって、日本の少女マンガがこれほど絶妙にドラマ化されていることに驚きと感動を覚えた人も多いはずです。
2000年代前半の台湾では日本の少女マンガのドラマ化が盛んで、「流星花園」のほかにもジョセフ・チェンとアリエル・リン主演の「イタズラなキス」(悪作劇之吻)、ウーズンとEllaの「花ざかりの君たちへ」(花様少年少女)など名作を生み出しています。

その後、2005年にTBSで松潤主演によりドラマ化されて大ヒットし、「花男」はドル箱コンテンツとなりました。

2009年に韓国でドラマ化され、イ・ミンホ、キム・ボム、SS501のボーカルとして活躍していたキム・ヒョンジュンなど若手俳優がキャスティングされました。
その中でも特に、イ・ミンホはこの作品出演をきっかけにイケメン俳優としてブレイクしました。

2009年ににはもうひとつ、中国で「一起来看流星雨」という「花男」をもとにしているとみられるドラマが制作されています。
ただし、2009年中国版には原作のクレジットが入っておらず、制作側である湖南衛視は「湖南衛視のオリジナル作品」というスタンスを取っています。

そして2017年。台湾「流星花園」が制作されてから15年以上の年月が経ちました。

「流星花園」のプロデューサー、台湾F4の生みの親であり、その後も多くの台湾ドラマや映画を成功させてきた著名な女性プロデューサー・柴智屏(アンジー・チャイ)が再び中国で「流星花園」を制作するということで、新たにキャスティングが行われました。

2017年11月9日、制作者である湖南衛視の主催にて「新生・流星花園」クランクイン発表会が行われ、キャストが公表されました。
制作会社代表によると、2018年夏休み時期の放送を目指しているとのことです。

つくし:沈月 1997年生まれ 湖南省出身
道明寺:王鶴棣 四川省出身(制作発表会では18歳と言っています)
花沢類:官鴻 1995年生まれ、台湾出身 22歳
美作:梁靖康 広東省出身 23歳
西門:呉希澤 深セン出身 21歳

 

F4役の4人の平均身長は185cmとのことです。基本的に新人で、これまでほとんど芸能活動の経験がなく、これが俳優デビュー作となる人もいるようです。
花沢類役の官鴻と道明寺役の王鶴棣は非常に顔がいいです。4人とも本当に背が高いです。藤堂静役もほぼ新人ですが170cm以上ある女優をキャスティングしています。制作発表会のインタビューを見ると、つくし役の女優(沈月)が一番芸能経験がありそうです。

ビジュアル的にはちょっとやりすぎなくらいのハイクオリティです。

アンジー・チャイ氏によると、2001年版の「流星花園」は予算不足のため細かい部分の作りが雑で、ロケなども制約があった。また、原作が完結していなかったため本当の意味での結末がない。2017年版は新しい時代の要求に応えられるクオリティと表現で再生させたいと語っています。

『芳華』『空海』中国版『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を凌駕するダークホース・ハンギョン主演映画『前任3』

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年末年始は新作映画が目白押しです。クリスマスや元旦連休のあるこの時期は、中国でも映画館は活況です。
中国ではショッピングモール付帯型のシネコンがすごい勢いで増えています。
スクリーン総数は北米を抜いて世界トップになり、2017年10月時点で中国全土のスクリーン数は4.9万を超えています。そして、郊外型モールの建設ラッシュにより、いまも毎日スクリーンが増え続けています。

映画チケットアプリを開くとGPSで近くの映画館が表示されますが、市街地を歩いていると、だいたい1km圏内にある映画館が3つくらい表示されます。それくらい映画館が多いです。
映画アプリではチケット購入機能や作品情報のほかに、興業収入がリアルタイムに表示されます。
人々の映画興業収入に対する関心は高く、具体的な数字を頻繁に話題にします。

2017年12月に公開された馮小剛(フォン・シャオガン)監督の新作『芳華』は、文革終焉期の軍属の舞踊団の若者たちの人生を描いた作品で、非常に話題になっています。

『芳華』(Youth)2017年12月15日中国公開
監督:馮小剛。中国を代表する映画監督でヒットメーカー。
主演:黄軒、苗苗、鍾楚曦


1970年代後半、文革終焉期に軍属の舞踊団の団員として生きた若者たちを描いた作品です。
文革の終焉、毛沢東の死、中越戦争、改革開放といった時代の波にのまれながら、それぞれの人生を生きた男女の姿を、鮮烈な映像とカメラワークで淡々と語った映画です。
しかし、中越戦争のシーンは強烈で、戦場での6分間のロングショットを撮るために7000万元(約10億円)が投じられたと言われています。
中国の映画やドラマ、小説などの作品には、政府を直接批判する表現はほぼみられません。
しかし、『芳華』のように、国や同胞のために大切なものを捧げたのに、まったく尊重されなかったという現実を描いた作品はときどきあります。
一種の社会的なプロテストで、馮小剛監督が支持される理由でもあります。

興業収入ですが、1月8日時点の興業収入は13.6億元。日本円換算で約217億円。中国では「10億元超え」がヒットの目安なので、『芳華』は興業的に成功といえます。
アプリユーザー評価:8.8点(10点満点)

グラフを見ると、公開直後の週末に最初の山ができ、翌週末にも前週に匹敵するほどの収入を上げています。口コミにより観客が動員されたと考えられます。
ただしピークの山が形成されるのが12月31日の週末までとなっています。

チェン・カイコー監督の日中合作映画『妖猫伝』(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』)が中国で先に公開されました。

『妖猫伝』2017年12月22日中国公開
(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』2018年2月24日 日本公開)
原作:夢枕獏『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』
監督:チェン・カイコー
主演:染谷将太、黄軒、張雨綺、阿部寛

唐の時代の繁栄と奔放さを、魔術的な美しさで描いた点が好評を博しています。
白楽天が李白の残した詩を通じて楊貴妃を敬慕し「長恨歌」を創作したというエピソードが主線になっています。
空海と白楽天がバディとして楊貴妃の死の謎を追っていくのですが、チェン・カイコー監督は唐代の文化・芸術・創作の美しさに対する賛美を表現したかったのではと思います。

宣伝では「総制作費150億円」とのふれこみですが、どういう計算で150億円(約10億元)なのかは疑問が持たれています。

中国興業成績は1月8日時点で5.17億元(約82億円)。制作費が本当に150億円だとすると、もう少し伸びてほしいところです。

12月22日の公開初日には高い数値を出しており、話題性・期待度が高かったことが伺えます。しかし公開の翌週は3連休ながら、落ち込みの幅がやや大きいです。ユーザー評価は7.9点。

12月29日には東野圭吾のヒット小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版映画が公開されました。

『解憂雑貨店』(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版)2017年12月29日公開
原作:東野圭吾
監督:韓杰
主演:王俊凱(TFBOYS)、迪麗熱巴、董子健、ジャッキー・チェン

2018年1月8日時点の興業収入は2.16億元です(約35億円)。
俳優の演技もよく、破綻なくまとまっているのですが、思ったより興業成績が伸びなかったようです。ユーザー評価:8.2。


公開日12月29日(金)とその後に続く3連休の動員が期待されましたが、3連休の最終日である1月1日から下落がみられます。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』中国版と同じ日に公開された中国映画『前任3』が思いのほか好成績を記録しています。

『前任3:再見前任』(元カノ3:さよなら元カノ)2017年12月29日公開
監督:田羽生
脚本:田羽生ほか3名
主演:ハンギョン(韓庚)、鄭愷、于文文

『前任3』は公開から2週間足らずで13.26億元(約210億円)を記録しています。最終的には20億元までいくのではとの予想もあります。
俳優はともかく女優は有名な人は一人も起用されていません。現代ものでセットにお金がかかっていないことは一目で分かります。
制作費は3000万元といわれており、中国では「低予算映画」の部類に入ります。
まさにダークホースです。
前半は割とベタなコメディなのですが、後半の脚本が素晴らしく、脚本の力で勝利した珍しいケースです。
監督の田羽生は1983年生まれで脚本家出身です。
映画「前任」シリーズの第3作で最終作です。
ストーリーはシンプルで誰にでもありえる現実味のあるものです。
主役の男性2人(ハンギョンと鄭愷)は会社を興し、事業は成功したけれど恋人とはうまくいかなくなり、ちょっとした喧嘩をきっかけに二人とも彼女と別れてしまいます。
前半は恋人の干渉から開放され、派手に遊びまわる日々を謳歌する男2人の生活がコメディタッチで描かれます。
後半は一転し、ハンギョンと彼女の心理が巧みな脚本によって深く描かれます。隙間を埋めるように入り込んできた新しい人物の位置付けが独特です。
ハンギョンは中国人男性ならではの素朴さと狡さを両方表現できるよい俳優だと思います。


グラフを見ると、公開直後の週末と比べて翌週の週末に大きく上昇しています。また、1月2日から1月5日は中国では普通の平日ですが、平日でも高い動員数を示しています。これも口コミによるものと思われます。ユーザー評価は9.0をつけています。

中国では新作映画は基本的に金曜日に公開されます。
次々と新しいが公開されるので、公開直後の週末が勝負です。そこで客足を集め、好評を得られると口コミで動員が伸びます。
しかし、動員が続くのはよくて4週間です。なぜかというと、新しい作品がびっしりとスケジュールされているので、人々の目はより新しいものに奪われてしまうからです。淘汰のスピードは非常に速いです。

スマホゲーム「旅かえる」中国で大流行~中国製乙女ゲーム「恋と制作人」との対比

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いま中国ではHit-Point社開発のスマホゲーム「旅かえる」が爆発的に流行っています。社会現象といってもいいです。
Apple Storeを中心に1月18日から急激にダウンロード数が増加し、瞬く間にSNSの話題が「旅かえる」で埋め尽くされました。

「旅かえる」はかえるにお弁当や道具を持たせて旅に送り出し、かえるが旅先から送ってくれるポストカードやおみやげを集めるという育成ゲームです。
日本公式サイト:http://www.hit-point.co.jp/games/tabikaeru/

 

このゲームは日本語版しかありません。操作画面のボタンやメッセージはすべて日本語で、しかもひらがなとカタカナが多いです。
漢字が多ければ中国人でも意味を予想できますが、ひらがなばかりなのでどうしようもありません。
日本語がほぼまったく分からない何百万人という中国人ユーザーたちが、ネット上の攻略を頼りにこのゲームをぽちぽちと操作しています。

「旅かえる」は占有メモリが小さく、電池を食うこともなく、レベルアップのために大量の時間を割く必要もありません。
操作パターンが極めて限られており、プレイヤーが主にすべきことは「待つこと」です。

この超スローペースのゲームが偶然にも、過酷な消費競争社会に生きる中国人の心をつかみました。

「かえるは何も告げずに出掛けていって、いつ帰ってくるかも分からない。
帰ってきたら帰ってきたで、ずっと部屋に閉じこもって会話もない。次はいつ旅立つつもりなのかも分からない。
だけど旅先から写真を送ってくれたり、おみやげを持って帰ってきてくれたりと、成長を見守ることができる。」

という育成シミュレーションを通じて、子どもの成長を見守る親の気持ちが分かる・・・といった分析が様々なメディアで議論されています。
蛙(かえる)は中国語でワ(Wa)と発音しますが、同音意義語で子ども(「娃」)のこともワ(Wa)と発音します。
また、中国で流行っているネット用語「佛系」(仏系、仏教系、僧職系)というキーワードと当てはまったこともブームの一因です。
ストイックに辛抱強く待つことを要されるスタイルが「僧職系ゲーム」(中国語:佛系遊戯)と呼ばれています。

中国でこれほどの人気を得ていますが、開発元のHit-Point社に何らかの利益還元はあるのでしょうか。
マネーに相当するクローバーの課金はiPhoneではできるようですが、Androidではできません。

クローバー購入画面 左:iPhone  右:Androidはグレーアウト。

 

公式では現在日本語版しかリリースされていませんが、中国ではAndroid版はソース書換えにより日本語文字を中国語に置き換えた「中国語版」が出回っています。
また、パロディ画像や同人画も非常に多く、どれが正規版なのかよく分からない状況になっています。

「選股宝」という株価情報アプリのパロディ広告。中国株の銘柄に関するアイコンが散りばめられており、かえるは部屋で株式相場を研究中。


非公式と思われるキャラクターグッズもあっという間に生産され、ネット上で大量に販売されています。



「旅かえる」が話題になる前は「恋と制作人」というスマホゲームがSNSの話題をさらっていました。
「恋と制作人」(原タイトル:恋与制作人/意味:恋とプロデューサー)は中国の本格的乙女ゲームとして派手に宣伝されています。2017年12月20日リリース。


中国では女性向けのいわゆる「乙女ゲーム」はまだ発展途上にあり、「恋と制作人」は初の大型中国製乙女ゲームといえます。
4人のハイスペック・イケメンキャラとヒロインが恋愛を展開させていくという恋愛シミュレーションゲームです。
音声は中国語版と日本語版があり、日中ともに有名声優を起用しています。
男性キャラクターはイケメン・ハイスペックで、いずれも風や時間を操るなどの超能力を持っています。絵柄は違いますが、世界観的にはCLAMPに近いと思います。
周棋洛(22歳、アイドルスター CV:辺江/柿原徹也)
白起(24歳、特殊警察 CV:阿傑/小野友樹)
李澤言(29歳、企業家 CV:呉磊/杉田智和)
許墨(26歳、科学者 CV:夏磊/平川大輔)
  

