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上海同人イベント「COMIC UP-魔都同人祭-18」レポ(1)~急激に充実した企業出展~

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中国端午節の連休に合わせて、2016年6月9日~10日の2日間、上海最大の同人誌即売会「COMIC UP-魔都同人祭-Vol.18」が上海新国際展覧センターで開催されました。
「COMIC UP」は上海地区で最も規模が大きく、最もメジャーな同人イベンです。2008年頃から始まったイベントで、基本的には1年に約2回開催されています。
上海地区には「COMIC UP」以外にも同人イベントはいくつもありますが、「COMIC UP」が圧倒的にメジャーで集客力のあるイベントとして認知されています。
年々を規模を拡大してきましたが、2015年11月の「COMIC UP17」では、ついに上海新国際博覧センターという超メジャーな会場に場所を移しました。
上海新国際博覧センターでは上海モーターショー、CHINAJOY(中国最大のゲームショー)などが行われる有明ビックサイトのような位置づけの会場です。

本来は同人即売会+コスプレイベントですが、ここ1年くらいの間に、企業ブースが非常に充実してきています。

「COMIC UP18」は、新国際博覧センターのW1館とW2館の2館を使って行われましたが、W2館は丸々企業出展スペースでした。
ゲーム・アニメ関連企業が集まるイベントとしては、毎年7月に行われる「CCG EXPO」(中国国際動漫遊戯博覧会)があるのですが、「COMIC UP18」は「CCG EXPO」と遜色のないほど企業出展が充実していました。

■出展企業ブースレイアウト図


以下、主な企業ブースについて紹介していきます。

bilibili動画:中国弾幕動画サイト。「まどかマギカ」中国向けスマホゲーム、「夢王国と眠れる100人の王子様」、「Fate/GrandOrder」など、bilibiliにて配信するゲームのキャンペーン、会場の実況中継、7月に行われるオフラインイベント BILIBILI MACRO LINKの宣伝などを行っていました。

  



アニプレックス(ANIPLEX):「冴えない彼女の育て方」のグッズを中心に販売していましたが、早く完売したのは中国で人気の高い「Fateシリーズ」、「まどかマギカ」キャラクターのフィギュアでした。アニメ製作会社としてCOMIC UPに企業ブースを出展する行動は先進的だと思います。
  

遊族網絡(YOUZU):「刀剣乱舞」のPC版、スマホ版の中国語バージョンをリリース。
「刀剣乱舞」の中国語版リリースプロモーションはCOMIC UP18の目玉といってもいいです。遊族網絡は中国のゲーム運営会社で上場企業。

 

  



ネルケチャイナ(奈尔可(上海)文化発展有限公司):2.5次元舞台「フェアリーテイル」と「NARUTO-ナルト-」のプロモーション。
「ファアリーテイル」は7月1日~3日上海で5公演を上演。永楽票務でチケット発売中(http://www.228.com.cn/ticket-102436628.html)
「NARUTO」は10月22日~30日の上海初日を皮切りに、杭州、北京、湖南、広州、深センと6都市、37公演(上海12公演、他の都市は各5公演)が予定されています。(永楽票務の舞台版「NARUTO」特設ページ



木綿花 MUSE:版権代理店。youku&tudou独占配信中のアニメ「JOJOの奇妙な冒険 ダイヤモンドは傷つかない」(ジョジョ4部)のプロモーション。」



閲文集団:起点中文網、QQ文学などオンライン小説を束ねるコンテンツ開拓会社。中国小説のアニメ化、ドラマ化、グッズ化など二次展開に力を入れる。テンセント傘下。
左:「擇天記」のアニメ版第二期の放送告知。「擇天記」は閲文が力を入れているコンテンツで、元はネット小説です。先日ドラマ版の制作発表会が行われ、元EXOのルハンが主役の陳長生役を演じると発表されました。
右:中国コンテンツとしては「盗墓筆記」以来の同人盛り上がりを見せた「全職高手」。舞台化する予定だそうです。

  

布卡漫画(BUKA):コミック閲覧サイト・アプリとしては中国最大手。多くのコンテンツを配信。中国国産の漫画作品にも力を入れています。「尋找克洛托」(Looking for CLOTHO)など中国漫画作品のアニメ化も企画しています。



今回のCOMIC UP18で驚いたのは、アプリの宣伝のためにブースを出す企業が異様に多く、
小節・漫画・イラスト・二次創作作品の投稿アプリが山のようにリリースされています。
同じようなアプリが大量にあり、こんなにたくさん作ってどうするんだと思わざるを得ません。
2年ほど前から「アニメの次は漫画」という流れがありましたが、それが世に出てきたといえます。ここに出展されているものが全てではなく、類似するアプリ・サービスがまだまだ大量に存在すると考えられます。

左:菠蘿飯(boluofan)。「BL漫画・BL小説が大量に読めるアプリ」と言い切っていますが大丈夫なのでしょうか。 
右:白熊閲読。同人小説アプリ。立看板のチャット画面の会話では「文豪ストレイドックス」のキャラの受と攻について議論されています。

  

左:網易(NetEase)の網易GACHA。二次元ACG同人アプリ。 右:麦萌漫画。漫画閲覧・投稿サイト。

  

大角虫漫画:「漫画・ラノベが毎日更新される超すごい神アプリ」とでっかく書いてありますが、誇大広告の心配はしないのでしょうか。



半次元:ACG(アニメ・漫画・ゲーム)同人創作投稿・SNSアプリ。人気絵師のポストカードプレゼントのキャンペーンがあったせいか、行列ができていました。 
  

別のスペースでは、東方プロジェクト、艦これ等の絵師さんの作品展が行われており、絵師さんのpixiv IDが表示されています。

  

次元文化(DIMENSION):前身はコスプレイヤーの同人グループから始まった「杭州 304 文化」。コスプレイヤーの商業活動のマネージメントを行うようになり、更に2016年3月には巨額の投資を受け活動の幅を広げています。



天聞角川:中国語版ラノベの販売。
ジョイポリス:上海環球港にセガ・ジョイポリスをオープン。バーチャル歌姫・紫嫣(Violet)の宣伝。
ラブライブ!ステージ:グッズ販売と中国ファンのグループによるラブライブステージ。安定的に盛り上がります。
ファイナルファンタジー14、ドラゴンクエストのプロモーション。

COMIC UP18の企業スペースは盛況でした。
漫画・イラスト投稿アプリが乱立しており、コンテンツ不足・取り合いが起きそうですが、一定期間を経て淘汰されていくと思います。
企業ブースを見渡すと、比較的早期から進出していた日本企業が目立たなくなり、新しいビジネス形態に乗って進出してきた企業・コンテンツの存在感が増しています。
「物を売る」という形態から、「ソフトを売る」形態に本格的にシフトしています。もちろん、日本でもこの傾向は何年も前からありますが、中国では「物」から「ソフト」への変化が更に顕著です。

中国産コンテンツも成長してきていますが、いわゆる「オタク文化」のベースを生み出したのは日本です。
中国でも「萌」や「腐」「二次元」といった概念、二次創作、コスプレ、オタ芸、弾幕、イタ車といった楽しみ方は広く普及していますが、これらはいずれも日本が発祥地です。
中国は吸収力も購買力もあるけれど、文化を生み出すことについてはまだ日本に強みがあります。

続きの「同人誌即売、コスプレ編」についてもご覧ください。
上海同人イベント「COMIC UP-魔都同人祭-18」レポ(2)~同人ジャンルとコスプレの流行傾向~

中国本土で映画「寄生獣」公開~125分版が中国全国のスクリーンに登場

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9月2日(金)、映画「寄生獣」が中国全国の劇場で公開されました。中国映画市場にとっても日本映画にとっても画期的な出来事といえます。



日本映画が中国の映画館で全国的に上映されることは多くありません。
中国では、映画館で公開できる外国映画の本数に制限があり、しかもその限られた「枠」の大部分がアメリカ映画に割当てられているので、アメリカ映画以外の外国映画が劇場公開されるケースは大変少ないです。

ただし、2015年あたりから少しずつ状況が変わり、日本映画が劇場公開される動きが出ていました。
2015年5月に中国で3D版ドラえもん映画『STAND BY MEドラえもん』が劇場公開されて大ヒットしたことが大きいです。これを契機に、日本側からの中国映画市場に対する関心も大幅に高まりました。
2016年1月には、「NARUTO」の映画版『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』(ボルト ナルト・ザ・ムービー)が大々的に公開され、2016年6月には有村架純の『ビリギャル』も劇場公開されています。

毎年6月に行われる上海映画祭の「日本映画ウィーク」では多くの新作日本映画が上映されており非常に人気がありますが、2016年は『世界から猫が消えたならなら』など最新の作品をもってきて「初の海外並行上映」を実施するなど、例年以上に力を入れていました。

日本映画の中国劇場進出がじわじわと進む中、まさかの「寄生獣」公開です。

中国では、政府機関(広電総局)による審査、すなわち検閲に通過しなければ映画を劇場公開することができません。

「寄生獣」が政府の審査に通過したことに誰もが驚き、中国メディアでは「奇跡の上映」などとも言われています。

2014年10月~翌年3月にかけて、アニメ版の「寄生獣」もテレビ放送されていました。
アニメ版は日本放送と並行して、中国動画大手サイト「youku&tudou」が正規版を配信していました。
ところが、2015年4月に中国政府機関(文化部)の指導により、配信停止処分を受けてしまったのです。
これは、日本アニメに対する「ブラックリスト通達事件」と呼ばれており、このとき名指しで指摘された「残響のテロル」「Blood-C」「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」ほか、「進撃の巨人」「東京グール」などとともに「寄生獣」も配信停止措置がとられました。