4人のメインキャラの一人、李澤言の誕生日は1月13日という設定です。

2018年1月13日李澤言の誕生日に合わせて、高層ビルの外装LED宣伝で、
「李澤言、誕生日おめでとう」「驚かないで」「あなたのブラックカードでやったことよ」というメッセージが流れました。


ビルの外装LED広告は最低でも12万元(約200万円)かかりますが、これはファンがお金を集めて誕生祝いメッセージ(広告)を流したと言われています。この仕掛けはSNS上でものすごく話題になり、公式も宣伝とキャラクターの誕生日ボーナスを行ったため、1月13日前後にDL数が激増しました。

ところが、「旅かえる」の出現により「恋と制作人」の存在感が薄れてしまっています。
この二つのゲームは主に女性ユーザーをターゲットとしますが、多くの時間を割き課金をして「男」を育てるより、無料でかえるを育てていた方が性に合っている・・・と考えるユーザーが多いのかもしれません。
なお、中国の某リサーチメディアの分析記事によると、「旅かえる」の開発コストは500万~800万円ですが「恋と制作人」は8億円以上と推定されています。

東野圭吾『容疑者Xの献身』が中国で映画化--『嫌疑人X的献身』を観てきました

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東野圭吾の小説『容疑者Xの献身』が中国で映画化されました。
2017年3月31日より中国全土で公開され、公開から10日間で興行収入3.6億人民元(日本円で約58億円)を突破したと報道されています。
これは中国映画としては上々の成績です。

中国映画版『容疑者Xの献身』--中国語タイトル『嫌疑人X的献身』

  

『容疑者Xの献身』は、2008年に日本で映画化、2012年に韓国で映画化されています。

中国映画版で主人公の物理学者・湯川(中国版では唐川)を演じたのは、王凱(ワンカイ)という俳優です。

王凱(ワンカイ)1982年生まれ、身長182cm、北京出身。
王凱はいま中国でものすごく売れてる俳優です。2015年の大ヒット中国ドラマ『琅琊榜』(ろうやほう)の靖王役で知名度が一気にアップし、スター俳優に。


数学の天才・石神役(中国版では石泓)を演じたのは張魯一。
1980年生まれ、北京戯劇学院出身、身長182cm。俳優としてのキャリアは10年以上ですが、ここ2~3年の間に『麻雀』などヒット作品に恵まれ、第一線で活躍しています。



花岡靖子役(中国版では陳婧)は林心如(ルビー・リン)が演じました。林心如は20年以上第一線で活躍する、中華圏では誰もが知っている有名な台湾出身の女優です。



監督:アレックス・スー
アレックス・スー(蘇有朋)は台湾出身で元々俳優です。多くのドラマ、映画に出ています。3人組アイドルグループ「小虎隊」のメンバーとしてデビュー。最近は映画監督としても活躍。
写真左がアレックス・スー。本人は出演していません。中央が王凱、右が張魯一。



音楽:大島ミチル。作中では吹奏楽が重要な要素として出てきます。人物、特に石神の心情を表す上でも音楽の果たす役割は大きいです。

東野圭吾の小説は中国でものすごく人気があります。
大手書店の売上ランキングでは、常に東野圭吾の作品がランクインしています。
『容疑者Xの献身』を映画化する以上、話の面白さは保証されているのだから、出来が悪かったら完全に制作スタッフのせい。と思われており、制作側は大変なプレッシャーだったのではと思います。

また、主人公の物理学者・湯川は、日本版では福山雅治が演じて当たり役となっています。
福山雅治はアジア圏のファンの間では「理想の男性」の具現者として崇拝されており、このこともプレッシャーの一つになったのでは。

東野圭吾ファン、福山ファン、既存の日本・韓国の映画を観た人々からの期待と厳しい目に晒されながらの映画化となりましたが、中国版はとても丁寧に作られた良い映画でした。

今回の中国での映画化にあたり、東野圭吾先生からは次のようなメッセージが寄せられています。



メッセージの中でも「映画大国」と言われているとおり、2013年前後から中国の映画制作力は飛躍的に向上しました。

特に映像技術は、最新・最高級の設備と技法を取り入れ、本当に立派な映画を作れるようになっています。
俳優、女優の層も厚くなりました。

王凱(ワンカイ)をキャスティングしたのは、王凱本人が人気と実力を備え、お客さんを呼べるスター俳優だということもありますが、
福山の影響が大きかったのではと思います。「福山が演じた役」のイメージを傷つけない中国俳優・・・というと人選が限られます。
王凱の持つ、ストイック、知的、清潔感といった持ち味がこの役にも大いに生かされています。

■中国版のアレンジと解釈

基本的には原作に忠実に作られていますが、中国社会の現状に合わせるため、細かい設定がローカライズされています。

人物設定でも若干の変更があり、中国版では、湯川は警察大学の物理学の教授という設定になっています。
そのため、犯罪の謎を解くことに対する使命感がより強まっています。

そして、ラストに挿入されるシーンは中国版独自の解釈だと思います。
最後に湯川と石神の二人のシーンが挿入されたことによって、石神の性格の印象がだいぶ変わってきます。

中国版『容疑者Xの献身』は湯川と石神がダブル主人公のような形で描かれています。
友人であり、ライバルであり、理解者であり、追い追われる立場となる二人の男が命をかけた頭脳戦を展開する・・・という側面が鮮明になっており、「デスノート」みたいな雰囲気があります。
この2人で「デスノート」を始めても全然違和感がありません。

ちなみに、湯川の周辺には女性がまったく登場しません。

湯川と石神が二人で山登りに行くシーンがあります。これは日本映画版の雪山に登るシーンを踏襲したものと思われますが、中国版では登山日和のピクニックになっています。
男二人が山でピクニックするシーンを観ることになり、「何のためのシーンだったんだろう??」と後になって疑問が沸いてきます。



あと、ラスト近くで王凱(湯川)が河辺をランニングするシーンは、あれは王凱ファンのためのサービスシーンなのでしょうか・・・?

中国では多くの新作映画が作られているのに、日本ではほとんど公開されません。
一般公開が難しいとしても、映画祭、若しくはチャンネル銀河などで、この映画が上映・放送されることを願っています。
日本の観客、東野圭吾の読者が観たら、いまの中国映画に対して新たな認識が生まれるのではと思います。

【おまけ】王凱(ワンカイ)の出演作品。 イケメン役しか見たことありません。
中国の俳優は比較的年齢が上がってからブレークするケースが珍しくありませんが、王凱もそれに該当するといえます。
全国的に知名度を得るきっかけとなった2015年の大ヒットドラマ『琅琊榜』(ろうやほう)靖王役。



汪兆銘政権時代を舞台とする戦時スパイもの『偽装者』(2015年)。
胡歌 靳東、王凱など『琅琊榜』(ろうやほう)のメインキャストが出演。『琅琊榜』の爆発的人気により『偽装者』も注目を集めました。



難解な事件にあたる警察官の心理ドラマ『如果蝸牛有愛情』(蝸牛が恋に落ちたら)(2016年)では、有能な刑事役で主演。

官僚の汚職に迫る中国“反腐敗ドラマ”『人民的名義』大ヒット放送中

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いま中国では「人民的名義」というドラマが大人気です。2017年3月28日からテレビ放送開始(湖南テレビ)、大手動画サイトでも同時配信されています。
ドラマ「人民的名義」(人民の名義/人民的名义 /IN THE NAME OF PEOPLE)



監督:李路 脚本:周梅森 全55話(1話約50分) 出演:陸毅、呉剛、許亜軍、胡静、張志堅 、李光復など大量のベテラン俳優が出演。

京州市という中国の架空の都市の政府官僚による汚職をテーマにしたドラマです。
この種のドラマは「反腐敗ドラマ」というジャンルにあたります。

陸毅(ルー・イー)が演じる反汚職総局の若き局長・侯局長。検察官である親友の不審な事故の謎を追うため、京州市に赴任します。
急速な経済成長を遂げた京州市は、あらゆる領域で汚職が巣食っています。
複雑な人間関係を持つ役人たちの、いったい誰が汚職の黒幕なのか---。



反汚職総局(中国語:反貧総局)は実際に存在する政府機関です。検察機関に属する、官僚・役人の汚職を摘発するための機関です。
地名は架空の省、架空の市になっていますが、警察(公安)、検察、共産党組織、ドラマに登場する政府機関はいずれも実在する機関です。

警察、検察、市長、区長、省委員会(共産党組織)など多数の官僚・役人が登場しますが、誰が汚職の黒幕なのか、なかなか分かりません。
汚職はすでに刑事犯罪の域に及んでいます。黒幕つまり犯人は誰かを推理するというミステリー的な側面もあります。

登場人物はいずれも有能な高級官僚ですが、誰が汚職の黒幕であってもおかしくない、つまり全員怪しいというミステリアスなムードの中、話が進みます。

誰が汚職の黒幕なのか?汚職に至った理由と経緯は?
汚職に関わる人物は一人とは限らず、誰が誰を何のために幇助し、どういう利害関係が絡みあっているのか・・・。

脚本とベテラン俳優たちの演技が秀逸で、大人の心理ドラマが繰り広げられます。

分かりやすいヒーローである反腐敗総局の局長よりも、市政府の高官・李達康書記が大人気です。



直情的なところがあるけれど、庶民のためを思う心を持ち、社会と国の発展を願う人間味にあふれた人物です。多くの名ゼリフはネット上でも大流行。



一見普通の大学の恩師と教え子、夫婦、上司部下にみえても、その背後に複雑で意外な人間関係が隠されています。
大人の人間ドラマであり、恋愛要素はほとんどありません。

現実を鋭く描いてはいますが、ドラマとしてのエンタメ要素もあり、汚職役人の隠し財産を暴くシーンなどは、

漫画か!?

と叫びたくなる誇張された展開でした。しかしこんな漫画さながらの賄賂隠匿も「実際にありえる」との声もあります。
なお、予算をふんだんに使った重厚なドラマなので、こんなふうに誇張されたシーンでもチープになりません。

別荘に賄賂を隠匿。冷蔵庫に札束が。





白状した犯人。2階の寝室にもまだお金を隠してあるというので行ってみると・・・。

壁一面の人民元。



ベッドの下にも。



これは本当に漫画チックで驚きを通り越して爆笑のシーンなのですが、そのあと、現場でお金が全部でいくらあるのか、札束を数えるシーンになります。

そのシーンでは、おそらく本当の銀行業務経験者をキャスティングして、お札を高速で数えるさまざまなスキルが映し出されます。

こういったディテールのリアリティがすごいのです。

その優れた脚本を十二分に表現できるベテラン俳優たちの演技も素晴らしいです。

汚職は現代中国のもっとも大きな問題のひとつです。
ドラマの中では汚職を生み出す社会のありさまがリアルに描かれています。

汚職は急速な経済発展を遂げる上での必要悪なのか。
社会に矛盾があるから汚職が生まれるのか。それとも汚職があるから社会が歪むのか。
もし汚職役人を残さず逮捕したら、出勤できる人が一人もいなくなって本気で困ったことになるのでは・・・。

ということを考えさせられます。

本質的なテーマは、人間にとって本当の幸せとは何かということだと思います。

人々がお金しか信じない。
人間も政府も何も信じない。

という社会はいくら物質的に豊かになっても幸せな社会といえるのか。
理想を失わずに生きることは、本当に不可能なことなのか。

ということを、ドラマ『人民的名義』は描いています。

【おまけ】最近の中国ドラマのヒット作

『三生三世十里桃花』。2017年1月放送。古装ファンタジー。中国で最もヒットしやすいのがこのジャンルのドラマです。
架空の王朝や時代を背景とする色鮮やかな衣装と豪華なセット、CGを駆使した美しい映像が特徴。中国版特撮・・・?
主演は楊幂(ヤン・ミー)と趙又廷(マーク・チャオ)。


楊幂(ヤン・ミー)は中国で最も人気のある女優の一人。潤んだ大きな瞳と整った形の唇がトレードマーク。背が高く古装ものが似合うのが強み。


『微微一笑很傾城』2016年8月放送。
中国イケメン俳優の代表格・楊洋(ヤンヤン)主演。ヒロインは中国女優の鄭爽(ジェン・シュアン)。
オンラインゲームで知り合った大学生の男女が、ゲームの世界と現実を交差しながら恋に落ちるという現代ラブストーリー。
中国では大学生を主人公にしたドラマは意外と少なく、その中でもヒットする作品は更に少ないです。
ヒットしたのは楊洋(ヤンヤン)と鄭爽の人気と支持率の高さの表れといえます。



キャンパスライフとオンラインゲームの世界が巧みに絡み合います。オンラインゲーム、IT、大学生活、非常に中国らしい作品です。

中国女子アイドルグループSNH48の現在~上海版AKBからの“自立”

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「AKB48の上海版」としてスタートした中国アイドルグループSNH48。AKBの中国展開としてSNH48が設立されたのは2012年の10月、上海の専用劇場での定期公演がスタートしたのは2013年の後半です。
まず、一期生たちによるチームSができました。それからすぐに二期生のチームNが結成され、三期生、四期生・・・と積極的に展開してきました。