なぜ「寄生獣」が上映?と驚きの声が挙がっていますが、『STAND BY MEドラえもん』ヒットの実績のある山崎貴監督の作品であったことも大きいと思います。

中国公開版は、二部構成の作品だったところ、一本の作品(125分)に短縮されています。
つまり、ほぼ半分に縮められています。
そのため、大幅なカットが施されており作品の印象がかなり違っています。
最大の違いは、中国大陸版「寄生獣」には、重要なキャラクターである浦上が登場しません。浦上か関係する市役所包囲のシーンも大幅にカットされています。

その結果、ラストシーンが大幅に変更されています。

「え、ここで終わりなの!?」

と声を上げてしまうくらい驚愕のエンディングでした。

ですが、尺を半分に削り、浦上が登場しない以上、あの終わり方が一番自然かもしれません。
中国で公開するにあたり、過激なシーンがことごとくカットされるのではと懸念する声もありましたが、そういう観点からではなく、尺を半分に縮めることを目的にエピソードカットがなされています。

細部のエピソードがカットされ、主人公新一の変化に関する描写が省略されている部分があるので、作品のスケールが一回り小さくなっているようには感じられますが、かえって共感しやすいかもしれません。中国語字幕のクオリティもとても良かったです。
125分の尺に収められた中国バージョンは、新一の回想のような視点で編集されているように思います。
これはこれで、一本の作品としてまた違った解釈ができて面白いのではないでしょうか。

中国観衆の反応ですが、「寄生獣」は「ドラえもん」と違って万人に受け入れられるタイプの作品ではありません。
しかし、実際に鑑賞した人の評価は決して悪くありません。
作品テーマの深さ、染谷将太、深津絵里の演技、ミギーのキャラクター、CGの創意性などは高い評価と好感を寄せられています。
とはいえ、中国の映画市場が娯楽偏重であるため、興業的にどのような結果になるかはまだ何ともいえません。

9月3日時点の評価は10点満点中の8.4。54%の観衆が9点~10点をつけています。



9月2日は9月の第一金曜日で、多くの新作が公開されましたが、「寄生獣」は4位となっています。

2016年9月3日の劇場公開映画ランキング 映画チケットサイトGewaraの統計
http://www.gewara.com/movie/



1位:『スター・トレック BEYOND』(9月2日公開)
2位:『ジェイソン・ボーン(Jason Bourne)』(8月23日公開)
3位:『アイス・エイジ 5(Ice Age: Collision Course)』(8月23日公開)
4位:『寄生獣』(9月2日公開)
5位:『我們的十年 Days Of Our Own』(9月2日公開、中国映画)

1位から3位を占める作品はアメリカの3D・IMAX映画です。
視覚的な刺激を重視する、アトラクション的な楽しみ方が根付いてしまっているといえます。

「寄生獣」を皮切りに、より多くの日本映画が中国公開されるかもしれません。
日本でヒットしても海外市場では反応が良くないこともあり、その逆もありえます。
中国のスクリーンには、ハリウッド大作、CGを駆使しスターを大勢使った中国の大作映画が溢れているので、リアリティを重視する日本映画を観るとギャップを感じるはずです。
そのギャップを好む人と、受け入れられない人がいるはずです。
社会的情緒の変化に左右されるので、何が中国でウケるのか、何が売れるのか、どんなにマーケティングしても読めない部分があると思います。
中国で公開される日本映画が増えると、意外な作品がヒットしたりするのでは・・・と期待しています。

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学vs氷帝~テニミュ初の上海公演

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ミュージカル「テニスの王子様」、通称「テニミュ」の上海公演を観に行ってきました。
「テニスの王子様 3rdシーズン 青学 vs 氷帝」の上海公演は2016年9月15日、16日、17日の3日間5公演で、上海の美琪大劇院で上演されました。テニミュ史上初の中国公演です。





チケット:VIP 1080元(約16,200)/680元(約10,200円)/ 480元(約7200円)/280元(約4200円)/180元(約2700円)(VIPはツーショット撮影付き)

美琪大劇院(MAJESTIC THEATRE)は1941年に作られたクラシックな中型の劇場です。上海市内中心の繁華街「南京西路」から一本裏に入ったところにあります。

  

「テニミュ」は2003年から現在まで続く10年以上の歴史を持つコンテンツで、何人もの人気俳優を輩出しています。
メインキャラクターは何代も役者が入れ替わり、後々まで「○代目○○」という肩書きで呼ばれるほどです。
多くの役者が上演を重ねているので、キャラの立ち居振る舞い、ビジュアル、原作に基づく特徴的な仕草や決めゼリフなどは研究しつくされています。
いわゆる2.5次元舞台は、先行して存在するアニメ版の声優の演技に舞台版の役者が寄せてくるケースがよく見られますが、テニミュの場合は舞台実績があまりにも豊富なので、もはや独立したひとつの世界になっているように思います。

テニミュは伝統的に、ミュージカルという割には役者の歌唱力にばらつきがあります。
その代わり、ダンスが上手い、芝居が上手い、テニスプレイのアクションが上手い、原作どおりのアクロバットができるなど、役者によって得意分野と個性があります。
どの役者にも共通していえるのは、テニスのプレイをしているときの動きが美しいことです。
役者が手にしているのはラケットだけで、舞台セットはネットだけです。音響と照明でボールを表現し、役者の演技と体の動きでテニスバトルを表します。
音響と照明を駆使したステージ上でのテニスバトルはまさに「お家芸」というべき見事なものです。「テニミュ」というエンタメの独特の表現方式であり、芸術的です。
緊迫するテニスシーンは照明・音響・役者の連携と信頼関係があるからこそ成り立つもので、コンテンツとしての成熟度に感動します。

ただし、テニミュには「型」があり、ストーリーの展開・決着のつけ方も決まっています。
前半を見ていて、「面白いけれど、テニミュはどこまでいってもテニミュだな」と思う瞬間もありました。

10年以上続く長寿コンテンツ「テニミュ」。それを新しく切り開き、観客を引き寄せるのは、役者の魅力だと思います。

今回のキャストの注目の新人、跡部景吾役に抜擢された三浦宏規がすごくよかったです。
バレエダンサーであることがよく語られますが、ダンス以上に演技がいいと思いました。声質がとても良く、芝居・歌ともにメインキャストとして舞台を引っ張っていました。
ダンスもバレエを取り入れてはいますが、あからさまにバレエを披露するわけではなく、跡部としてのダンスのバリエーションのひとつとして溶け込んでいたと思います。


9月16日(金)夜公演を観たのですが、1階席の集客率は6~7割でした。
集客率が高いとはいえないのですが、お客さんの反応は良かったです。
日本から観に来ていたお客さんもちらほらいたのですが、基本的には中国現地のお客さんでした。9割以上が20代前半の女の子です。

観に来ていた中国人の女の子たちは、もともと「テニミュ」というコンテンツの存在を知っていたと思います。
テニミュのDVDを観たことがある、もしかすると日本まで観に行ったことがある人もいたかもしれません。
もともとテニミュを知っている中国人テニミュファンが上海公演を観に来ていたように思われます。

テニミュの代表曲ともいえる「Do Your Best」がかかったとき、周りのお客さんは「Do Your Best」を知っているような反応でした。
プレゼント・手紙を預けることができるのですが、手紙を預けるダンボールがいっぱいでした。
好きな役者宛の手紙やプレゼントを預けるというシステムを知っていたのだと思います。



ただ、お客さんの反応はピュアというかストレートで、人気キャラである手塚と不二が接触するシーンでは、客先の女の子から「キャ~」という声が上がったり、氷帝学園のメンバー一同が登場するシーンで歓声が起きたりして、海外公演ならではの雰囲気でした。
アンコールは特に、お客さんがキャーキャーいうことが盛り上がりの証拠になっていました。



出演者がところどころのセリフを中国語にして混ぜてくるのですが、中国語セリフはお客さんに大変ウケてました。
テニミュはコミカルなシーンが多いので、中国語を挟める場面が多いです。

昨年の「黒執事」、今年7月の「フェアリーテイル」、今回のテニミュ上海と、ネルケプランニング・チャイナにより2.5次元舞台が中国に次々と上陸しており、来月10月からは舞台「NARUTO-ナルト-」が始まります。
舞台「NARUTO-ナルト-」は10月22日~30日の上海初日を皮切りに、杭州、北京、湖南、広州、深センと6都市、37公演(上海12公演、他の都市は各5公演)が予定されています。
NARUTOは中国で非常に人気のある作品です。少年JUMPでの漫画連載が終了したときは、中国国営放送局CCTV(中央電視台)ニュースで報道されたほどです。
NARUTO舞台劇は、2.5次元舞台というものを知らない新しいお客さんを多く取り込むことになるのではと思います。

急増する日本アーティストの上海ライブ~セカオワとワンオクが同じ週に上海ライブ開催

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最近日本のアーティストがたくさん上海にやってきます。2016年秋は日本のバンドの上海ライブラッシュです。

いま現在日中関係は悪くありません。
デフォルトが低迷状態だと考えると、いまは「低迷の中ではとても良い状態」といっていいと思います。
人間の体にたとえると、「大きな病を抱えているけれど、特に痛いところはなく普通に日常生活が送れる」という状態です。
もちろん、病を抱えている事実は変わらないので、いつ問題が勃発するかは分からないのですが・・・。

上海カニの美味しい季節・11月の第4週は、日本のメジャーバンドが1日置き・平日に上海でライブをやります。

ONE OK ROCK(ワンオク)「2106 Live in 上海」
日時:2016年11月22日(火)開演20時 場所:メルセデスベンツアリーナ
チケット:アリーナ 1280元、980元、スタンド:880元、680元、480元 (現在のレート 1元=約15円)


ついに待望のワンオク上海ライブが実現。ワンオクは香港、台北では以前からライブをやっていたのに、中国本土にはなかなか来てくれませんでした。
会場のメルセデスベンツアリーナはコンサート利用する場合、1万3千人くらい入ります。
テイラー・スウィフト、BIGBANGなど多くの海外アーティスト、ジェイ・チョウなど中華圏の人気アーティストがこの会場でライブをやります。

9月23日10時にチケットが発売になり、アリーナ席は一瞬で完売しました。チケットは大手チケットサイト「大麦」やアミューズ中国のタオバオ(淘宝)公式ショップなどで販売。

SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ/中国語表記「世界末日」)「ZAI LIVE - Live in 上海」
日時:2016年11月24日(木)開演20時 場所:上海雲峰劇院
チケット:180元、380元、480元、680元(現在のレート 1元=約15円)
座席数1600くらいの中型劇場での公演になります。普段はコンサートではなくミュージカルや演劇をやっている劇場です。
現地チケットサイト(大麦)によるとすでに完売しています。
http://piao.damai.cn/109801.html


セカオワは今年の9月にも上海に来ています。

Concrete & Grass 2016(混凝草音楽節)という9月16日~17日の2日に渡り行われた上海野外フェスにも出演しています。2日目のメインステージのトリを務めました。


この野外フェスは郊外の誰も知らないような運動公園で開催され、チケットも高くないフェスです。学生割引チケットも設けられています。
セカオワの日本での知名度を考えると、なぜこのフェスに参加してくれることになったのか少々なぞです。
11月24日の単独ライブもかなり小さな会場で、チケット価格が比較的安価におさえられています。日本で成功を収めているバンドなのに、中国ではやけに地道な活動を展開するんだなという印象です。学生ファンに配慮しているのでしょうか。
ワンオクが初上海ライブでいきなり超メジャーな会場であるメルセデスベンツアリーナに登場するのと対照的です。

この他にも多くのバンド・グループが上海ライブを予定しています。

10月15日(土)にはグローバルに活動を展開するポストロックバンドMONOが上海のMAOライブハウスでライブをやります。


10月23日(土)、24日(日)OLDCODEX 「ツアー2016~2017 FIXED ENGINE IN 上海」
場所:上海浅水湾文化芸術センター 


11月20日(日)DEF-TECH 場所:黄浦劇場 中国大陸初ライブ



文化・エンタメ産業は国際政治の影響を強く受けます。
直近では2012年のいわゆる尖閣諸島国有化問題で、日中関係が一気に悪化しました。
2012年秋にどん底に落ち込み、日本アーティストの来中公演は一時期ほぼゼロになりました。
1年以上最悪の状態が続きましたが、2014年頃から徐々に回復し、中国の所得増加(別の言い方をするとインフレ)に伴い来日ビザの緩和が進み、いまでは膨大な数の中国人が日本旅行に訪れています。
宝塚、ジャニーズのコンサート、2.5次元舞台の会場で中国人ファンの姿を目にすることも珍しくありません。
そんな状況を受けてか、様々なジャンルのアーティストが、中国、特に上海での活動を再び視野に入れるようになっています。

おまけ:ミュージカル『刀剣乱舞』~幕末天狼傳~上海公演発表会が10月12日に上海虹橋芸術センターにて行われます。
ネルケチャイナ会員向けにWechat公式アカウントにて申込を受け付けていました(定員は200名)。

中国BLネット映画「双程」と「不可抗力」~逆風の中の中国「耽美小説」映像化ラッシュ

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2016年中国では立て続けにBL実写ネット映画・ドラマが公開されました。
そのひとつが「双程」です。
「双程」は藍淋という女性作家の同名のいわゆる耽美小説が原作です。

「双程」A ROUND TRIP TO LOVE
主演:高泰宇、黄靖翔
制作:次元文化、次元影業
配信日:2016年9月12日 前編配信開始
配信サイト:中国動画サイトLetv(楽視)、捜狐(sohu)動画など。有料会員向け配信作品として公開されました。



クレジットの制作は「次元文化・次元影業」(DIMENSION)となっていますが、「次元文化」はコスプレイヤーのマネージメント会社です。
さらにいうと、「次元文化」の前身は杭州の大手コスプレサークルでした。コスプレサークルが拡大成長し、コスプレイヤーのマネージメントを行うようになり、2016年には融資を受けて映像制作会社「次元影業」を作ってしまったのです。
「次元文化」映像制作プロジェクトの第一弾として制作されたのが「双程」です。

受け役の程亦辰(チェン・イーチェン)を演じた黄靖翔(ホアン・ジンシャン)はものすごく有名なコスプレイヤーです。
プロフィールには「モデル、俳優、コスプレイヤー」と併記されていますが、コスプレイヤーとしての活動がメインです。
中国小説の「盗墓筆記」や、古装ファンタジーもののコスプレが有名です。
刀剣乱舞の鶴丸のコスプレで日本のツイッターでも話題になったことがあります。
【黄靖翔コスプレ関連書籍】
  

攻役の陸風(ルー・フォン)役を演じた高泰宇はコスプレイヤー出身ではなく、芸能系学校の出身です。長身で韓ドラ俳優みたいな雰囲気の人です。けっこう演技が上手いと思います。

中国はコスプレが盛んですが、女性レイヤーより男性レイヤーの方が人気があり、レベルが高いです。
サイン会などをやると何千人というファンを動員できるカリスマ的な人気を誇るコスプレイヤーもいます。
彼らは自分たちで写真集やポスター、ポストカードを自主制作して売っています。そこから更に選ばれた精鋭は商業出版の写真集などを出すに至ります。

コスプレ写真集の中でBL的なシチュエーションを取り入れるのはもはや当然のことなので、「双程」はコスプレの延長で実写BL映画を作ったという印象を受けます。
「次元文化」は「コスプレイヤーをスターに育てる」ことを目指しているので、制作側の意図でもあると思います。

「双程」と同じ作家の小説を映像化した、「不可抗力」というBLネット映画も公開されました。

「不可抗力 UNCONTROLLED LOVE」(「不可抗力之男僕的秘密:不可抗力の下僕の秘密」)
主演:孟瑞、王博文
制作:新片場、奇樹有魚、智頂互娯
配信日:2016年6月28日 配信開始
原作:藍淋



原作はものすごく有名な耽美小説です。
ネット上ではあまりにも有名で、二次創作やK-POPグループのFanfictionのカップリングに名前が置き換えられた「改名版」も多いです。
私も5~6年前にあるBBSにアップされていたものを読んだことがあります。私が読んだのはSuperJuniorのカップリングに名前が置き換えられたバージョンでした。

小説のセリフを映画シナリオでもそのまま使っており、原作に非常に忠実に作られています。
展開もエピソードが一部カットされていることを除けば、ほぼ小説どおりなので、

懐かしい・・・・!

と思ってしまいました。原作小説が最初に発表されたのは2005年で、相当数の女子が読んだことがあると思います。
耽美小説の古典的有名タイトルの映像化といっていいです。
今回の映像化、配信に向けて働いたスタッフや協賛会社の中には、「学生の頃にはじめて読んだ耽美小説が「不可抗力」だった」という女性も多いのではと思います。

原作小説は映画版よりもっと悲惨で救いようのない作風です。
映画版は俳優が割と柔和で愛嬌のあるルックスなので、悲劇性が薄まっていたように感じます。

「双程」より「不可抗力」の方が原作ファンにとっては満足度の高い出来になっているかと思いますが、「双程」の方がお金がかかっていて映像がきれいです。

「双程」は特に、この種のBL映画にしては非常にお金がかかっていて、セット、衣装、音楽、カメラワーク、映像処理などのクオリティが高いです。
BL実写にありがちな、低予算的な処理がなされている部分がほとんどないです。
それどろか、不必要なほどの豪華絢爛な「金持ちセット」が登場します。
とくに音楽がすごくいいです・・・!