第3回総選挙(2016年7月) 第1位は鞠婧禕(キクちゃん)


2016年6月、日本のAKBサイドとSNH48の中国運営側が決裂したというニュースが流れました。今から1年ほど前のことです。

どうなることかと思いましたが、約1年が過ぎたいま、結果的にいうとSNH48はこれまでどおり上海で活動しています。

SNH48は5チーム体制で活動しており、七期生が各チームに配属され、全員合わせるとメンバーは100人近くに上ります。

さらに「姉妹グループ」北京BEJ48、広州GNZ48があり、最近は新しく沈陽SHY48もできました。
今後も中国の地方都市に拡大していく構想のようです。

結果的にいうと、日本側と提携関係が解消されても、SNH48のメンバー大量脱退はありませんでした。
メンバーがやめない(或いはやめることができない)以上、運営側に何らかの変化があったとしても、ファンは離れません。

これまでSNH48はAKBから提供された楽曲の歌詞を中国語に変えて歌っていました。
専用劇場での公演では、秋葉原のAKBシアターで上演されていたのと同じセットリストを、中国語版でやっていたのです。
「最終ベルが鳴る」や「シアターの女神」などをやっていました。

AKBの曲を使えなくなって、SNH48側は自力で楽曲を用意できるのか?というの疑問が持たれました。

これも結果的にいうと、現在オリジナル曲で公演をやれています。

今年に入ってから、各チームが次々と「SNH48オリジナルセットリスト」を発表しました。
チームH「美麗世界」、チームX「夢想的旗幟」、XⅡ「代號XII」など各チームのオリジナルセットリスト公演を観ましたが、構成や演出に改善の余地はあるものの、全体的にいうと悪くないです。

すごく感動するような名曲かといわれると、そこまでではないのですが、一定のレベルはクリアしています。

衣装や振り付けも、目を奪われるとまではいえませんが、なかなかよくできていると思います。

現在SNH48の常設劇場での公演チケットは非常に入手しにくくなっています。
(北京BEJ、広州GNZ、沈陽SHYは完売しない公演も多いです。)

チケット発売方法は、完全実名制が実施されています。
チケットを購入するためには、まず公式サイトでユーザー登録をし、身分証明書、パスポートなど写真付き身分証の画像をアップロードし、認証を受ける必要があります。
身分証でチケットを会場で発券し、入場する際に再度身分証チェックがあるという、かなり厳しい本人確認があります。

会場のチケット発券機。



会場ロビー。現在SNH48は5チーム体制で活動しています。




毎週火曜日の夜8時に翌週の公演のチケットを発売します。
平日(主に水、木)は夜19:30開演で、終演は22:30頃です。
金曜日は開演が30分早く、夜19時からです。
土日は、14時公演と19時公演の2公演。

上海の場合、5チームあるので各チームが日替わりで公演します。
先着制の公演と抽選制の公演がありますが、抽選販売が徐々に増えています。

5チームの中で圧倒的に人気が高いのがチームNです。総選挙で上位に食い込むメンバーが大量に所属するエース集団です。

一期生の多いチームSも人気があります。

各チームにエース級の人気メンバーがいますが、人気があるメンバーは特にひと目見て納得するかわいさです。

SNH48の中国での知名度はかなり上がっており、イメージキャラクターとして広告やイベントに出たり、女優としてネットドラマに出演したりしています。

メンバーの中には、芸能活動に対して明らかに貪欲な子と、欲はあるけれど表には出さない子と、あまり執着のない子がいると思います。

■これからのSNH48

SNH48は何もかもが順調というわけでは決してなく、常に変化と波乱、或いはトラブルと共存しています。

まず、いま心配されているのは劇場のことです。
SNH48の専用劇場がある地区は急ピッチで再開発が進んでおり、いつ立ち退きになってもおかしくない場所にあります。

もともと商店を兼ねた集合住宅が密集する旧市街地です。いまでは地下鉄も2路線開通し、再開発の波がすぐそこまで押し寄せています。
1ブロック先の地下鉄駅に近いエリアはもう立ち退きがほぼ完了しています。

SNH48専用劇場「SNH48星夢劇場」歴史建築物を改造して作られた劇場。



劇場のある十字路。



次に心配なのは、「AKBのセットリストをやる」という制約が外れたために、徐々にパフォーマンスのレベルが下がっていくのではという点です。
これまではAKBのセットリストをやっていたので、セットリストにある曲をこなさなければなりませんでした。
ひとつのパフォーマンスを完成させるには、覚える側には練習時間がかかり、教える側には労力がかかります。
時間と手間のかかる楽曲を披露するより、ステージ上でトークや簡単なゲームをして時間をつぶす方がずっと楽です。
いまはまだ「AKB式の公演」を維持していますが、そのうちに楽な方向に流れるのではと心配です。公演に覇気がないと、観ている側もなんとなくつまらなくなってきます。

SNH48が本格的に活動を開始したのは2013年後半です。あの時期は尖閣諸島問題で日中関係は非常に冷え込んでいました。
SNH48にとっても逆風でした。あの時期を乗り越えるのは本当に大変だったと思います。

現在中国ではSNH48は女子アイドルグループの成功例として認識されており、SNH48の亜流のようなグループがたくさんあります。

SNH48がここまで来れたのは、最初にAKBのフォーマットがあったからというのは疑いようがありません。
常時公演という概念からはじまり、ユニット、生誕祭、握手会、総選挙といった数々のイベントのノウハウがあったからこそです。

もう一つ気になるといえば、ファンは以前の方が元気でした。
売れてなかった頃の方が、会場が盛り上がっていました。
以前は、常時公演は7割くらいしか埋まっていませんでした。
それでも、いまよりもコールの声がずっと大きく、ファンが真剣に応援していました。客の半分以上が常連でした。サイリウムの振り方も力がこもっていました。
いまは公演中もスマホをいじっているお客さんが多いのが気になります。

インド映画『Dangal』(摔跤吧,爸爸! )中国で大ヒット~非米中映画・日本映画の可能性

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インド映画『Dangal/ダンガル』(中国語タイトル『摔跤吧,爸爸!』 )が中国で大ヒットしています。
『摔跤吧,爸爸!』 は「レスリングパパ」という意味で、アマチュアのレスリング選手だったインドの田舎町に住む父親と、レスリング選手として大成する二人の娘の物語です。実話をベースにしています。



エスニック色の強いインドの田舎町を舞台とし、インパクトとメリハリのある映像に引き込まれます。
映画大国インドの役者の演技、演出、カメラワークは一流の水準です。
視覚的にはスパイスが効いていながら、情緒面では、家族愛、女性の地位、経済格差、夢の実現など普遍的なテーマが取り上げられており、自然に共感することができます。

『Dangal』にはインド映画おなじみの、登場人物が唐突に歌い踊りだすシーンはありませんでした。
中国公開版は140分で、インド原版は161分といわれています。約20分がカットされたことになります。
全体のテンポを上げるためインド制作側が編集処理を行ったと言われていますが、カットされた部分の中には歌・踊りのシーンがあったのかもしれません。

『Dangal』は6月30日までの時点で興行収入12.9億人民元を記録しています。
中国の2017年度の興行ランキングで4位です。(2017年の現1位は『ワイルドスピード8:アイスブレイク』の26.94億元=約430億円)
歴代の映画興行成績の中では、16位につけています。

ランキングの上位は常に中国本土・香港、アメリカの作品で占められているので、米中以外の映画が上位に食い込んだこと自体、画期的なことです。

中国でも『3 idiot』(邦題『きっとうまくいく』)が高く評価されており、インド映画に対する関心・信頼の土壌があったこと、
今年の上半期は似たようなハリウッド大作ばかりが続き、人間ドラマを描いた『Dangal』はとりわけ歓迎されるタイミングであったことなども、ヒットの要因になっていると思われます。

昨年2016年の12月、中国で『君の名は。』が公開され大ヒットしました。
『君の名は。』の中国での興行成績は5.76億元です。日本円にすると約92億円です。

この数字であっても、2016年度全体でみると25位にしかならないのです。

これはどう評価するべきなのでしょうか。

中国で『君の名は。』は大ヒットしました。しかし興行成績の数字からみると、このインドの映画の半分以下ということになります。

『Dangal』のヒットによって、「中国市場では、ハリウッド・中国以外の作品で最も競争力があるのはインド映画」という評価ができてしまうのです。

歴代映画興行成績のトップは、2016年正月映画として公開された、チャウ・シンチー監督の『美人魚』(マーメイド)の33.9億元です。
日本円に完全すると542億円になり、お化けのような数字です。この記録はなかなか破られないだろうと言われています。

映画は、商業映画である以上、ヒットしなければならないのでしょうか?

中国で「ヒット」といえるためには、10億元(約160億円)を軽々突破しなければヒットとは呼べません。
そのためには、作品の力だけではなく、上映期間やシネコンでのスケジューリングで優遇される必要があり、大資本のバックを持つ国内映画・ハリウッド映画が必然的に有利となります。

商業的に「大ヒット」といえなくても、評価と話題を集める作品も少しずつ出てきています。
現在上映中のチベット巡礼を描いた作品『岡仁波斉』(Paths of the Soul)は、上映館が限られる中、口コミで話題になり興行成績を伸ばしています。


日本では邦題『ラサへの歩き方 祈りの2400km』として去年公開されました。
http://www.moviola.jp/lhasa/

2017年下半期は、何本かの日本映画の中国公開も予定されています。
『深夜食堂2』2017年7月18日公開予定



公開が待たれる『銀魂』実写版。 『君と100回目の恋』

  

映画の存在意義は決して興行成績だけではありません。
しかし、いまの日本映画が「日本カルチャー好き」という特定カテゴリの中国人以外も魅了することができるのか---?
その答えは、興行成績の数字として表れるのではと思います。

2017年夏の中国映画『戦狼Ⅱ』『建軍大業』『二十二』~『戦狼Ⅱ』が歴代興行収入記録を更新

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この夏公開された『戦狼Ⅱ』という中国映画が、歴代興行収入トップの記録を塗り替えました。
公開から1ヶ月足らずで興行収入人民元54億元(約870億円)を突破し、現在も記録を伸ばしています。

『戦狼Ⅱ』(Wolf Warriors Ⅱ/ウルフウォーリアー2)2017年7月27日公開 126分 監督・主演:呉京



あらすじ:
中国人民解放軍の優秀な特殊兵だった主人公は大切な人を失ったことによる葛藤から軍を離職し、アフリカに渡り用心棒のような暮らしをしている。
主人公の滞在する地域は疫病と武装集団が蔓延する危険な地域だが、中国資本の投資もさかん。
あるとき、現地の反政府勢力による武力行使が起き、奥地に建設された中国資本の工場が危険地帯の中で孤立してしまう。
工場の中にはたくさんの中国人労働者が残されている。主人公は同胞を救うため、圧倒的な武装力を有する敵の傭兵と戦う・・・
という、銃撃武装アクション映画です。

これまで中国映画市場の歴代興行成績トップだったのは、2016年の正月映画として公開されたチャウ・シンチー監督の『美人魚』(マーメイド)です。
『美人魚』(マーメイド)の33億元(約530億円)という数字は1年以上破られることがありませんでした。
ここ1年ほど、中国映画市場の成長速度はやや鈍く、ヒット作でも『美人魚』の33億元には到底届きませんでした。
ところが、『戦狼Ⅱ』は公開から僅か11日で30億元を突破し、23日で50億元を超える驚異的な興行収入を記録しました。

最近中国では「主旋律電影」というものが流行っています。
「電影」は中国語で映画のことで、昔からある言葉です。
「主旋律」というのは、割と最近使われるようになった言葉で、「国家の主流の価値観を宣伝・発揚する」という意味を持ちます。
つまり、国が掲げるイデオロギーを支持する映画のことであり、従来型の言い方をするとプロパガンダ映画です。
しかし、昨今の「主旋律映画」は、今の中国の潤沢な資金力と最新の映像技術を駆使したド派手なエンタメ映画に仕上がっています。

『戦狼Ⅱ』は、最初から最後まで激しい銃弾戦シーンが続きます。
冒頭のアフリカの市街地で逃げ惑う市民を乱射、爆撃するシーンや、孤立した工場の中で無防備な労働者がドローン武器に撃ち殺されるシーンなど、衝撃的な殺戮シーンの連続です。





そんな中、主人公を始めとする中国人の主要登場人物は、超人的な精神力と身体能力で危機を突破していきます。
中国人民解放軍がアフリカ洋上の駆逐艦からミサイルを次々と発射し、現代軍事力をアピールするシーンもありますが、大半は主人公の武術をベースとした格闘能力によって突破口が開かれます。

この映画の成功によって、中国の一般大衆が好む要素は、「武術アクション+愛国心」であるとことが証明されたと言われています。

元軍人が国や国民を守るために命を懸けて戦うというストーリー展開を通じて、最終的には、中国の軍事力の強さ、国際的影響力、政治力の強さを賞賛・アピールする作品となっています。
中国パスポートが画面いっぱいに映し出され、祖国はどんなときも国民を見捨てない---というメッセージも添えられます。
この一言のために、機関銃の音が2時間も鳴り続くアクション映画を作ったのか・・・と思うと、なんともいえない感動が沸き起こります。