ドラマ「上癮」(Addicted)もそうだったのですが、俳優の演技が上手いです。いったいどこで勉強してきたんだろう。と思ってしまうほどです。

しかし残念なことに、中国の動画サイトでは、「双程」も「不可抗力」も公には視聴できない状況になっています。
中国国内の動画サイトから削除されています。
「不可抗力」も「双程」も配信から僅か1~2ヶ月の間に、配信停止になってしまいました。
現在では主に、Youtubeやタイのサイトが視聴プラットフォームとなっています。Youtubeは中国国内からはアクセスできないようにされており、基本的には視聴できません。

中国動画サイトで配信できないと、配信許諾料や広告の利益分配などを得られません。収益を確保する道はあるのでしょうか。
「双程」と「不可抗力」以外に、2016年は9本のBLドラマ・映画が配信されると言われていましたが、内容を変更するか、配信規模を縮小あるいは公開の場を国外に移すしかなさそうです。

ミュージカル刀剣乱舞上海公演~ 舞台「NARUTO-ナルト-」中国全国ツアーに続く2.5次元ミュージカル

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先日上海虹橋芸術センターの前を通りました。
年明け2017年1月13日~15日の「ミュージカル『刀剣乱舞』~幕末天狼傳~」上海公演の会場となる劇場です。

虹橋芸術センターは今年オープンしたばかりの劇場とシネコンの複合施設です。
もともとは公会堂を改造したような古くからある映画館(天山電影院)でしたが、地下鉄駅と大通りに隣接する立地の良さを生かし、新しい芸術センターに完全リニューアルされました。


こんなに立派なシアターで刀剣乱舞ミュージカルをやるなんて・・・・。
いつも2.5次元舞台を上演している渋谷のアイアシアターや六本木ブルーシアターが構造的には仮設建築物に近いことを考えると、上海公演の劇場はすごく厳かに感じます。
もっとも、アイアやブルーシアターは、舞台から1列目までの距離が非常に近いという代え難い長所もあります。

上海虹橋芸術センターも舞台から1列目までの距離が大変近く設計されています。





10月15日(土)午前10時から刀剣乱舞ミュージカル(刀ミュ)上海公演のネルケチャイナ会員先行販売が始まりました。

■ネルケチャイナ会員サイト(Wechat公衆ID)
氏名、住所、携帯番号などを入力すれば会員登録できます。会員費はありません。


先行販売はPCサイトとスマホサイトで受け付けていましたが、サイトに繋がり難い状況が続きました。
私がサイトに繋がった時点では、全日程VIP席が売り切れでした。日本向けに予め押さえられてい分が多かったのでしょうか。

ネルケチャイナ先行分は、現地に居住している中国人でないと購入しにくいです。
サイトが中国語であるのは、言語の問題なので乗り越えられない壁ではありません。
しかし、支払い方法がWechat(微信)とアリペイ(支付宝)という中国の電子マネー即時決済しか対応していません。
この二つは中国ではメジャーな電子決済ツールで、中国人であれば両方ともアカウントを持っているものですが、人民元銀行口座を保有していることが前提になるので、日本から観に行こうとしている人にとっては非常にハードルが高いです。

ネルケチャイナでの先行発売は10月15日と16日の2日間だけで、残チケットは中国の大手チケットサイト「永楽票務」で販売されることになっていました。
しかし、5公演分のチケットはネルケチャイナ会員先行でほぼ完売になり、永楽票務での中国一般販売はごく僅かですぐに完売になりました。

永楽票務(http://www.228.com.cn)「音楽劇 刀剣乱舞」 http://www.228.com.cn/ticket-193581480.html

 

正直、こんなに早く刀ミュ上海公演のチケットが売り切れるとは思っていませんでした。

日本向けに確保された比率が高かったのかもしれませんが、これまでネルケチャイナが上海で上演した2.5次元舞台、セーラームーン、黒執事、フェアリーテール、テニミュ、NARUTOの中で公演前にチケットが完売したのは刀剣乱舞が初めてだと思います。

中国で絶大な知名度を誇るナルト舞台の上海公演ですら、前売完売には至りませんでした。
もっとも、舞台「ナルト」は10月から12月にかけて中国6都市37公演という非常に規模の大きいツアーで、刀ミュ上海公演とはキャパシティが全然違います。

「NARUTO-ナルト-」上海公演の10月29日(土)昼公演を観ましたが、客入りは8~9割でした。
観客の反応は非常に良かったです。客層は20代から30代前半が多く、カップルや小中学生の子どもと一緒に来ている人も多かったです。
中国の観客は「客席降り」に慣れていないので、客席降りや劇中に観客とコミュニケーションを取る演出があるとものすごく喜びます。
キャラクターそのもののビジュアル、丁寧な役柄の解釈、プロジェクションマッピングや空間を最大限に活用した舞台設計の巧みさは中国の観客にも深く響いたようで、終演後のお客さんは皆舞台に満足して語らっていました。

■ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」上海公演 10月22日~30日 計12公演 芸海劇院 







来年、刀剣乱舞の後はどのタイトルを中国で上演するのでしょう。「ハイキュー!!」(ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」ハイパーステージ)でしょうか・・・?

最近、日本の演劇や日本人アーティストが上海公演を行うケースがまた増えてきていますが、上海というエリアはどういう意味を持っているのだろうと時々考えます。
「中国人は日本に行きたくても行くことができない」という時代は過去のものになりました。
もちろん、飛行機に乗って国境を越えなければならないので、いつでも自由に行けるわけでは決してありませんが、訪日ビザの大幅な緩和、中国都市部の経済力向上により、中国人にとって日本に行くことは格段にハードルが下がっています。

またフライト時間だけで比較すると、上海⇔北京間と上海⇔大阪間のフライト時間はほぼ同じです。
つまり、地理的にみて近いと感じるのです。

刀剣乱舞ミュージカルの上海公演のチケットを購入した子の話を聞くと、かなり頻繁に日本に好きな舞台やコンサートなどを観るために渡航しているようです。
彼女たちはチケットの手配と時間の都合さえつけば、日本に飛ぶことが常に選択肢に入っています。

恐らくどんな公演でも、「東京公演」と「上海公演」の観客には一定の重なり合いがあります。
その重なりの程度が高くなると、上海は外国というよりも、福岡よりも更に西にある同じアジア地区の一つの都市という位置づけになり、地方公演の延長のような感覚になっていくのかもしれません。

なお、10月27日からブラウザ版の「刀剣乱舞」中国語版がテストオープンしました。
スマホ版(アンドロイド)は11月14日からテストオープンです。中国版はブラウザ版とスマホ版でデータを互換できるそうです。

刀剣乱舞 ONLINE 中国ブラウザ版  発行会社:上海遊族信息技術有限公司
http://touken.youzu.com/cbt

刀剣乱舞 ONLINE 公式Weibo より
http://weibo.com/touken

タイの大ヒットティーンドラマ「ホルモンズ」~中国で「Dao×Koi 百合CPファンミ」開催

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中国でドラマ俳優のファンミーティングが開かれるのは珍しいことではありませんが、今年の6月、ちょっと変わったファンミーティングがありました。
タイドラマ「ホルモンズ」出演者の中国ファンミーティングです。

タイドラマ「ホルモンズ」は2013年5月に放送開始し、TVシリーズはシーズン3まで制作され、映画版も作られました。

「ホルモンズ」はタイで大ヒットしたものすごく有名なドラマです。

ホルモンズ(HORMONES) Season1 2013年5月~GTH ON AIR(現GMM ONE)などで放送。全13話
ホルモンズ Season2 2014年7月~全13話
  

「ホルモンズ」はバンコクの裕福な家庭の子女が通う高校を舞台にしたティーンドラマです。
実際にドラマ撮影時、多くの出演者がまだ10代でした。明らかに発展途上のルックスと演技なのですが、高校生の恋愛、いじめ、セックス、暴力、スクールカースト、同性愛、親子の確執などが大胆に描かれるドラマです。
テンポが速く、様々な人間関係が同時進行し、飽きさせません。また、シビアな内容を描きながらも、富裕層の家庭の子どもたちしか登場せず、おしゃれな設計の豪邸に住み、母親が運転する高級車で通学し、自室は趣味の道具で飾られているファッショナブルなドラマです。
教室内での暴力、子ども同士のセックス、喫煙など過激な描写は多いのですが、出演者が非常に透明感のあるビジュアルなので、バンコクの強い日差しの輝きのせいもあり、爽やかな作風が貫かれています。



このドラマをきっかけにたくさんの人気若手スターが生まれました。

成長中の10代の少年少女をキャスティングしているので、実際に成長している姿をテレビを通じて見ることができます。
特にシーズン1は、女の子は化粧っ気もなく、ストレートの黒髪を後で束ねた真っ白な肌の子ばかりで、最初は平凡に見えても、見ているうちにどんどんかわいく見えてきます。
ただ、つくづくタイのドラマや映画は韓国芸能の影響を受けているなと感じます。
特に女優はソンヘギョの影響が強く、ソンヘギョを連想させる仕草や表情が随所にみられます。



メインキャストの学生たちだけでも、男6人+女6人とキャラが多く、友情、恋愛、憧れ、嫉妬など様々な人間関係が交錯します。
恋愛関係も、男女のNLから、BL、GL(百合)と多種多様です。

数多いキャストの中で、中国で特に人気が高かったのは、シーズン2から出番が増えたDaoとKoiです。
DaoとKoiは同じクラスで、仲良しグループのメンバーなのですが、徐々に二人だけが親密になっていき、同性愛的な関係に発展していきます。



その百合カップルが中国ファンの間で大人気になり、カップリングファンミーティングが開かれました。

中国杭州 タイドラマホルモンズ 「タイで最も人気の百合カップルDao×Koi」~Fon&Belle ファンミーティング 日時:2016年6月19日


これは、Fon&Belleの私設中国ファンクラブが企画したものでしたが、だんだん規模が大きくなって主催会社もつき、400人以上のファンが集まったと報道されています。

6月11日には、上海映画祭の時期に合わせて「ホルモンズ」でPhai役を演じた俳優Torのファンミーティングも行われました。

Torのファンミーティングはタイ王国在上海総領事館で開かれました。

ふつう領事館で若手イケメン俳優のファンミやるか・・・?と思いますが、タイならありえます。

Tor Thanapob(通称Tor)1994年2月14日 身長185cm 現在大学に在学しながら俳優活動を行う。
出演作:「ホルモンズ」シリーズ(Phai役)、映画「May Who」(電撃少女)など。



ホルモンズ出演者の中で一番売れたのがこのTorなのでは。ドラマの中では坊主頭がトレードマークでした。
劇中では、大人びた少女とのベッドシーンもありました。相手は早熟な美少女ですが、誰が見てもおいおいと言いたくなるようなビッチの設定です。Torはそんな彼女に純粋な思いを寄せる不良グループに属する少年役を好演しました。
Kazz Awards 2014 最優秀新人俳優賞「ホルモンズ」出演をきっかけに数々の賞を受賞しました。



中国メーカーOPPO携帯のタイ広告。OPPOは中国国内でのシェアはそれほど高くありませんが、カメラ・音楽などの機能には定評がありタイ市場に力を入れています。 



映画「May Who」(電撃少女) 2016年上海映画祭上映作品。
主演の女の子 punpun sutatta(通称Punpun)も「ホルモンズ」出身です。
「ホルモンズ」では、思いやりがあり母性的な魅力で男子から思いを寄せられるToei役を演じ、一躍人気女優になりました。


「ホルモンズ」は本当に面白いし、タイでものすごい人気だったドラマです。

タイは東南アジア最大のエンタメ発源地で、イケメン俳優がいっぱいいます。
中国には、少なからぬ「タイ芸能ファン」が存在します。タイのイケメンスターの多くは欧米系の血が入っているか、色白のいわゆる中華系タイ人です。
タイの俳優は馴染みやすく、また、BL描写が多いのもタイドラマの特徴の一つです。
普通のドラマの中に普通に男同士のカップルが出てくるので、BLドラマファンとタイドラマファンはかなりかぶっているといえます。

ワンオク初の中国ライブ「ONE OK ROCK 2016 Live in 上海」~ワンオーケーロック in 上海

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ワンオク初の中国ライブ「ONE OK ROCK 2016 Live in 上海」に行ってきました。
日時:2016年11月22日(火)20時開演 5分くらい遅れて開演し、21:40に終了
会場:メルセデスベンツアリーナ (旧上海万博ホール)
チケット価格: アリーナ 1280元(約19200円)、980元(約14700円) スタンド 880元(13200円)、680元(10200円)、480元(7200円)

【上海メルセデスベンツアリーナ】


【座席表】


【現地グッズ販売】パーカーとタオルが売れていました。


アリーナ席が完売で、880元エリアの後方列に空席が見えました。スタンド上階の480元エリアは8割方埋まっていたと思います。
火曜日という平日であったことを考えると、集客状況は良好といえます。

客層は20代、30代の男女で、男性と女性が半々くらいだったと思います。アリーナ席の前方は男性ファンが目立ちました。
恐らくほとんどの観客が社会人で、オフィシャルTシャツやグッズで身を包んでいる人は少なく、「きるだけ黒っぽい服を着とこう」というかんじファッションが多かったです。
中国公演は上海だけなので、上海近辺からだけではなく、北京や広州から飛行機を使ってやってきたファンも多かったようです。

35XXXV から始まり、Take me to the top、Memories、Cry Out、Decision、Suddenlyなどアルバム『35xxxv』の曲を中心とし、新曲Taking Offもやりました。
「ラスト2曲」とTAKAが宣言した後に、The Beginningと Mighty Long Fall。
その後アンコールをはさんで、Wherever you are、No scared、完全感覚ドリーマーで終演。公演時間は約1時間30分で、計18曲を歌ったと思います。

海外公演なので、TAKAはステージ上で自分たちのことを、「We are ワンオーケーロック」と言っていました。

MCは基本的に英語で、中国語を二言、三言披露しましたが、日本語は僅かしか話しませんでした。
観客は英語が聞き取れないわけではありませんが、TAKAが「謝謝」(シェシェ)と言っただけで、中国ファンは沸き上がっていました。
周りの反応を見る限り、中国ファンにとってはTAKAの片言の中国語は萌えポイントだった模様・・・。

基本的に英語曲で、「Decision」、「Mighty Long Fall」も英語バージョン(Deluxe Edition)でしたが、「Heartache」は観客と一緒にサビ部分を日本語で歌いました。
「Heartache」はイントロでTAKAが「もし日本語が分かれば歌ってください」と英語で言い、サビのところで客席にマイクを向けます。
観客がスマホをライトONにして降りながら、日本語のサビ部分を歌うと、TAKAが、

「Oh my god, perfect!」

と言ったのでした。



正直なところ、中国の若い人たちも皆が英語が得意なわけではないし、ワンオクは日本のバンドと認識されているので、中国ファンにとっては英語よりむしろ日本語の方が馴染みがあるんじゃないかと思いましたが、ワンオク側に「英語でやる」という強いコンセプトが感じられます。
上海を「中国市場への足がかり」ではなく、グローバルの中の一つの都市と捉えているようで、新鮮に感じました。

TAKAはライブの最後に「お前たちに約束する。またすぐに会えることを」(I promise you guys, see you soon) と言っていました。アジアツアーでまた上海に来るとーー。

アンコールのとき、定番のアンサイズニアの掛け声「オーオーオーオーオオー」を中国ファンもやっていました。基本的には日本の作法を真似ようとしています。
ファンが作った横断幕をアリーナの観客が渡すという中華圏ならではの交流もありました。最後はメンバーが2つの横断幕それを体に巻きつけていました。

ライブが終わった後の帰り道で、一緒に観にいった上海人の友達が「外人のお客さんを見かけなかったね」と言いました。
私は「外人」は日本人のことを指していると思ったので、
「平日だから日本から上海まで来るのは難しいと思うよ。現地の留学生にとってはチケット代が高いだろうし。」
と答えたら、友達は日本人のことを指しているのではなく、欧米人のことだと言いました。

友達によると、先月上海のライブハウスにMONOが来たので観にいったけれど、欧米人がたくさん観に来ていたというのです。
MONOは結成当初よりグローバルに活動している日本のポストロックバンドです。
意外でした。
上海で日本のバンドがライブをやって欧米人が聴きに来る・・・
そういうケースを考えたことがなかったのです。

「日本カルチャーが好きな層」は世界中に存在し、地理的・文化的に近い中国、韓国、香港台湾には「日本カルチャーファン」が特に多く存在します。
アジアでの公演を積極的に行っている声優、アニソン、アイドル、宝塚などは、日本と同じことをアジア公演で行い、ファンも日本と同じもの、より「原版」に近いものを観れることを望んできました。
そして、アジア圏のファンも、日本のファンの応援作法やファッションを真似してきました。そうすることでファンとしての気持ちを表現していたのです。

ワンオクの海外展開が「日本カルチャーが好きな一部の層」をターゲットとしているのではないことが、上海ライブから明確に伝わってきました。
音楽面だけではなく、日本でできあがった枠を離れて、海外のファンとどういう関係を築いていけるのか、どうやって意思を通わせるのか。開催宣告されたアジアツアーとともに楽しみにしています。





~セットリスト~
1.35XXXV
2.Take Me to the Top
3.Memory
4.Deeper Deeper
5.Clock Strikes
6.Last dance
7.The way back
8.Cry out
9.Taking Off
10.Decision(Deluxe Edition)
12.Suddenly
13.Heartache 日本語
~MC「あと2曲」~
14.The Beginning
15.Mighty Long fall(Deluxe Edition)
~アンコール~
16.Wherever you are
17.No Scared
18.完全感覚ドリーマー

セカイノオワリ 初の単独上海ライブ~音楽が国境を越える

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SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ)「ZAI LIVE - Live in 上海」に行ってきました。
日時:2016年11月24日(木)開演20時 場所:上海雲峰劇院


セカイノオワリ初の中国単独ライブです。

会場の雲峰劇院は不思議な空間にある劇場でした。

洋館風の古い集合住宅とローカル飲食店が混じる通り沿いに、小さな入り口があります。その入り口を曲がって真っ直ぐ進むと、奥の方に劇場が現れます。



雲峰劇院は数年前まで上海雑技の上演場所として使われていました。劇場前の大きな駐車場は、観光バスを停めるためのスペースだったのだと思います。いまはここでは雑技はやっておらず、ミュージカルや演劇が上演されています。

この会場はセカオワの今日のライブのために作ったのかと思いました。
きらびやかだけど、どこか古びていて温かみのある小さな遊園地かサーカスのような会場で、セカイノオワリにぴったりです。

  







座席数は1階と2階合わせて1400席くらいだと思います。満席でした。

20時にライブは始まりました。中国のコンサートはあまり観客が立たないのですが、1曲目が始まった瞬間に観客全員が立ち上がりました。

~~セットリスト 11月24日 セカイノオワリ 上海ライブ~~
1. スターライトパレード
2.Love the warz
3.曲名分からないです(英語歌詞の曲)
4.ファンタジー(多分)
5.Death Disco
6.SOS(英語)
7.Holiday
8.ANTI-HERO(英)
9.ピエロ 
10.Mr.Heartache
11.深い森(英)
12.幻の命
13.MAGIC
14.RPG
15.Dragon Night(日本語版)
~アンコール~ 観客が「スターライトパレード」のサビ部分を歌う
16.炎と森のカーニバル
17.インスタントラジオ

観客の8割が20代から30代の女性で、男性客は2割くらいでした。ただ、最前列から5列目くらいまでに男性客が多く、男性ファンからの掛け声も目立ったので存在感がありました。

お客さんの日本語能力が異様に高かったです。

「SOS」の後のMCで、サオリが中国語で「こんばんは!皆さん楽しんでますか?上海に来ることができてとても嬉しいです。」と言いました。
その後、同じ内容を英語でも言いました。
客席からはサオリの二ヶ国語挨拶に「おお~~!!」と拍手が起きました。