『戦狼Ⅱ』の戦闘シーンは誇張された表現ではあるものの、現代の脅威としては、宣戦布告を経た国と国の戦争よりも、いつどこで巻き込まれるか分からない政治動乱やテロの方が危険性が高いと考えると、ある意味では現実味があります。



2017年は中国人民解放軍の建軍90周年です。

軍の創設記念日である8月1日に向けて、多数の政治キャンペーン色の強い映画やドラマが公開されました。
その代表といえるのが、『建軍大業』という映画です。



『建軍大業』2017年7月27日公開。監督:アンドリュー・ラウ、製作:韓三平 8月末現在の興行収入:3.85億元(約62億円)
主演:劉燁(毛沢東)、朱亜文(周恩来)、霍建華(蒋介石)、黄志忠(朱徳)

EXOのレイや、根強いアイドル人気を持つ俳優馬天宇(マー・ティエンユー)、ヒット作を飛ばすイケメン俳優・李易峰(リー・イーフォン)など、若手からベテランまで主役級の俳優が大量に出演する超豪華キャストです。

1927年4月の上海四一二反革命政変から、1927年8月1日の南昌武装決起、その後の三河壩戦役にいたるまでの約半年間を描いた作品なので、日本軍はまったく出てきません。

しかし、『建軍大業』は、せっかく近代史を描いているのに、時代考証の粗さが批判を浴びています。

当時ありえないはずの整った軍装、威力の強すぎる爆弾や銃弾の数々は、かなりの違和感を覚えます。
はっきりって突っ込みどころ満載で、最初は真面目に見ていた観客も、40分くらいすると何となくざわつき始め、1時間を過ぎた頃には耐えられなくなり、スマホをいじりだしてSNSのグループチャットに突っ込みどころを呟きはじめるという様相です。

EXOのレイ(張芸興)は、軍の創設に貢献を果たすも20代前半の若さで犠牲となった軍人・盧徳銘を演じる。
あまりにもキレイで儚く・・・なんといったらよいのかよく分かりません。


人民解放軍の創始者の一人である葉挺を演じるのは、男性ボーカルオーディション番組「快楽男声」から出てきた歌手・俳優の欧豪。
絵になりすぎる蜂起のシーンは賛否両論でした。歴史映画というよりはミュージックビデオのようで、いまにもライブが始まりそうとの声が続出。



そもそも、いまの価値観や美的感覚に基づいて、90年前の革命期を描くことに違和感があります。

しかし、仕方のないことでもあると思います。
なぜなら映画を観る側は、常日頃お金のかかったスピーディで華やかな映像を見慣れています。
そんな観衆を退屈させないためには、ド派手で刺激に満ちた戦闘シーンを用意せざるを得ません。
その結果、革命を崇めるための誇大表現により、本来の歴史を傷つけてしまっているように思います。

しかも敵陣の最終的なボスである蒋介石は作中では恋愛にいそしんでいるだけにみえます。それなのに共産党側は何万人もの犠牲を出し、なんて理不尽なんだ・・・・と悲しくなる映画でした。

「ものすごくお金をかけた軍装コスプレ映画としては最高」などとSNS上では揶揄されています。

元SuperJuniorのハンギョンが軍閥のプリンスであった張学良を演じる。結構似ていると評判に。



もうひとつ、この夏話題になった中国映画があります。

『二十二』 2017年8月14日中国全国で公開。 監督:郭柯 公開版の尺は99分。


中国の元慰安婦のインタビューをベースとして制作されたドキュメンタリー映画です。
タイトルの『二十二』は、「過去20万人以上存在した慰安婦は、映画撮影当時の2014年には22名しか生存が確認できず、その22人を訪問して撮影した」ということから、『二十二』というタイトルがつけられています。
作中では、主に4人の生存者とその家族を追っています。

2014年に撮影され、2015年には映画が完成していましたが、上映するための資金がなく、クラウドファンディングにより資金を集め、2017年7月に全国上映にこぎつけたという背景があります。
クラウドファンディングには32099人が協力し、エンドロールに協力者の氏名リストが流れることが話題となっています。

このような題材を扱ったこと自体は賛同を集めており、ドキュメンタリーとしては異例の1.65億元(約26億円)という良好な興行収入を上げています。
「中国で全国公開された慰安婦のドキュメンタリー映画」というと、身構える人も多いのではと思いますが、実際に観てみるとびっくりするほど淡々とした映画です。
ドキュメンタリーであることを差し引いても、かなり淡々とした作風です。政治的な訴えがあることを予期して観に行った人は、拍子抜けすると思います。
良くいえば、余計な脚色や演出を避けてありのままの姿を描いたといえますが、一方では、監督が何を訴えたいのかメッセージ性が感じられないという意見もあります。

この夏公開された3本の作品、『戦狼Ⅱ』『建軍大業』『二十二』はいずれも、いまの中国のある種の勢いに乗った映画とえいます。
色々な意見がありますが、変化を続ける中国のひとつの夏を刻んだ作品です。

【おまけ】銀魂 実写版 2017年9月1日中国で待望の劇場公開。

フェス化する中国最大のゲームショウ~2017 ChinaJoy~ 鴻海傘下の“液晶の父” SHARPも登場

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毎年7月末に上海で開催される中国最大のゲームショウ「ChinaJoy 2017」(チャイナジョイ)に行ってきました。場所は例年と同じく上海新国際展覧中心です。
Chinajoy 2017 場所:上海新国際展覧中心
開催期間:2017年7月27日~30日 一般入場チケット 平日:100元 週末:150元
公式サイト http://2017.chinajoy.net/


開催期間4日のうちビジネス向けが7月27日~29日、一般向けが7月27日~30日です。
ビジネス向けはW館(西館)を専門に使用し一般向けエリアと分かれていますが、日程がかぶっているのでビジネス参加者は一般ブースも参観できます。

Chinajoyは2003年から始まり、今年で第15回目を迎えました。
公式データによると、ChinaJoy2017は、
参加者:のべ32.5万人
展示面積:14万㎡以上
出展作品数:4000以上
となっています。

近年の東京ゲームショウの来場者数が25万人~27万人で推移しているので、規模からいうとChinaJoyが上回ります。

一般公開向けの週末チケットは1枚150元、日本円に換算すると約2400円です。安くはありませんが、上海の商業イベントの入場料の相場から考えると許容範囲内です。
むしろ、150元(2400円)を払う価値のあるおトクなイベントかもと思いました。同じくらいの値段をとっても、もっとしょぼいイベントはたくさんあるからです。

ChinaJoyは毎年7月に上海で開催されます。私は過去3回行ったことがあり、今年を含めて4回行きました。
この15年間、毎年上海で開催しているのに過去3回しか行ったことがないということは、ChinaJoyは「毎年行きたいとは思わない」イベントだったのです。

特に2015年のChinaJoyはあまりにも殺伐としていて、もう二度と行きたくないとすら思いました。
2015年は当時ヒットしていたオンラインゲーム、LOL(League of Legend/中国名:英雄聨盟)の亜流(パクリ)ゲームばかりが出展されていました。
中国のオンラインゲームは、ひとつヒット作が出ると、キャラのビジュアルと名前を変えただけだけの類似ゲームが大量に発行されるという悪習慣があります。
2015年前後は中国ゲーム業界がPCオンラインゲームからスマホゲームへの転換期であり、行き詰まっていた時期です。
過激なコスチュームのコンパニオンも規制され、カメラ小僧の出入りも下火になってきた頃でした。
もうこのまま突破口が見つからずに、ChinaJoyもダメになっていくのかな・・・と2015年に行ったときは思いました。
翌年の2016年はChinaJoyに行きませんでした。
2017年、2年ぶりに行ってみたのですが、これが予想外に面白かったのです。

2017年中国はスマホゲーム業界が絶好調でした。業界自体に勢いがあるのが大きな原因ですが、ひとつのイベントとしてすごく面白かったです。
ChinaJoy 2017は上海新国際展覧中心の全館を使用して行われました。
【会場見取り図】


一般客はE1から入場し、E2、E3、E4と進みます。館を進むごとに、だんだん1ブースあたりのスペースが大きくなっていきます。
展示館をひとつずつ移動していくのですが、実質上、後戻りはできません。
移動方向が制限されているわけではないのですが、会場が広いので体力的に後戻りすることがほぼ不可能です。入口がE1館にあり、出口がN1館を出たところにしかないので、N館のエリアまで行ってしまったら、もうE館エリアに戻る気にはなれません。
そして、E1からE7まで進み、N5からN1まで一方方向に進むに従い、だんだんブース面積が大きくなり、強豪ゲーム会社のブースが登場します。
これはフェスの楽しみ方に似ています。
今年のトリはテンセントかNetEASEか、それとも・・・といったワクワク感があります。

入場すると最初に入る館がE2「CAWAE」テーマ館です。
「中国国際アニメゲーム・派生製品授権展覧会」として、ゲーム会社以外の、アニメ・漫画・周辺グッズ企業が出展するエリアです。
動画サイト、漫画アプリ、フィギュア、ネットライブ配信、雑多な企業が出展しており、カオスでした。

展示ブース同士の間隔が狭すぎたり、通路スペースが僅かしかないのに、その真正面でステージパフォーマンスを始めて渋滞を引き起こしたりと、レイアウトがぐちゃぐちゃでした。この混沌とした雰囲気はどこかで見たことがある・・・・
それは・・・安さの殿堂・ドンキホーテーーー
ドンキホーテみたいな雰囲気の中で、そのジャンルではかなりの知名度のある企業がわらわらとブースを出しているのです。
開催15年にもなる成熟した展示会で、こんな雑然とした賑わいを作り出せるのは、ある意味すごいと思いました。

大手動画サイトYouku


暴走漫画/閲文集団


米漫伝媒/ANIPLEX


コスプレなどのイベントステージスペース。準備時間中。こちらは整然と整備されておりノウハウの蓄積を感じます。


台湾の鴻海グループに買収されたシャープがChinaJoyに登場したことも話題になりました。
シャープはE3館 esmart館に出展。


ロゴ表記は「SHARP POWERED BY FOXCONN」となっています。
「FOXCONN」(富士康)というのは半導体部品のOEMで拡大してきた台湾企業で、シャープを買収した鴻海グループの本体ともいえる会社です。
シャープは鴻海傘下に入ってから3年ぶりに黒字に転じ、中国向けの販売が好調です。最近シャープ製品の宣伝もよく見かけます。
ChinaJoyでも8kディスプレイ製品を中心に大々的に宣伝していました。「液晶の父」としてシャープAQUOSは中国で強いブランド力を持っています。



インテル専門館。インテルはE4館を丸ごと使用。


インテルは競技としてのゲーム、いわゆる「eスポーツ」を全面に打ち出したプロモーションをしています。
eスポーツの国際大会は、パソコンゲームの世界におけるF1のようなもので、CPUの技術革新がより高度なプレイを可能にします。
ゲーミングPC、ゲーミングキーボード、マウスなど、ゲーム向けに設計された商品がPC及び周辺機器の販売を支えており、各社ゲームユーザー向けのプロモーションに力を入れていますが、ChinaJoyでのインテルの戦略はその最たるものとえいます。
eスポーツは日本ではまったく流行っていませんが、中国では非常に流行っていて、世界的にみてもかなり流行っているものです。
インテルの広告イメージキャラクターになっているのは、プロリーグに所属し国際大会でも活躍する中国人プロゲーマーです。

eスポーツは1チーム5人編成で二つのチームが対戦するのが基本。


バンダイナムコ上海。2017年ChinaJoyは大手の集うN3館に見事進出。
バンナムカラーのスタッフコスチュームがかっこいいです。バンナム上海のキャラをイメージさせる女の子たちがショーをやっていました。
「ワンピース」スマホゲームの制作陣の登場するイベントを行っていましたが、周囲の中国企業のブースの音響が大きすぎるので、トークショーなどは通常の音量でやっていると声が聞こえないです。特に真向かいのブースが爆音だったので・・・。


中国で根強い人気を誇る「剣網三」(『剣侠情縁』オンライン版Ⅲ)。N3館 西山居。
2009年8月のベータ版リリースから8周年を迎えた「剣網三」、2017年はリマスター版をリリース。
移り変わりの速い中国オンラインゲームの中では粘着度の高いファンを持つタイトル。





スマホゲーム「王者栄耀」(King of honor)が絶好調のテンセント。N2はテンセント館。プロゲーマーのチーム対戦イベント。


N1館を使って今年ChinaJoyのトリを務めたのはNetEASE。
NetEASE(網易/ネットイーズ)ゲームの20年史を紹介するきちんとした展示をしていました。入場制限するほどの人気。


和風スマホRPG「陰陽師」の宣伝は一切行わず、新作ゲーム「荊棘王座」に注力していました。


中国のゲーム業界はテンセントとNetEASE(網易)の二強のシェアが大きすぎて、中小・新規のゲーム開発会社の参入が年々難しくなっていると言われています。

ChinaJoy2017では最新ゲームのほか、VRシステム、先端ディスプレイ機器、ゲーミングPC、動画サイト、フィギュア、周辺グッズなど幅広いジャンルの商品やサービスを知ることができました。体力さえ持てば丸1日いても十分楽しめます。
なぜか入力システム(百度入力法)のブースまでもが自然に出展されている、この器の大きさがChinaJoy2017の魅力です。