英語を言い終わった後、サオリがはーっと息をついて、「日本語でいいですか?」と言うと、客席から大きな声で

「いいよーーー!!」

と日本語で答えが返ってきたので、サオリ「やっと日本語しゃべれるーーー」と、そこから日本語MCになりました。

ライブ会場の「雲峰劇院」は静安寺という上海の繁華街の近くにあります。静安寺は有名な「南京路」(南京西路)に面しています。

上海ライブがあったのは11月24日ですが、セカオワのメンバーは前日に上海に入ったそうです。

サオリのMCによると、ライブ当日の午前中は時間があったので、ホテルから近い南京西路のあたりを散歩したそうです。フカセと一緒に。

「午前中時間があったんで、近くを歩いてみました。フカセと。」

とサオリが言った瞬間に、客席から「きゃあ~~」という、何とも幸せそうな歓声が上がりました。

「歩いてみると、伊勢丹があったよね。その近くに屋台のお店があって美味しそうだったけど、元を持ってなかったので屋台で買物することができなくて残念だった。あとユニクロもあった。」ということをサオリとフカセが話しました。

この話を聞けば、上海に住んでいる人間であれば誰でも2人がどの道を歩いたのか大体分かります。2人が上海の街を歩く姿がふわっと頭の中に浮かびました。

「元を持っていなかった」という流れから、「元」のことを中国語で何というのか。という話になりました。

「元」は中国の通貨単位ですが、「yuan」=ユエンです。

フカセとサオリは「元」(ユエン)が上手く発音できなくて、客席の一列目にいた観客にマイクを向けて、お手本に「ユエン」を発音してもらいました。

それから他のメンバーも会話に入り、ライブ前日の夜、皆でご飯を食べた話になりました。中華料理と上海ガニを食べたようです。

「サオリちゃんが気に入ってたお酒があるじゃん。」

とフカセが言いました。

そのお酒というのは、白酒(パイチュウ)といって、アルコール度数が50度近くある透明な蒸留酒です。日本にはないお酒です。

「初めて飲んだ。すっごく強かったけど美味しかった」

とサオリが言いました。

かなりお酒に強そうです。

「Nakajinは顔が真っ赤になってたね---もう一回飲みたいね---今日も飲む---?」

「後で俺の部屋で飲もうか?」とフカセが言ったところで、サオリが「次の曲はホリデー」。

中国ファンにとっては、セカオワのメンバーの関係性に憧れがあります。メンバー同士仲良さそうなところを生で見ることができて、満足感が急激にアップしました。

「ピエロ」では、サオリがキーボードを離れてアコーディオンを抱えてステージ前方まで出てきます。

そこでサオリとフカセが接近して、フカセがサオリの頭をポンポンと叩くシーンがあり、観客が大喜びでした。客がガッツポーズしそうな勢いでした。

上海ライブの会場は小さくステージも狭いので、メンバーが常にアイコンタクト可能な距離にいます。

ある曲ではイントロで一心に鍵盤を奏でるサオリの真正面にフカセが立って、じっと見つめていたり・・・・なんか・・・すごいな・・・と思いました。

メンバー同士の関係性をステージパフォーマンスの中で表現することは、バンドには時々みられるものです。

バンドコンセプトに合わせてメンバーの関係性にも設定とシナリオがあり、ステージ上ではその設定を徹底して貫くというものです。特にビジュアル系バンドではそういう演出は珍しくないと思います。

フカセとサオリの関係はシナリオがあるわけではなく、素に見えるけれど、ある程度意識的に振る舞っているようにも見えるし・・・絶妙のあやうさがあり、トキメキをかきたてる魅力の一つになっています。

アンコールのとき、客席が「スターライトパレード」のサビ部分を、メンバーが出てくるまで繰り返し合唱しました。もちろん日本語で。

再びステージに出てきたサオリが、

「日本人かと思った・・・」

と言いました。「外国だけど、ホーム感がすごい」と。

サオリが「どうして皆そんなに日本語が上手いの?日本語と中国語の発音が似てる・・とか・・・??」

と言うと、すかさずフカセがサオリの推測を否定するように、

「いや、お前さっき「元」(ユエン)の発音できなかったじゃん。」

と突っ込んでました。フカセの突っ込みのとおり、中国語と日本語の発音は近くはないです。

「中国語を一番勉強しているのは、Loveさんだよね」とフカセが言いました。

DJ Loveは家で中国語のオンラインレッスンを受けているそうです。

ステージと客席の距離が近く、海外なのに、海外だからこそ?終始アットホームな雰囲気でした。手を伸ばせば届きそうなほどの一体感です。

Nakajinが「一曲目のスターライトパレードのとき、皆がスマホのライトで照らしてくれたのがすごくきれいでした。」

「上海に来るのは2ヶ月ぶりだけど、来るたびに上海が好きになる。」

「音楽が国境を越えたことに感動している」とフカセが語りました。

結局、ほとんどが日本語歌詞の曲で、MCもほぼ日本語でした。
中国人と日本人の間で、母語と同じレベルで気持ちが伝わる英語のフレーズは、いまのところ「I love you」と「Thank you」くらいなのかもしれません。

公演時間は1時間40分、時間的には長くありませんでしたが、ファンが見たいものが全部見れたライブだったと思います。

とてもいいライブでした。

会場が良かったです。音響、照明のクオリティも申し分なくセカオワはいいバンドでした。メンバー4人とも、とてもかっこよかったです。

  

【おまけ】
  

12月10日(土)は「TK from 凛として時雨」、年明け1月14日(土)には「アルスマグナ」が上海に来ます。
もし活動休止になっていなければ、ゲスの極み乙女。も上海に来たんじゃないかと思ってしまいます。
来年三代目JSBが上海に来ると言われても驚きません。
三代目はさすがに来ないと思いますが、GENERATIONS(from EXILE TRIBE)あたり来年アジア公演やることになったりして・・・。

「君の名は。」12月2日中国全土で劇場公開~~前売好調でヒットの予兆 「ズートピア」を超えれば・・・・

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12月2日に「君の名は。」が中国全国の映画館で公開されます。
中国語タイトルは直訳で「你的名字。」です。
  

「君の名は。」は日本公開直度から中国でも注目されていました。その理由は、

1.日本で大ヒットを記録しており話題性がある
2.新海誠の人気が中国で高い

の2つが大きいです。

もう一つ挙げるとすれば、日本での興行収入が歴代上位を占めるジブリ作品に食い込みつつあるということでしょうか。
ジブリ作品と宮崎駿監督の知名度は中国でも非常に高いです。

宮崎駿監督ほどではありませんが、新海誠監督の人気と知名度も高いです。

日本では「君の名は。」がヒットするまで、新海誠監督の名前はそれほど有名とはいえませんでしたが、中華圏では「秒速5センチメートル」の知名度が異様に高く、新海作品は作画、音楽、ストーリーの緻密さと美しさで高い支持を得ています。新海誠の名前を知らなくても、「秒速5センチメートルの監督」といえば、ピンとくる人が相当います。

中国では、初日の日付が変わる23:59または0:00の「初日午前0時上映」が流行っています。2013年頃から流行り始めています。

「君の名は。」は中国全土で公開されますが、上海だけで16の映画館で「初日午前0時上映」を行います。

つまり、上海市内だけでも、16もの映画館で12月2日の午前0時に「君の名は。」が上映されるわけです。
12月2日の0時というのは「木曜日の夜」であって週末ではありません。
この初回上演のチケットがかなり売れています。

映画チケット予約サイト「Gewara」(http://www.gewara.com/shanghai)の予約画面 11月30日午前1時頃のスクリーンショット

UME新天地影城 2号スクリーン 12月1日23:59の回  「新天地」は市内中心地にあるレストラン・バーエリアで観光地としても有名です。
なお、シネコンなので2号スクリーン満席を受け、スクリーンが追加されています。



海上影城環球港店 7号スクリーン 12月1日23:59の回 新しいショッピングモール「環球港」の中のシネコン。近くに大学・学生寮があります。



12月2日は、上海だけで174の映画館で上映が予定されています。中国全国でいうと、何千ものスクリーンで上映されることになります。

いつの間にこんなに映画館が増えたんだ・・・と思います。

まさに、映画館が激増したからこそ、日本映画が上映されるチャンスも訪れたといえます。
中国のスクリーンで上映するためには、政府の審査認可が必要です。1年間に上映できる外国映画の本数が決められており、これまではその多くがアメリカ映画に割当てられていました。それが、今年あたりから緩和され、日本映画が進出するチャンスが広がり「君の名は。」も上映に至ったのです。
「君の名は。」の公開が去年だったら、中国では劇場公開されていなかったかもしれません。

12月2日~4日の最初の週末が興行的には勝負になるわけですが、12月2日(金)の18時以降のチケットがよく売れています。
都市部の若手社会人がメインターゲットと推察されます。

虹橋芸術センター 4号スクリーン 12月2日18:55の回  地下鉄二号線の地下鉄駅からすぐそばの映画館。



SFC上海美羅店 2号スクリーン 12月2日19:35の回 繁華街・徐家匯のショッピングモールの中にあるシネコン。



中国では「君の名は。」の本編映像が流出してしまい、ネット上には比較的早い時期に海賊版が上がってしまっていました。
それにもかかわらず、映画館での正規上映に多くの人が足を運びそうです。
11月30日付のニュースで、「上映3日前の時点で中国での「君の名は。」の前売販売額は1000万元(1.6億円)を超えた」と報道されています。

「君の名は。」の日本興行収入は194億を突破し、まだ伸びる見込みです。
中国ではどのくらいの興行収入を上げられるでしょうか?
194億円は人民元に換算すると約12億元に相当します。興行収入12億人民元を超える作品は毎年何本か出ます。

今年3月に公開されたディズニー3D映画「ズートピア」の興行収入は、公開から45日で15.3億人民元を超えたと報道されています。
もし「君の名は。」が中国で「ズートピア」と超えるヒットとなれば、中国興行収入が日本の興行収入を上回る可能性が出てきます。
中国市場で日本アニメがディズニー映画を超えることは、考えにくいことではありますが、どこまで迫ることができるか注目されます。

「君の名は。」には新宿の都会的な風景、飛騨の自然、田舎の日本家屋、神社など、外国人を魅きつける日本的な要素がたくさん描かれています。
しかし、反対に、日本に対して何の興味もなく、何の知識もない外国人が見たら、あまり心に響かないかもしれません。
「君の名は。」の中国での反響を通じて、中国人が日本に対しどのような関心とイメージ、知識をもっているかが見えてくるかもしれません。

「TK from 凛として時雨」 上海ライブに行ってきました~TKと中国の接点~

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「TK from 凛として時雨」の上海ライブに行ってきました。3ピースバンド「凛として時雨」のボーカル・ギター担当TK(北嶋徹)のソロライブです。

2016年12月10日(土)19:30~ 終演は21:15頃、公演時間は約1時間半
場所:上海唱吧加空間 (plus+space 加空間)
チケット:880元(約14000円)、580元(約9000円)


会場は、上海万博跡地に建設されたイベント施設です。上海万博から6年が経ちますが、このエリアはまだ開発があまり進んでいません。
最寄の地下鉄駅から10分以上歩く位置にあり、普段はまず行く機会のないエリアです。

 

「plus+space 加空間」はライブハウスとして使用するには横幅がかなりあり、完全イス形式で1000人くらい収容していたのではと思います。
私が座ったのは真ん中よりも少し後の真正面の席でした。
世の中に流通しているTKのキービジュアルのバリエーションは少なく、Webで紹介されるときはアルバム「Fantastic Magic」のジャケット写真がよく使われています。



TKはかっこいいのだろうか・・・?

せっかくライブで生で見れるチャンスだからじっくり見てやろうと思って、ひたすら顔を見ていたのですが、TKさんがどういう顔立ちなのか最後までよく分かりませんでした。
距離的には肉眼で見える範囲のはずなのですが、照明が薄暗かったり、うつむき気味だったり、前髪に顔が隠れていたりして、シルエットはクリアだけれど、顔がよく分からないのです。だけど、

顔はよくみえないけど、ものすごくかっこいい・・・!

と思いました。全体のシルエットとギターを演奏する仕草がすごくかっこいいのです。不思議な色気があります。

TKは「凛として時雨」のボーカル・ギターですが、曲はすべてTKが作詞・作曲を担っています。
TKの歌詞は中二病っぽいと言われたりします。
鮮烈なイメージのドラマチックな言葉が歌詞の中にちりばめられているのですが、落ち着いて歌詞を読み返してみると、ちょっと意味がよく分からないな、という部分が確かにあります。そういうところが「中二病的」と言われるようです。
そして、CD音源を聴いていると、特徴的なハイトーンボイスはエキセントリックで個性が強そうなイメージを与えます。

しかし、ライブで見ると、あまりにも演奏が上手くて、中二病とか思う余地がまったくありません。
演奏が緻密で理系っぽい雰囲気です。
歌声はハイトーンですが、話すときはごく一般的な男性の低くて落ち着いた声でした。
一曲歌い終わるごとに、控えめに「謝謝」と囁きます。

MCらしいMCはなく、「謝謝」と簡単な中国語での会話のみだったのですが、TKが与える第一の印象は、「誠実そうな好青年」でした。
この音楽性で、すごい好青年・・・!!このギャップに驚愕です。

「TK from 凛として時雨」の曲はどれも、ギター、ベース、ドラムにピアノとストリングスが巧みに絡む複雑で美しいアレンジです。
これは、完全にデジタル加工されたサウンドなのだと思っていました。
編集技術を使って加工しなければこんなアレンジ効果は出せないと思っていたのですが、大きな間違いでした。
ライブで完全に再現しています。再現というか、ライブの方がCD音源よりも遥かに音のクオリティが高いです。
TKはライブで音を外したり、高音がかすれたりすることはまずありません。CDとまったく同じ息遣いをすることすらあります。

TKのライブに行けるチャンスはそう簡単にはめぐってこないと思います。
私は普段安いイヤホンを使って音楽を聴いています。1200円くらいで買ったものだと思います。
それで不自由を感じたことはありませんでした。でも、TKのライブに行ってから、生まれて初めて高級ヘッドホンが欲しくなりました。
高級ヘッドホンでCDを聴いたら、ライブで聴いた鮮明で感覚に突き刺すような音を少しでも感じることができるかもしれないと思ったからです。





~~「TK from 凛として時雨」と中国(と私)の接点~~

2012年10月  アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」が中国動画サイトLeTV(楽視網)で正規版独占配信され大人気に。

主題歌に「abnormalize」が起用され、中国アニメファンにも「凛として時雨」の存在が知られるようになる。

2014年7月 アニメ「東京喰種トーキョーグール」が中国動画サイトiQIYI(愛奇芸)などで配信。

「トーキョーグール」は中国でちょっとした社会現象といえるほど流行りました。
作品単位で再生回数は億単位に上り、「進撃の巨人」に続くヒットアニメとなる。
「TK from 凛として時雨」として提供した主題歌「unravel」は上海のカラオケチェーンで日本語曲リクエストランキング上位の常連に。
「unravel」の出だしの「おしえてよ おしえてよ この仕組みを」の「おしえてよ」の部分の発音が中国語で「我洗海带哟洗海带哟」(私は昆布を洗うよ昆布を洗うよ)に聞こえるため、空耳ネタとしても人気に。

2015年4月 中国当局による日本アニメ配信禁止令(ブラックリスト通達)発生。

「進撃の巨人」「トーキョーグール」「寄生獣」など“血腥い表現”を含む多数の人気アニメが一斉に配信停止に。ブラックリスト入りした作品の多くは現在も配信されていない。
TKが主題歌を提供した「PSYCHO-PASS サイコパス」と「トーキョーグール」もブラックリスト入りする。
ブラックリスト事件が起きたのは、「トーキョーグール」の第2季の放送がちょうど終了した頃で、当時圧倒的な人気を誇っていた「トーキョーグール」は配信禁止作の代表のように扱われた。

「PSYCHO-PASS サイコパス」は後にLeTV(楽視網)で配信再開した。

2016年7月 新番アニメ「91Day」のOPにTK form凛として時雨の「signal」が起用される。
「91Days」は中国動画サイトPPTVで独占配信。第1話はOPがなかったので、第2話にはTKのOPを心待ちにしていたファンからの弾幕が溢れる。



2016年11月17日12:10~ チケットサイト大麦(damai)で「TK from 凛として時雨 in 上海」のライブチケット発売開始。

2016年12月10日 19:30~ 初上海ライブ開催。

日本アニメ・ドラマ配信に力を入れる中国動画サイトPPTV~三強にどこまで迫れるか

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かつて海賊版の宝庫だった中国動画サイトは、2011年頃から徐々に法制化が進み、映画、ドラマ、バラエティ、コンサート中継、アニメなどを正規配信するプラットフォームになっています。
Youtubeだけでなく、Netflix、huluなどの欧米系の動画サイトは、法律上の規制で中国市場に参入することができません。
そのため中国の大手動画サイトYouku、iQIYI、テンセント動画などは、「中国版Netflixと中国版Youtubeの融合体」のような存在になっています。

中国の動画サイトユーザー規模は、5億ユーザー程度と言われており、実際、人気のある中国ドラマは1話あたりの配信回数が億を超えます。
「大ヒット」と呼ばれるためには、億単位の再生回数を記録しなければなりません。
これは動画サイトとテレビの融合が進んだ結果ともいえます。

現在、中国の動画サイトはYouku(優酷)、iQIYI(愛奇芸)、テンセント(騰訊)動画が三強といわれています。

この3サイトはそれぞれIT大手の資本的背景を有します。

iQIYI:検索エンジン百度(Baidu)の傘下。
Youku:2016年に正式にアリババ(Alibaba)傘下に入る ※Youkuと合併したTudouはYoukuへの統合吸収が加速しています。
テンセント動画:QQ、Wechat、ゲーム配信会社として強い影響力を有するテンセント(Tencent)の動画サイト。

上記の三巨頭の頭文字をとって「BAT」と呼ばれます。

この「BAT」に迫る第二グループに属する動画サイトの一つが「PPTV」です。
PPTV聚力 http://www.pptv.com/

PPTVは上海を拠点とする古くからある動画サイトの一つですが、2013年に中国家電大手の蘇寧(SUNING)が資本参加したことが一つの転機となっています。
蘇寧(SUNING)は2009年にLaoxを買収した会社です。

PPTVは古くから存在しているとはいえ、Youku、iQIYI、テンセント、Letv(楽視網)に比べると存在感が薄かったです。
ところが、2015年あたりから配信コンテンツが徐々に充実し、特に日本アニメのラインナップが充実しています。目利きが版権購入しているような印象を与えます。
第二勢力の中では、Letv(楽視網)よりもPPTVの方が勢いを感じます(Letvはハード機器の販売が占める比率が高いので、単純に比較することはできませんが)。

本格的に目を引くようになったのは、2016年4月新番アニメ「文豪ストレイドッグス」の独占配信権を獲得したことです。


「文豪ストレイドッグス」は中国アニメファンの間で期待度が高く、他サイトでも配信意向が高かったであろう作品が、なぜPPTVでしかも独占配信できたのか!?と驚かれました。
その後も「91days」「ドリフターズ」「ALL OUT」などを独占配信しています。
クールによっては、新番配信のラインナップが、bilibili動画よりもPPTVの方が充実しているときがあります。