2017年10月新番アニメ「宝石の国」bilibili動画で中国配信好調

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2017年秋クール・10月新番アニメも中盤を迎えています。
中国ではbilibili動画、Youku、IQIYIなどの大手動画サイトで、多くの日本新番アニメがサイマル配信されています。
TVシリーズの新番の場合、日本でのテレビ放送が終了してから1~2時間後に中国動画サイトでの配信が始まるのが一般的です。

毎年、秋クールの新番は質・量ともに充実しており、今年もたくさんの話題作が生まれています。
その中でも、bilibili動画で独占配信中の「宝石の国」は10月新番のダークホースと言われ、人気を集めています。

「宝石の国」 アニメ2017年10月スタート
原作:市川春子(月間アフタヌーン連載)
アニメ制作:オレンジ
公式サイト:http://land-of-the-lustrous.com/


公式サイトのストーリー紹介:
「今から遠い未来、かつて存在した生物が、不死の身体をもつ「宝石」になった世界で、月から飛来する謎の敵“月人”と宝石たちとの激しい戦いを描く、強くてもろくて美しいアクションファンタジーコミック。」

公式サイトでPVが公開されていますが、PVより本編の方が絵も音楽も動きも遥かにきれいで、尚且つ面白いです。
独特の世界観を持つ原作ストーリーと、アニメーションの圧倒的な表現力が見事に結合した素晴らしい作品です。

中国bilibili動画での配信時間は毎週土曜日22:00からです(中国時間)。
東京MXの放送が毎週土曜日22:00~(日本時間)なので、日本放送終了から1時間後となっており、MBSの放送よりも中国動画配信の方が時間的に早いことになります。

11月18日(土)に配信された第7話は、同時視聴者数が4万を超えました。
土曜日の夜10時という時間帯がネット視聴に適しているとはいえ、すごい数字です。

「宝石の国」第7話 「冬眠」 同時視聴者数 41228人 bilibili動画



22:00に更新されると同時に、視聴数があっという間に1万を超え、どんどん増えます。
視聴者は更新されるタイミングを待っています。
22:20頃に同時視聴者数のピークを迎え、第7話は同時視聴者数4万を超えました。

7話まで配信された11月24日の時点で「宝石の国」1~7話の合計再生回数は877.1万回です。
1話あたり平均100万を超えており、秋のヒット作のひとつです。

中国で配信される日本アニメの場合、1話あたりの再生回数が1000万回を超えるとメガヒット(ワンピース、ナルト、コナンなど)、100万回を超えるとヒットに入ります。

bilibili動画 2017年11月24日現在の新番上位作品。

Fate/Apocrypha     5905.6万回(~19.5話)
干物妹!うまるちゃんR 2343.7万回(~7話)
十二大戦        1259.9万回(~8話)
妹さえいればいい。   1247.5万回(~7話)
僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件 1078.6万回(~7話)
宝石の国        877.1万回(~7話)
鬼灯の冷徹 第二期    720.3万回(~7話)
血界戦線 & BEYOND(第2期)820.2万回(~7話)

※血界戦線のみ非独占配信。その他はすべてbilibili独占配信。

Fate、うまるちゃん、十二大戦が強いですが、この3作が強いのは想定内です。
こうやってランキング化してみると、「宝石の国」はダークホースであると同時に、中国アニメファンの志向性に合致した作品だと感じます。
中国視聴者の求めるものと「宝石の国」が表現するものが共鳴したのだと思います。

中国のアニメファンは年齢層が若く13歳から24歳の学生層が大半を占めます。
また、女子より男子視聴者の方が多いのではと思います。

3DCGの表現が斬新な「宝石の国」がbilibiliユーザーに受け入れられることがすごく嬉しいです。

中国の視聴者は年齢的に若いこともあり、新技術に対して柔軟です。
日本で3Dを使うと「なぜ3Dにする必要があるんだ」という議論が起きやすいですが、中国ではそういう発想がありません。
3DCGを使うことに、もともと何の違和感も持っていません。3Dの中でのクオリティを追求しています。
また、基本的にアニメを動画配信で見ているので、イヤホンの使用率が高く、音のクオリティにも敏感に反応します。
「宝石の国」は物質の砕ける音や、衝突する音、音楽の美しさも話題になっています。

瞬間風速では「Fate/Apocrypha」に続いて2位に。2017年11月17日~20日のランキング。



「宝石の国」が中国アニメファンの興味を引き付けた原因のひとつ?宝石たちに攻撃してくる「月人」は、中国視聴者から「敦煌楽隊」と呼ばれています・・・。


「宝石の国」第8話も楽しみにしています!!

中国版「花より男子」~「新版・流星花園 」2017年制作開始 キャストを発表

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アジア圏で何度もドラマ化され、各地で社会現象的ブームを起こしてきた「花より男子」中国版ドラマ「新生・流星花園」の制作発表会が行われました。
「新生・流星花園」クランクイン発表会 日時:2017年11月9日 主催:湖南衛視



大ヒット漫画「花より男子」(1992年~2004年 マーガレット連載)はこれまでに何度もドラマ・映画化されてきました。
まず、1995年に内田有紀主演で映画化されています。漫画連載開始から比較的早い時期の映像化でしたが、旬のアイドル女優とそのファンのための映画というかんじでした。当時はレンタルビデオで見た人も多いのでは。

「花男」ブームのきっかけとなったのが、アジア圏で社会現象的ブームを巻き起こした台湾ドラマ「流星花園」(2001年)です。

このドラマは中華圏で大ヒットし、主要キャラ4人を演じた台湾俳優たちは「F4」としてCDもリリースし、熱狂的な人気を得ました。
「流星花園」(Meteor Garden)は原作に比較的忠実な丁寧な脚本で、F4が全員180cm超えの長身でロン毛というビジュアル的に強いインパクトがありました。



「流星花園」の成功は日本にも衝撃を与えました。
台湾人の手によって、日本の少女マンガがこれほど絶妙にドラマ化されていることに驚きと感動を覚えた人も多いはずです。
2000年代前半の台湾では日本の少女マンガのドラマ化が盛んで、「流星花園」のほかにもジョセフ・チェンとアリエル・リン主演の「イタズラなキス」(悪作劇之吻)、ウーズンとEllaの「花ざかりの君たちへ」(花様少年少女)など名作を生み出しています。

その後、2005年にTBSで松潤主演によりドラマ化されて大ヒットし、「花男」はドル箱コンテンツとなりました。

2009年に韓国でドラマ化され、イ・ミンホ、キム・ボム、SS501のボーカルとして活躍していたキム・ヒョンジュンなど若手俳優がキャスティングされました。
その中でも特に、イ・ミンホはこの作品出演をきっかけにイケメン俳優としてブレイクしました。

2009年ににはもうひとつ、中国で「一起来看流星雨」という「花男」をもとにしているとみられるドラマが制作されています。
ただし、2009年中国版には原作のクレジットが入っておらず、制作側である湖南衛視は「湖南衛視のオリジナル作品」というスタンスを取っています。

そして2017年。台湾「流星花園」が制作されてから15年以上の年月が経ちました。

「流星花園」のプロデューサー、台湾F4の生みの親であり、その後も多くの台湾ドラマや映画を成功させてきた著名な女性プロデューサー・柴智屏(アンジー・チャイ)が再び中国で「流星花園」を制作するということで、新たにキャスティングが行われました。

2017年11月9日、制作者である湖南衛視の主催にて「新生・流星花園」クランクイン発表会が行われ、キャストが公表されました。
制作会社代表によると、2018年夏休み時期の放送を目指しているとのことです。

つくし:沈月 1997年生まれ 湖南省出身
道明寺:王鶴棣 四川省出身(制作発表会では18歳と言っています)
花沢類:官鴻 1995年生まれ、台湾出身 22歳
美作:梁靖康 広東省出身 23歳
西門:呉希澤 深セン出身 21歳

 

F4役の4人の平均身長は185cmとのことです。基本的に新人で、これまでほとんど芸能活動の経験がなく、これが俳優デビュー作となる人もいるようです。
花沢類役の官鴻と道明寺役の王鶴棣は非常に顔がいいです。4人とも本当に背が高いです。藤堂静役もほぼ新人ですが170cm以上ある女優をキャスティングしています。制作発表会のインタビューを見ると、つくし役の女優(沈月)が一番芸能経験がありそうです。

ビジュアル的にはちょっとやりすぎなくらいのハイクオリティです。

アンジー・チャイ氏によると、2001年版の「流星花園」は予算不足のため細かい部分の作りが雑で、ロケなども制約があった。また、原作が完結していなかったため本当の意味での結末がない。2017年版は新しい時代の要求に応えられるクオリティと表現で再生させたいと語っています。

『芳華』『空海』中国版『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を凌駕するダークホース・ハンギョン主演映画『前任3』

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年末年始は新作映画が目白押しです。クリスマスや元旦連休のあるこの時期は、中国でも映画館は活況です。
中国ではショッピングモール付帯型のシネコンがすごい勢いで増えています。
スクリーン総数は北米を抜いて世界トップになり、2017年10月時点で中国全土のスクリーン数は4.9万を超えています。そして、郊外型モールの建設ラッシュにより、いまも毎日スクリーンが増え続けています。

映画チケットアプリを開くとGPSで近くの映画館が表示されますが、市街地を歩いていると、だいたい1km圏内にある映画館が3つくらい表示されます。それくらい映画館が多いです。
映画アプリではチケット購入機能や作品情報のほかに、興業収入がリアルタイムに表示されます。
人々の映画興業収入に対する関心は高く、具体的な数字を頻繁に話題にします。

2017年12月に公開された馮小剛(フォン・シャオガン)監督の新作『芳華』は、文革終焉期の軍属の舞踊団の若者たちの人生を描いた作品で、非常に話題になっています。

『芳華』(Youth)2017年12月15日中国公開
監督:馮小剛。中国を代表する映画監督でヒットメーカー。
主演:黄軒、苗苗、鍾楚曦


1970年代後半、文革終焉期に軍属の舞踊団の団員として生きた若者たちを描いた作品です。
文革の終焉、毛沢東の死、中越戦争、改革開放といった時代の波にのまれながら、それぞれの人生を生きた男女の姿を、鮮烈な映像とカメラワークで淡々と語った映画です。
時間的には短いながらも中越戦争のシーンは強烈で、戦場での6分間のロングショットを撮るために7000万元(約10億円)が投じられたと言われています。
中国の映画やドラマ、小説などの作品には、政府を直接批判する表現はほぼみられません。
しかし、『芳華』のように、国や同胞のために大切なものを捧げた人間が、まったく報われなかったという現実を描いた作品はときどきあります。
一種の社会的なプロテストで、馮小剛監督が支持される理由でもあります。

興業収入ですが、1月8日時点で13.6億元。日本円換算で約217億円。中国では「10億元超え」がヒットの目安なので、『芳華』は興業的に成功といえます。
アプリユーザー評価:8.8点(10点満点)

グラフを見ると、公開直後の週末に最初の山ができ、翌週末にも前週に匹敵するほどの収入を上げています。口コミにより観客が動員されたと考えられます。
ただしピークの山が形成されるのが12月31日の週末までとなっています。

チェン・カイコー監督の日中合作映画『妖猫伝』(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』)が中国で先に公開されました。

『妖猫伝』2017年12月22日中国公開
(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』2018年2月24日 日本公開)
原作:夢枕獏『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』
監督:チェン・カイコー
主演:染谷将太、黄軒、張雨綺、阿部寛

唐の時代の繁栄と奔放さを、魔術的な美しさで描いた点が好評を博しています。
白楽天が李白の残した詩を通じて楊貴妃を敬慕し「長恨歌」を創作したというエピソードが主線になっています。
空海と白楽天がバディとして楊貴妃の死の謎を追っていくのですが、チェン・カイコー監督は唐代の文化・芸術・創作の美しさに対する賛美を表現したかったのではと思います。

宣伝では「総制作費150億円」とのふれこみですが、どういう計算で150億円(約10億元)なのかは疑問が持たれています。

中国興業成績は1月8日時点で5.17億元(約82億円)。制作費が本当に150億円だとすると、もう少し伸びてほしいところです。

12月22日の公開初日には高い数値を出しており、話題性・期待度が高かったことが伺えます。しかし公開の翌週は3連休ながら、落ち込みの幅がやや大きいです。ユーザー評価は7.9点。

12月29日には東野圭吾のヒット小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版映画が公開されました。

『解憂雑貨店』(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版)2017年12月29日公開
原作:東野圭吾
監督:韓杰
主演:王俊凱(TFBOYS)、迪麗熱巴、董子健、ジャッキー・チェン

2018年1月8日時点の興業収入は2.16億元です(約35億円)。
俳優の演技もよく、破綻なくまとまっているのですが、思ったより興業成績が伸びなかったようです。ユーザー評価:8.2。


公開日12月29日(金)とその後に続く3連休の動員が期待されましたが、3連休の最終日である1月1日から下降がみられます。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』中国版と同じ日に公開された中国映画『前任3』が思いのほか好成績を記録しています。

『前任3:再見前任』(元カノ3:さよなら元カノ)2017年12月29日公開
監督:田羽生
脚本:田羽生ほか3名
主演:ハンギョン(韓庚)、鄭愷、于文文

『前任3』は公開から2週間足らずで13.26億元(約210億円)を記録しています。最終的には20億元までいくのではとの予想もあります。
俳優はともかく女優は有名な人は一人も起用されていません。現代ものでセットにお金がかかっていないことは一目で分かります。
制作費は3000万元といわれており、中国では「低予算映画」の部類に入ります。
まさにダークホースです。
前半は割とベタなコメディなのですが、後半の脚本が素晴らしく、脚本の力で勝利した珍しいケースです。
監督の田羽生は1983年生まれで脚本家出身です。
映画「前任」シリーズの第3作で最終作です。
ストーリーはシンプルで誰にでもありえる現実味のあるものです。
主役の男性2人(ハンギョンと鄭愷)は会社を興し、事業は成功したけれど恋人とはうまくいかなくなり、ちょっとした喧嘩をきっかけに二人とも彼女と別れてしまいます。
前半は恋人の干渉から開放され、派手に遊びまわる日々を謳歌する男2人の生活がコメディタッチで描かれます。
後半は一転し、ハンギョンと彼女の心理が巧みな脚本によって深く描かれます。隙間を埋めるように入り込んできた新しい人物の位置付けが独特です。
ハンギョンは中国人男性ならではの素朴さと狡さを両方表現できるよい俳優だと思います。


グラフを見ると、公開直後の週末と比べて翌週の週末に大きく上昇しています。また、1月2日から1月5日は中国では普通の平日ですが、平日でも高い動員数を示しています。これも口コミによるものと思われます。ユーザー評価は9.0をつけています。

中国では新作映画は基本的に金曜日に公開されます。
次々と新しい作品が公開されるので、公開直後の週末が勝負です。そこで客足を集め、好評を得られると口コミで動員が伸びます。
しかし、動員が続くのはよくて4週間です。なぜかというと、新しい作品がびっしりとスケジュールされているので、人々の目はより新しいものに奪われてしまうからです。淘汰のスピードは非常に速いです。

スマホゲーム「旅かえる」中国で大流行~中国製乙女ゲーム「恋と制作人」との対比

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いま中国ではHit-Point社開発のスマホゲーム「旅かえる」が爆発的に流行っています。社会現象といってもいいです。
Apple Storeを中心に1月18日から急激にダウンロード数が増加し、瞬く間にSNSの話題が「旅かえる」で埋め尽くされました。

「旅かえる」はかえるにお弁当や道具を持たせて旅に送り出し、かえるが旅先から送ってくれるポストカードやおみやげを集めるという育成ゲームです。
日本公式サイト:http://www.hit-point.co.jp/games/tabikaeru/

 

このゲームは日本語版しかありません。操作画面のボタンやメッセージはすべて日本語で、しかもひらがなとカタカナが多いです。
漢字が多ければ中国人でも意味を予想できますが、ひらがなばかりなのでどうしようもありません。
日本語がほぼまったく分からない何百万人という中国人ユーザーたちが、ネット上の攻略を頼りにこのゲームをぽちぽちと操作しています。

「旅かえる」は占有メモリが小さく、電池を食うこともなく、レベルアップのために大量の時間を割く必要もありません。
操作パターンが極めて限られており、プレイヤーが主にすべきことは「待つこと」です。

この超スローペースのゲームが偶然にも、過酷な消費競争社会に生きる中国人の心をつかみました。

「かえるは何も告げずに出掛けていって、いつ帰ってくるかも分からない。
帰ってきたら帰ってきたで、ずっと部屋に閉じこもって会話もない。次はいつ旅立つつもりなのかも分からない。
だけど旅先から写真を送ってくれたり、おみやげを持って帰ってきてくれたりと、成長を見守ることができる。」

という育成シミュレーションを通じて、子どもの成長を見守る親の気持ちが分かる・・・といった分析が様々なメディアで議論されています。
蛙(かえる)は中国語でワ(Wa)と発音しますが、同音意義語で子ども(「娃」)のこともワ(Wa)と発音します。
また、中国で流行っているネット用語「佛系」(仏系、仏教系、僧職系)というキーワードと当てはまったこともブームの一因です。
ストイックに辛抱強く待つことを要されるスタイルが「僧職系ゲーム」(中国語:佛系遊戯)と呼ばれています。

中国でこれほどの人気を得ていますが、開発元のHit-Point社に何らかの利益還元はあるのでしょうか。
マネーに相当するクローバーの課金はiPhoneではできるようですが、Androidではできません。

クローバー購入画面 左:iPhone  右:Androidはグレーアウト。

 

公式では現在日本語版しかリリースされていませんが、中国ではAndroid版はソース書換えにより日本語文字を中国語に置き換えた「中国語版」が出回っています。
また、パロディ画像や同人画も非常に多く、どれが正規版なのかよく分からない状況になっています。

「選股宝」という株価情報アプリのパロディ広告。中国株の銘柄に関するアイコンが散りばめられており、かえるは部屋で株式相場を研究中。


非公式と思われるキャラクターグッズもあっという間に生産され、ネット上で大量に販売されています。



「旅かえる」が話題になる前は「恋と制作人」というスマホゲームがSNSの話題をさらっていました。
「恋と制作人」(原タイトル:恋与制作人/意味:恋とプロデューサー)は中国の本格的乙女ゲームとして派手に宣伝されています。2017年12月20日リリース。


中国では女性向けのいわゆる「乙女ゲーム」はまだ発展途上にあり、「恋と制作人」は初の大型中国製乙女ゲームといえます。
4人のハイスペック・イケメンキャラとヒロインが恋愛を展開させていくという恋愛シミュレーションゲームです。
音声は中国語版と日本語版があり、日中ともに有名声優を起用しています。
男性キャラクターはイケメン・ハイスペックで、いずれも風や時間を操るなどの超能力を持っています。絵柄は違いますが、世界観的にはCLAMPに近いと思います。
周棋洛(22歳、アイドルスター CV:辺江/柿原徹也)
白起(24歳、特殊警察 CV:阿傑/小野友樹)
李澤言(29歳、企業家 CV:呉磊/杉田智和)
許墨(26歳、科学者 CV:夏磊/平川大輔)
  

4人のメインキャラの一人、李澤言の誕生日は1月13日という設定です。

2018年1月13日李澤言の誕生日に合わせて、高層ビルの外装LED宣伝で、
「李澤言、誕生日おめでとう」「驚かないで」「あなたのブラックカードでやったことよ」というメッセージが流れました。


ビルの外装LED広告は最低でも12万元(約200万円)かかりますが、これはファンがお金を集めて誕生祝いメッセージ(広告)を流したと言われています。この仕掛けはSNS上でものすごく話題になり、公式も宣伝とキャラクターの誕生日ボーナスを行ったため、1月13日前後にDL数が激増しました。

ところが、「旅かえる」の出現により「恋と制作人」の存在感が薄れてしまっています。
この二つのゲームは主に女性ユーザーをターゲットとしますが、多くの時間を割き課金をして「男」を育てるより、無料でかえるを育てていた方が性に合っている・・・と考えるユーザーが多いのかもしれません。
なお、中国の某リサーチメディアの分析記事によると、「旅かえる」の開発コストは500万~800万円ですが「恋と制作人」は8億円以上と推定されています。

TFBOYS後輩グループのデビューは・・・。TF家族とTF練習生

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中国最強のボーイズグループ・TFBOYS。彼らが出ている広告を見ない日はないほど売れっこの3人ですが、成人を目前にしてソロ活動が増えています。中国は18歳で成人です。
メンバー最年長の王俊凱は昨年9月に名門・北京電影学院に進学し、生活拠点が重慶から北京に移ったこともあり、3人での活動は実質的に難しくなっています。

TFBOYSはもともと重慶に拠点を置く芸能スクールに在籍していた男の子たち3人で結成されました。
過去ログ:中国最強のショタグループTFBOYS~EXOに迫る勢い・・・?
スクールを運営している芸能会社は、現在「TFエンターテイメント」と呼ばれています。
TF ENTERTAINMENT(北京時代峰峻文化芸術発展有限公司(Time Fengjun Entertainment)公式サイト:http://www.tfent.cn/

TFエンターテイメントに所属しているタレントは、デビュー前の子も含めて「TF家族」といいます。
明らかに、日本のジャニーズ事務所や韓国のSMエンターテインメントの様式を参考にしています。
「TF家族」には男の子しかいません。デビュー前の子を「TF練習生」といいます。

TF練習生の人数やメンバーは流動的で、現在公式サイトにプロフィールが掲載されている練習生は18人です。
TF Family 練習生:http://www.tfent.cn/article/plist.html?cid=29

TF練習生はこれまでもネット番組などで露出していましたが、昨年11月、ついに人気バラエティ番組「快楽大本営」(HAPPY CAMP)に出演しました。
「快楽大本営」(HAPPY CAMP)は、中国で最も成功したバラエティ番組で、今年で放送21年目という長寿番組でもあります。
2017年11月11日放送の「快楽大本営」では、TF練習生たちが「超人誕生日記」という曲を披露しました。
EP「超人誕生日記」に参加したのは10人のTF練習生です。


「快楽大本営」(HAPPY CAMP)TF練習生「超人誕生日記」


湖南衛視 2017~2018カウントダウンコンサート(跨年演唱会)での「超人誕生日記」


EP「超人誕生記」の10人のメンバーに入ったのは、
丁程鑫、敖子逸、陳璽達、張真源、宋亜軒、馬嘉祺、李天澤、劉耀文、陳泗旭、賀峻霖の10人です。
最年長が2002年2月24日生まれの丁程鑫、最年少が2005年9月23日生まれの劉耀文で、12歳~16歳のメンバーで構成されています。

上段:賀峻霖、宋亜軒、陳璽達、敖子逸、丁程鑫  
下段:馬嘉祺、張真源、陳泗旭、李天澤、劉耀文




ただし、「超人誕生日記」を歌った10人が、ひとつのグループとして正式にデビューするとは思われていません。
この10人の中から、5人組もしくは3人組のグループを作るのではと予測されています。
「5人組グループを二つ作って、全員デビューさせてほしい」とファンは願っていますが、それが難しいということも何となく分かっています。

10人の中に、デビューが確実視されているメンバーがいます。それが、先日16歳になったばかりのTF練習生のセンター・丁程鑫です。
この子は何年も前からTF練習生の中心的な存在で、TF家族のネット番組にもよく登場しています。

丁程鑫 2002年2月24日生まれ。重慶出身。2013年TF家族に加入し練習生になる。


新グループができた折には、リーダーになるとことも確実視されています。というか、新グループ自体、丁程鑫を世に出すためのプロジェクトといっても過言ではありません。

EP「超人誕生日記」のパフォーマンスを見ると、全員かなりダンスが上手いです。振り付けのセンスもジャニーズJrと比べても遜色ないと思います。
パフォーマンスとしては、センターが固定されているわけではないのですが、中心になっているのはお兄さん組(2002年生まれ)の2人です。
その一人、馬嘉祺はTF家族に加入した時期は2017年7月とまだ日が浅いものの、フォーメーションでは重要なポジションを担っています。

馬嘉祺 2002年12月12日生まれ。河南省鄭州出身。2017年7月よりTF家族に加わる。


すごくダンスの上手い子です。身長は未公表なので実際どれくらいなのかよく分かりませんが、足がものすごく細くて長いです。
芸能活動のために韓国に渡り、韓国でのデビューを目指してもおかしくなさそうな子です。
ダンスと歌が上手く、明るく爽やかなキャラクター、幼少期からタレント活動の経験があり、子役出身と言われています。

TFBOYSという偉大な先輩グループがいるものの、TF練習生の歩む道は平坦とはいえません。
TFBOYSの3人は、今後ますます個別の活動が増えるとみられています。それは、彼らが「TF家族」という枠組みから離脱することを意味します。そうなると、新たにデビューするグループは、先輩であるTFBOYSからの応援を受けることができなくなります。
そういう背景もあり、丁程鑫は「16歳にしてTF家族の未来を決める重責を負っている」と言われています。

TFエンターテインメントがジャニーズを意識しているのは明らかです。
男の子しか採用しないこと。健康的なイメージを重視すること。小さな頃から練習生としてファンに名前を覚えさせること・・・。
しかし、TFエンターテインメントが中国芸能界に登場してから、まだ5年余りしか経っていません。
TFBOYSは絶大な成功を収めましたが、今後、TF家族、TF練習生がジャニーズのようにひとつの芸能文化を形成できるかどうかは分かりません。

芸能文化が根付くためには、平和で安定した時代が長く続く必要があるのだと思います。
商業経済の苛烈な発展が続く中国では、成功したときのリターンは大きいけれど、変化のスピードが早すぎて、人の心に浸透する前に新しい波に襲われてしまいます。人の心は熱しやすく、乾きやすく、だからこそ新しくてみずみずしいものが常に求められています。

黄景瑜出演の映画『紅海行動』(OPERATION RED SEA)異例のロングラン

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今年の春節は遅く、2月16日が旧暦の正月でした。約1週間に及ぶ春節休暇は映画業界にとってかきいれ時で、国産映画を中心にいくつもの大作が公開されます。
春節映画のひとつである『紅海行動』(OPERATION RED SEA)は、2月16日の公開から1ヶ月近く経つ現在も口コミで興行成績を伸ばしています。

この映画には、BL実写ドラマ『上瘾』(Addicted)の攻役・顧海(グーハイ)を演じていた黄景瑜(Johnny Huang)が主要キャストとして出演しています。
(黄景瑜について:過去ログ

『紅海行動』(OPERATION RED SEA)2018年2月16日公開 138分 3D


興行収入:33億元突破(3月12日現在。日本円換算で約550億円)
監督:林超賢(ダンテ・ラム)香港の監督で「紅海行動」の前に「湄公河行動」(OPERATION MEKONG)という同ジャンルの映画を成功させています。
出演:張澤、黄景瑜、海清、杜江、蒋璐霞(いずれも中国大陸の俳優)
製作:博納影業、中国人民解放軍海政電視芸術中心(人民解放軍海軍が製作バックについています)

ストーリー:ソマリア海域で海賊に襲われた中国商船の救出のため、中国海軍の特殊部隊が出動する。続いて、北アフリカの某国(架空の国)で動乱が勃発し、部隊は中国人居留者を避難させる任務を命じられる。しかし、動乱は化学兵器の技術秘密の取引が絡んでおり、中国人が人質に取られている。その人質を救出するため、8人の特殊部隊のレンジャーたちがアフリカの反乱軍に挑む・・という話です。

「紅海行動」の興行収入は33億元を突破しており、歴代中国映画の中でも2位になりそうな勢いです。
大ヒット映画のメインキャラとして出演したことで、黄景瑜の株が急上昇しています。
一連の中国実写BLドラマで攻役をやってた子たちは概して演技が上手かったですが、黄景瑜は特に俳優として恵まれた素質を持っています。
187cmの長身に筋肉質な体格、なおかつ顔が小さいのでさっぱりした印象を与えます。アクションものでは重宝されるルックスの持ち主です。
飄々とした目つきと声が個性的で、幅のある役柄ができそうです。





「上瘾」(Addicted)は黄景瑜の出世作ですが、中国国内では放送・配信が厳禁されており、公式の場で「上瘾」の名が出ることはありません。インタビュー記事などでも「上瘾」のタイトルは伏せて「某人気ネットドラマ」などと書かれます。

「『上瘾』に出てた子がこんな映画に出てるんだな・・・」くらいの気持ちで観にいったのですが、とんでもない映画でした。
「紅海行動」は全編3Dの戦闘シーンで、残酷で血なまぐさいシーンの連続です。個人的にはあまり好きな題材の映画ではないのですが、それでも映像力があまりにもすごくて、観終わった後は「すごかった」と「面白かった」の二言しか出てきませんでした。
薄暗い船室や砂埃の舞う荒野で戦いが繰り広げられ、緊張感が緩むときが一瞬もありません。
特殊部隊の8人の隊員は選び抜かれた精鋭ではあるものの、突出したヒーローや天才がいるわけではありません。
冷静で実直な隊長の指揮のもと、各自の技能を生かしてチームで戦います。ただし、その戦いぶりは軍人というよりは、現代武器を駆使する剣客のような印象を与えます。
正規の中国軍人という設定なので、国に対する忠誠は絶対的で、戦いに怯えることはあっても任務に抗うことはありません。
どんなに不可能と思われる任務も諦めずに、ひたすら冷静に立ち向かっていきます。





ここ数年、中国では軍事映画が流行っています。
「湄公河行動」、「戦狼Ⅰ・Ⅱ」、「紅海行動」と軒並み成功しているので、今後も同ジャンルの映画ができるのではと思います。
このジャンルの名作として知られるのが米国映画「ブラックホーク・ダウン」(2001年、リドリー・スコット監督)で、雛形として影響を与えていると思われます。
しかし、中国の一連の現代戦争映画がどんなに映像的に優れていても、海外では評価されにくいかもしれません。
なぜなら、戦争映画でありながら、平和を希求するというメッセージ性に欠けるからです。
中国の戦争映画は、「この世から争いや衝突を完全になくすことは現実的に不可能。それならば自分が強くなるしかない。」という価値観に基づいています。
「紅海行動」のラストに中国海軍の艦隊が出てきます。そのシーンは「あくまでも自衛のために戦うのだ」と強調しています。
つまり、反戦的とはいえないけれど、好戦的というわけでもなく、刺激的な商業大作でありつつ国の価値観を絶妙に反映させた非常にハイレベルな映画です。

放浪新世代・GENERATIONS from EXILE TRIBE~MAD CYCLONE上海公演に行ってきました

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先週末GENERATIONSのMAD CYCLONEツアー上海公演に行ってきました。
GENERATIONSの正式なグループ名は「GENERATIONS from EXILE TRIBE」、つまりEXILEファミリーの一員で、よく「EXILE、三代目JSBの弟グループ」と紹介されています。ボーカル2名の7人組グループです。
EXILEらが所属する芸能事務所LDHは「LDH ASIA」を設立し、アジア展開に力を入れています。中国では、2.5次元舞台の大手ネルケプランニングの中国法人ネルケチャイナと共同で活動しています。

GENEは2017年から着実に中国活動を進めてきました。
2017年5月20日 GENERATIONS World Tour SPEEDSTER マカオコンサート
2017年8月26日 野外フェス 上海サマーソニックに出演
2017年8月25日 片寄涼太 上海ファンミーティング

そして2018年3月、深セン(3月2日~4日)、北京(3月9日~11日)、上海(3月16日~18日)の三都市でMAD CYCLONEツアーの中国9公演を行いました。

上海公演は3月16日~18日の3日間、美琪大劇院(MAJESTIC THEATRE/座席数約1261席)にて行われました。
GENERATIONS from EXILE TRIBEは中国語で「放浪新世代」といいます。

 



中国のファンは20代半ばから30歳くらいまでの女の子が多い印象です。日本のファンよりも若干年齢層が上かもしれません。



1940年代に作られた歴史のある劇場です。コンサートホールではないので大きなステージではありません。



応援の作法は日本ファンに倣っており、みんなフラグやタオルを持参していました。バッグは完売。



チケットはネルケチャイナの会員先行で購入しました。
会員先行といっても、無料で会員登録できるので、実質的には一般発売です。
ただし、ネルケチャイナのサイトではアリペイ(支付宝)かWeChat(微信)電子決済を使えないと購入できません。また、チケットは順豊(SF Express)という宅配業者が配送しますが、送料は着払いです。
上海公演分(3公演)は1月25日午前10時から発売になりましたが、発売開始から3時間くらいはサーバーにつながりにくく、チケットを購入できたのは午後1時過ぎでした。
「サーバーにつながるようになったな」と思った途端に売り切れたので、もし同じようなキャパだったら次回の上海公演はもう取れないだろうなと思っています。
ネルケチャイナの発売期間が過ぎても残席があると、外部のチケット業者(永楽票務)での販売になるのですが、上海公演のチケットはネルケチャイナで完売になり、永楽票務には流れなかったようです。深セン、北京は直前まで680元の席が残っていました。

中国ではボーカルの片寄涼太くんが圧倒的に人気があります。
日本では、白濱亜嵐、片寄涼太、佐野玲於の3人の人気はそこまで差がないはずなのですが、中国は違います。
それはもう、笑っちゃうくらい片寄が人気あります。

ボーカルとしてフロントに立つ片寄涼太は、漫画から抜け出してきたようなスタイルと顔立ちで、中国の女の子たちがすごく好みそうなルックスをしています。
それと、片寄くんは中国語の勉強をすごくがんばっています。
他の6人のメンバーも中国語で積極的にファンとコミュニケーションしているのですが、片寄くんは他の6人とは中国語の勉強量が違うなと思いました。
中国語を勉強している動画がWeiboやbilibili動画などにアップされており、中国人の先生について非常に真面目に勉強している様子を見ることができます。

MCで「これからもGENEを応援してください」と言っていたのですが、「応援する」は中国語では「支持」(zhi chi)という動詞で表します。しかし、この「支持」(zhi chi)という単語は日本人にとって発音が非常に難しいのです。
それを片寄くんはちゃんと話せていました。
客席の中国人ファンも、おおお~というかんじで関心していました。
ただ、ボーカリストとしてはもう一人のボーカルである数原龍友にリードされていました。
後ろの席に座っていた3人組の女の子たちは熱心なファンで、中国公演はほぼ通っていたようですが、その子たちが「涼太は昨日(上海2日目)から声が辛そうだったけど、今日(3日目)はもっと辛そう」と言っていました。

これはEXILEファミリー全体に言えることかもしれませんが、GENERATIONSのメンバーはファンとのコミュニケーションが上手いです。
上海ライブは劇場型の会場だったので、日本でやっているような派手なファンサをするスペースはないのですが、制限がある中でも体の動きや表情によって客席とコミュニケーションをとっていました。メンバーの自然な表情は、芸能人と観客の垣根を越えた親しみを感じさせます。このあたりがLDHのライブの魅力なのかなと思いました。

約2時間のライブでしたが、会場が小さく海外公演であるせいか、よい意味で低予算なかんじのシンプルなステージでした。
中国のタレントだったら、もっと派手で気張った演出をするはずです。実力や実績に見合わない派手な演出をする芸能人も多いのに、GENEのシンプルさは新鮮で好感が持てました。

いま、中国のエンタメカルチャーは国粋的な傾向にあります。
映画、ドラマ、バラエティ、音楽、あらゆる分野でメジャー人気を獲得しているものは、中国の大衆的な価値観に沿ったコンテンツです。この傾向はますます強まるのではと思います。
また、数年前までは、香港、台湾、韓国、日本のエンタメの方が中国よりも進んでいると感じましたが、いまは差がなくなっています。
むしろ外見だけでいうなら中国の方が多くの美形を輩出しているし、照明・映像機器などハード機器が充実しているので、ゴージャスな演出も難なくこなします。
そんな中で、日本のエンタメは中国でどういう位置づけになっていくのでしょうか。
日本のエンタメが中国でメジャーな存在になるのは難しいかもしれません。「中国で大人気」とマスコミに報道される日本人タレントでも、中国のメジャーな俳優や女優の持つ影響力と比べれば、微々たる存在なのです。
しっかりしたコンセプトを持ち、自然体で楽しみを分かち合えるエンタメは長く愛されます。日本にはそういう力を持ったエンタメが少なくありません。中国にはない価値観を求める人々が、日本を含め海外のコンテンツをより強く求めるようになるのではと思います。

中国バラエティ「偶像練習生」(Idol Producer)から中国ボーイズグループ「NINE PERCENT」誕生

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中国はバラエティ番組が非常にさかんで、ドラマと並んで強い影響力を持ちます。人気バラエティ番組は、動画サイトで億単位、ひいては10億単位のアクセスがあります。
2018年冬季~春季は、動画サイト大手IQIYI(愛奇芸)が制作配信したネットバラエティ「偶像練習生」が大変話題になりました。

「偶像練習生」(Idol Producer) 配信期間:2018年1月19日~4月6日 毎週金曜日20時~ 全12回 IQIYI(愛奇芸)独占配信。 
司会:張芸興(EXO レイ) ゲスト:李栄浩(中国の実力派歌手)、王嘉尓(GOT7のジャクソン)、欧陽靖(中国で活動する有名なラッパー)など

 

以下、写真は「愛奇芸偶像練習生」公式Weiboよりお借りしてます。
公式Weibo:https://weibo.com/u/6382798471

「偶像練習生」は韓国バラエティ「PRODUCE 101 第二シーズン」の中国版といっていいです。
「PRODUCE 101 第二シーズン」は韓国Mnetが2017年に放送して大人気になった番組です。ボーイズグループ「WANNA ONE」を生み出した番組でもあります。

「偶像練習生」は、番組の枠組みだけでなく、衣装、演出、主題歌、カメラのカット割り、出演者同士のシチュエーションから展開に至るまで、「PRODUCE 101」にそっくりです。
しかし、韓国Mnet側は、「偶像練習生」の制作者であるIQIYIに対し、番組改編権を許諾した覚えはないと声明を出しています。
IQIYIは「PRODUCE 101」の改編権の許諾を取得したかったけれど、権利を取得できなかったのではと推測されます。というのは、IQIYIのライバル配信会社であるテンセント動画が「PRODUCE 101」第1シーズン(ガールズグループ編)の中国版制作権を獲得していたので、二社がバッティングすることになり、IQIYIは正規許諾を受けることができなかったのではと言われています。

普通の感覚からすると、許諾を取得できないなら制作を中止するべきなのですが、ここで止めないのが現在の中国芸能です。

番組のメイン司会者はEXOのレイです。レイは中国のバラエティで大活躍しています。レイはバラエティや司会に向いています。話すテンポや表情の作り方など司会者としての素質があります。ただし、EXOに所属しているとはいえ、EXOのエの字も口にしません。韓国のことすら話題にしません。

~「偶像練習生」のコンセプトとルール~

所属事務所の異なる100人のアイドル練習生が集まり、投票で選ばれた上位9名が期間限定でグループデビューするというものです。100人が9つのイスをめぐって毎週課題に挑戦します。最初100人いた練習生が60人に絞られ、さらに60人→35人、35人→20人に淘汰され、残った20名の中からデビューする9名が選ばれます。
番組審査員とともに、視聴者が「プロデューサー」となって、デビューを目指して頑張るアイドルを“PICK”するというコンセプトです。IQIYIの有料会員になると多く投票できます。

レイとTOP20に残った練習生たち。


100個のイスのセット。


主題歌「Ei Ei」のフォーメーション。


この番組には、すでに別のグループでデビューした経験があったり、他のオーディション番組に出て一定の知名度を得ている子が少なくありません。一方で、まったく無名の子もいます。つまり、最初から人気に相当の開きがあります。

最初から最後までぶっちぎりで一番人気だったのが、蔡徐坤です。最終順位1位で「NINE PERCENT」のセンターとしてデビュー。
ボーイズグループ「SWIN」からデビューした経歴があり、舞台慣れしており実力的にも性格的にも安定しています。ビジュアルはK-POPアイドルの影響を強く受けています。
蔡徐坤(英語名:August)1998年8月2日生まれ 182cm 湖南省出身

 

韓国「PRODUCE 101 第二シーズン」に中国人練習生として出演していたJustinと朱正廷が「偶像練習生」に参加しています。この二人は既に固定ファンがいるので、一貫して上位につけていました

Justinはまだ16歳なのに、ダンス・歌・ラップの基礎があり、性格も社交的で明るく、非常に人気がありました。(最終順位4位でデビュー)
Justin(黄明昊)2002年2月19日生まれ 身長181cm 浙江省出身 
  

Justinはデビュー直後のSHINeeのKeyに似ています。

「偶像練習生」主題歌「Ei Ei」2分13秒あたりのJustinのカメラアングルはさすがです。


台湾出身の陳立農(チェン・リーノン)も最初から人気がありました。最終順位 2位でデビュー。歌が上手いです。身長も高く183cm。まだ高校生です。


有力芸能事務所 Y.Hエンターテイメント(楽華娯楽)からは7名が参加し、そのうち3名(范丞丞、Justin、朱正廷)がデビュー組に入りました。同事務所の畢雯珺(ビー・ウェンジュン)は、187cmの長身に恵まれたルックス、さらに安定したボーカルで評価されながら、惜しくも10位に終わりました。感情があまり表に出ず、無欲と思われてしまうタイプは人気が伸びないのかもしれません。



ダークホース・麦鋭娯楽の李希侃(リー・シーカン)。韓国の芸能事務所CUBEで練習生をやっていたことがあるそうです。実力的には中の上、韓国系のルックスと明るい性格で人気を集め最終的に13位に入りました。 



そして、「偶像練習生」の最大の勝者といえるのが、坤音娯楽の4人です。
霊超(DIDI)、木子洋(KWIN)、岳岳(PINK RAY)、卜凡(KATTO)。グループ名は「BC221」または「ONER」。



ちなみにグループ名の「BC221」ですが、これは「紀元前221年」を意味します。始皇帝が統一王朝を築いたのが紀元前221です。事務所の美人社長さんの苗字が「秦」なのでこのグループ名に・・・?・・・中二病。。

坤音娯楽(QIN'S ENTERTAINMENT)は、2016年にできたばかりの芸能事務所で、事務所には基本的にこの子たち4人しかいません。
創設者はイギリス留学帰りの若くて美人の女性(通称:秦女士)と言われています。
どこからこんな子たちを集めて来たのだろうと唸らせるほど面白い子たちで、公式のキャラ設定が秀逸です。
坤音娯楽は自作の短編動画番組を大量に作っており、bilibili動画などで配信しています。その動画がすごくよくできており面白いのです。
4人のうち誰一人としてデビュー組には入りませんでしたが、「偶像練習生」出演を契機に人気が出て、番組終了後「ONER」というグループ名でいろんな番組や雑誌に出ています。

「偶像練習生」はアイドル志望のルックスに恵まれた男の子が100人も出てくるわけですが、当初のコンセプトとしては意識的にBLテイストを排除していたと思います。ところが、後半に入る頃にはCP(カップリング)ファンの勢力がどんどん強まり、最終的にはCPがらみのネタがかなり目立ちました。
BL動画に飢えてる人たちが「偶像練習生」や「坤音娯楽」の動画に群がっているかんじです。

版権問題はともかく、「偶像練習生」は非常に面白いバラエティ番組でした。放送期間は僅か3ヶ月足らずでしたが、久しぶりに翌週が楽しみになる番組でした。
「NINE PAERCENT」として晴れてデビューした9人は、すでに活動を開始しています。
まずは、5月5日~6日の上海ファンミーティング(会場:メルセデスベンツアリーナ)が発表されています。



5月19日泉州ファンミーティングのチケットも発売されており、今後各地でファンミーティングが開催されるものと思われます。

NINE PERCENTがどのように活動していくのかについて、ある観点から非常に注目されています。
それは、韓国「WANNA ONE」の活動方式を模倣するのか?ということです。
確かにWANNA ONEは韓国で成功を収めています。しかし、WANNA ONEに倣って活動するということは、予め決められたレールの上を歩むことを意味し、中国独自のオリジナル性のあるグループを作ることを、最初から半分放棄するようなものです。
とはいえ、「中国独自のアイドル」を作ろうとしても成功した試しがないので、成功させるためには徹底的に外国の既存モデルをコピーするほかないのでは?という考え方もあります。読めないことをやって失敗するくらいなら、他人の真似をした方がいいと考えても無理はありません。
いずれにしても、本当のファンは応援するはずです。
NINE PERCENTの活動期間は18ヶ月。若い彼らにとっては、18ヶ月というのは案外長い期間なのではと思います。ファンとメンバーが充実した納得のできる18ヶ月間を過ごせることを願っています。

中国芸能ベンチャー 坤音娯楽(QIN'S ENTERTAINMENT)×BC221 ONERデビュー

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2018年冬季バラエティ「偶像練習生」(Idol Producer)が終了し、上位9名に入った練習生が「NINE PERCENT」としてデビューしました。
この番組は、韓国Mnetで2017年に放送された「プロデュース101」をテンプレートとしており、異なる事務所に所属する約100名の男子アイドル練習生が参加します。よって、グループデビューする9名の所属事務所もバラバラです。
「偶像練習生」には、31の芸能事務所+8人の無所属の練習生が参加しました。練習生個人の競争であると同時に、事務所同士の戦いでもあります。

グループデビューできる上位9名の中に1人も入らなかったにもかかわらず、それ以上の注目を集めているのが坤音娯楽(QIN'S ENTERTAINMENT)所属の4人です。4人は「ONER」というグループ名で、雑誌やテレビ・配信番組に出まくっています。

もともと「BC221」をグループ名にしていましたが、「偶像練習生」終了以降「ONER」という名前を使うようになりました。


左上:卜凡 KATTO  右上:岳岳 PINKRAY  左下:木子洋 KWIN  右下:灵超 DIDI


■ リーダー 岳岳 (ユエユエ) 本名:岳明輝。1992年7月11日生まれ 身長183cm 北京出身「偶像練習生」最終順位27位
航空工学の有名国立大学である南京航天航空大学卒業、英グラスゴー大学の大学院に留学という異例の高学歴。24歳になってから本格的にアイドルを目指したことで、年齢をよくいじられています。
左腕や胸にかなり大きいタトゥーがあります。最近の動画ではタトゥーにモザイクがかけられていて、今後どうするつもりなのか気になります。

■ 木子洋(ムーズヤン)本名:李振洋 1994年4月21日生まれ。山東省出身。身長188cm、体重68kg。「偶像練習生」最終順位22位。
芸名の木子洋は本名の一部をもじったもの。「李」という漢字を分解すると「木子」になります。
服飾系の有名大学北京服装学院の「服装表現学科」つまり、モデル学科の出身。この大学のモデル学科は入学条件が非常に厳しく難関です。在学中からショーモデルとして活動することが多く、木子洋もDiorなど多くの有名ブランドのショーに出た経歴があります。
ショーモデルをやれるだけあって、肩幅が広くスタイルがいいです。爬虫類系の厭世的な顔立ちながら、温厚で人当たりがよく、すごく優しい話し方をします。ホストをやらせたら4人の中で一番成功しそうです。

■ 卜凡(ブファン)本名:卜凡凡 山東省青島出身。1996年4月13日生まれ 身長192cm。RAP担当 「偶像練習生」最終順位12位
4人の中で一番単独でもやっていけそうなのは卜凡だと思います。バラエティセンスがあります。
木子洋と同じく北京服装学院のモデル学科出身、現在休学中。身長192cmというのは普通の人の中にいると灯台のように大きいです。平均身長185cmの「ONER」の中にいるので、違和感なく溶け込めます。大柄ながら情に厚く繊細なハートの持ち主。イメージはスラムダンクの桜木花道。
木子洋と卜凡は、難関校のモデル学科出身だけあり、ポージングやカメラ写りが抜群にいいです。どんな変わった服でも着こなします。

■ 霊超 (灵超 リンチャオ)2001年1月9日生まれ 身長182cm、体重56kg。河北省出身。本名:李英超。「偶像練習生」最終順位15位。
まだ17歳で、4人の中で飛びぬけて若いので弟として非常に可愛がられています。当初は「憂いの王子さま」というキャラ設定でしたが、実際には3分以上じっとしていられないほど元気でハイテンションなので、キャラ設定が修正されました。写真よりも映像の方がキレイです。
系統的にいうと、元EXOのルハンに似ています。細身で子顔、高長身で色素が薄いです。

現状「ONER」はアルバムを出しているわけでもなく、代表曲もありません。「全員高身長でルックスのよい、キャラが立っているトークの面白い人たち」としかいえないのですが、彼らのミニバラエティやインタビュー動画などが、ものすごく面白いのです。
編集と戦略が舌を巻くほどよくでてきています。スポンサーや監督が見せたいものを撮っているのではなく、ファンが見たいものを作っているから面白いのです。

BC221 ONER TV 0506 | ONER生活日常 「偶像練習生」終了後に作られた日常動画。ファッション誌の撮影風景が多く収められています。



ONERはファッション関係の仕事を次々に受けていますが、中国の男性ファッション誌の服装センスは独特です。はっきりいって変な服が多いですが、着こなしているのがさすがだと思います。





常に卜凡×岳岳(卜岳)、木子洋×灵超(洋灵)の2人に分けてCP(カップリング)になっています。CPを意識的にやってるのは明らかなのですが、仲がいいのは確かだと思います。
 

坤音娯楽(QIN'S ENTERTAINMENT)の創業者・秦周懿(通称:秦女史)は若い女性で美人です。
ロンドンの大学院で金融学を専攻し、中国に帰国後エンタメビジネスで起業した・・・と紹介されています。

坤音娯楽(QIN'S ENTERTAINMENT)秦社長。4月6日配信の「偶像練習生」決勝戦に出演。


秦女史は、もともとアイドルは好きだったけれど、イギリス留学中にBIGBANGやSUPERJUNIORの海外公演の盛況ぶりをみて、芸能ビジネスを立ち上げる思いを強めたと記事に書かれています。
創業資金として、自ら約7千万円(480万人民元)を投じて事務所を設立し、自分でタレントの卵をスカウトして7人の練習生を集めたけれど、最終的に残ったのは現在「ONER」として活動している4人です。
20代である程度の資金を用意できることから、もともと裕福な家庭の出身だったと推測されます。しかし、7千万円では到底足らず、途中から他の出資者が加わり、4人をボーイズグループとして人前でパフォーマンスできるレベルに育てるのに、約1億6千万円(1000万人民元)使ったと語っています。そのほとんどは、レッスン料と宣伝に費やされたそうです。

人数で割って計算すると、タレントを1人デビューさせるのに、1500万円~2500万円かかる計算になります。
日本でもよく、タレントを育てるには最低でも1000万円かかるといいますが、中国では恐らく日本以上にお金がかかります。

報道によると、QIN'S ENTERTAINMENTは最近株式の10%を割当て、約5億円(人民元3000万元)の融資を受けたとされています。
つまり、会社の価値が日本円換算で約50億円(人民元3億元)と評価されたことになります。創業者の秦女史は約7千万円(480万元)を投じて起業したと語っているので、設立から2年で会社の価値が60倍以上になった計算になります。
「ONER」はまだアルバムを出してもいないし、曲がないのでライブをやる力もありません。
それなのに、彼らの「人気」のおかげで事務所の価値が60倍になりました。
「フォロワーが多く、今後もフォロワーが増加する見込みが極めて高い」ことは、ネット化が進んだ中国では異常な価値をもたらします。

「ONER」は5月20日に北京で初のファンミーティングを行います。「北京M空間」というライブハウス開催で座席数が少ないこともあり、発売から1秒でチケットが完売したそうです。


坤音娯楽 BC221 公式Weibo https://weibo.com/u/5460766524

発売から1秒で完売というのは嘘ではないと思います。

もともと自社サイトで販売するつもりだったのですが、アクセス集中とサーバー攻撃に遭い、予定どおり発売することができず販売方法と時間を当日変更しました。
その際に、どれだけのアクセスが集中し、問題解決するためにサーバーを何台追加したかのデータを当日のうちに公式Weiboで公開したのです。
やることがいちいち斬新で、何をやっても注目を集める存在になっています。

現政権のもと、中国の各分野の規制はますます厳しくなり、表現は自由とは言いがたく、比較的自由だったネットの規制も急速に進んでいます。
そんな環境の中でも、QIN'S ENTERTAINMENTのように、戦略力により頭角を現す人々がいます。それは中国の人口パワーのなせるわざでもありますが、波に乗って成功すれば巨額の富が手に入るという現実が、人々を奮い立たせるのだと思います。
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