PPTVは正規版と非正規版(海賊版)が混在しており批判されるところもありますが、全体としては正規版化に向けてシフトしています。

PPTVで配信中の日本アニメ


PPTVは2016年後半から、日本ドラマの配信にも力を入れています。
「ダメな私に恋してください」「下町ロケット」などTBS系ドラマを配信しています。

下町ロケット 2016年11月頃からPPTVで配信。毎週火曜日、水曜日に一話ずつ更新。(中国語タイトル:下町火箭)




「ダメな私に恋してください」2016年10月頃から配信PPTVで配信。毎週火曜日、水曜日に一話ずつ更新。(中国語タイトル:請和廃柴的我談恋愛)


中国動画サイトで海外ドラマを正規配信するためには、全話分が出来上がった後に中国当局の審査を受けなければならないので、日本と同時配信することはできません(日本ではドラマの制作と放送が同時進行するため)。
そのため、日本での放送よりも数ヶ月遅れての配信になるので、「ダメな私に恋してください」や「下町ロケット」のPPTV配信については、予期していたほどの反響は得られなかったかもしれません。

「ダメな私に恋してください」は2016年の1月クールのドラマなので、日本放送中に中国語字幕付きの海賊版がかなり出回ってしまっていました。
人気があった分、すでに字幕付き海賊版を見てしまったという人が多かったのではないでしょうか。2016年の秋になって「正規版」が配信されても新鮮味が薄れていました。
「半沢直樹」は中国でも(海賊版が)大ヒットしたのですが、「下町ロケット」の面白さは少し伝わりにくかったかもしれません。

逆に、日本では難しいとされる恋愛ものが中国ではウケるような気がします。
例えば、月9の「好きな人がいること」や「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」といった20代の男女を主人公とする恋愛ドラマは、中国でやっていたらかなりの人気を集めるのではと思います。

2016年10月クールのヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」もPPTVで正規版配信されるのではと期待しています。
いま当局の審査を受けているとすると、3月頃には配信されるのではないでしょうか。
「逃げるは恥だが役に立つ」は海賊版動画が比較的厳しく取り締まられているので、もしPPTV又は他の動画サイトで早期に正規版が配信されれば、日本新作ドラマの中国における本当の関心度を表すことができるのでは。

中国にも日本ドラマファンは確実に存在するので、少し時間がかかっても「PPTVでは日本ドラマが見れる」という認識が根付けば、日本ドラマや映画の中国配信がより活性化するのではと思います。

中国大ヒットスマホゲーム「陰陽師」~中国製の3D和風RPG~

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いま中国では「陰陽師」というスマホゲームがものすごく流行っています。
2016年9月にリリースされてから、「僅か45日で1日あたりのアクティブユーザー1000万突破」と公式が宣言しています。
そんな数字に頼らなくても、WeChat(微信)やWeibo(微博)などのSNSでは「陰陽師」の情報で溢れかえっているし、上海市内のバスや地下鉄に乗れば、周りにいる乗客の何人かは「陰陽師」をプレイしており、「流行っている」ということがいやでも分かる状況です。

「陰陽師」は中国のIT大手網易(NetEase)傘下の「網易移動遊戯」(網易モバイルゲームス)が開発・運営するゲームです。
和風3DソーシャルRPGということで、中国製ゲームですが平安時代を舞台として、安倍晴明、源博雅などが妖怪や呪縛霊たちと戦う和風ゲームです。

網易 NetEase(ネットイーズ)「陰陽師」公式サイト
http://yys.163.com/



ストーリー:
陰陽師である安倍晴明とその仲間たちが、召喚される式神を操り、妖怪たちと戦いながら失った記憶の手がかりを求めて旅を続けていくというゲームです。
主人公の晴明をはじめ、キャラが何らかの記憶を失っており、なぜ自分がここにいるのか分からない、なぜこのような戦いの世界になっているのか、謎を抱えた状態で始まります。
敵の妖怪たちは、怨念に縛られて動けなかったり、永遠の時を生きることに苦しんでいたり、大切な誰かのことを思い出せないなど、それぞれの謎と秘められた物語が織り込まれており、ゲームを進めていくうちに謎が少しずつ明らかになるという面白さもあります。

CVはすべて日本人声優が起用されています。
メインキャラだけでも、安倍清明:杉山紀彰、神楽:釘宮理恵、八百比丘尼:沢城みゆき、源博雅:鈴木達央と豪華で、
さらに大量に登場する式神、妖怪にも有名声優がこれでもかというほど起用されています。
中国製のゲームに日本人の声優が起用されるのは珍しいことではありませんが、ここまで大量に有名声優を動員したゲームはないのでは。

「陰陽師」は、中国製ゲームでありながら、舞台設定は平安時代で、音声は完全に日本語です。
セリフはすべて中国語字幕で表示されており、画面上の文字は完全に中国語です。
ただし、中国のゲーム会社が開発・運営しているので、ゲームのシステムとしては中国式で、中国ユーザーのプレイ習慣に合う仕組みになっています。

「陰陽師」は間違いなく2016年に中国で最も流行ったゲームで、数々の栄誉に輝いています。
このゲームの最大の強みは、男性ユーザーも女性ユーザーもともに楽しめるという点です。

私もプレイしていますが面白いです。戦闘は手動とオートを選べます。

キャラデザが豊富で秀逸:

参考元のイメージがあるのかもしれませんが、完成度が非常に高く色彩や3Dも大変きれいです。
「和風RPG」と銘打つだけあって、キャラや背景が完全に和風デザインです。





キャラクターデザインの絵師は中国人が担当しているようです。
公式絵師は基本的にいまのところ公表されていないと思います。そのうち公式設定画集とか出ると思いますが・・・。
絵師は一人ではなく、複数からなるチームでデザインやイメージ設定を担当しているといわれています。

式神の一部



謎に包まれた魅力的なキャラ設定とストーリー:

「陰陽師」の最大の魅力は、ストーリーとキャラ設定が深いところです。
章ごとにまとめられたエピソードを通じて、次々と新しいキャラが登場し、どんどん先に進みたくなります。

最初の10分プレイしてみた時点で、「このシナリオは日本人が書いているに違いない」と確信しました。
声優がしゃべるセリフがすべて日本語なので、日本人がシナリオを書いているのはある意味当たり前なのですが、スタッフ情報の中に、シナリオ作者が誰なのかは長らく明らかにされていませんでした。
2016年12月下旬に、シナリオを担ったライターグループのことが記事になってはじめて、Qualia(クオリア)という日本のシナリオライター集団が「陰陽師」のシナリオを提供しているのだと知りました。

Anitamaインタビュー:「スマホゲーム「陰陽師」のシナリオ創作の背景~シナリオグループQualiaインタビュー」
http://www.anitama.cn/article/849dd43c8b3adf1b

インタビューによると、ゲーム制作会社である中国の網易が原案及び要望を示し、Qualiaがシナリオを制作したと語られています。
シナリオライター集団・クオリア http://gamequalia.blog.fc2.com/

なお、音楽を提供しているのも日本人です。
映画音楽を多く手がける日本の作曲家梅林茂が提供しており、オリジナルサウンドトラックの曲名も公表されています。

コスプレや同人誌も流行っています。
コスプレのレベルが異常に高いです。担当デザイナーが衣装の型紙をネットで公開してるのかと思うほど、コスプレの衣装が精巧に作られています。使っている素材もいいです。

 

人気の高い式神SSR・大天狗 (2016年12月3日 上海COMIC UP19)

  

犬神 友達の雀さんも一緒にいます。

  

式神 傀儡師 この復元度、もうすごいとしかいいようがありません。

  

式神いろいろ


網易公式で、同人イラスト、同人小説も大々的に募っています。網易の傘下には「Lofter」という中国版Pixivのようなサイトがあるので、Lofter上で投稿イベントが行われています。



2017年1月現在、中国での「陰陽師」の人気はすでに成熟期にあります。
リリース直後に食いついたユーザーは2016年秋からプレイしているので、そろそろ「卒業」するユーザーも出てきています。
そのため、運営側は、新しい式神をリリースしたり、レアの出現率を上げたり、新規ユーザーの獲得と人気の維持に努めています。

「陰陽師」はカードゲームの要素にバトル、RPGをミックスさせたよくできたソーシャルゲームです。
ただし、キャラデザ、設定などに既存の人気ゲームの影響が折々にかいま見られます。「これどっかで見たな」と思うこともありますが、それは今の時代のゲームには回避し難いことかもしれません。

また、ビジュアル的には入りやすいですが、とにかく時間を要するレベル制RPGなので、食いつきの早いコアユーザーが卒業していった後、ライトユーザーをどこまで取り込めるかが課題になると思われます。

もっとも、「陰陽師ブーム」がいずれ収束するとしても、もうすでに十分といえるくらいには流行りました。

【おまけ】

ネットシネマ「双程」に出演したコスプレイヤーでもある黄靖翔が2016年の冬コミC91で「陰陽師」晴明のコスプレを披露。出典:新浪微博@黄靖翔


中国では「陰陽師」の実写版映画の製作も計画中と報道されています。ドラマ化、漫画化、アニメ化、グッズ化など、網易は二次展開に積極的な姿勢をみせています。アニメは日本の制作会社が作る可能性もあるのでは。
http://fun.youth.cn/yl24xs/201612/t20161216_8954638_1.htm

「陰陽師」日本サーバー予約受付中。1月12日現在予約人数21万人を突破。25万まであと少しです。
https://www.onmyojigame.jp/

9人組の中国ボーイズグループ「X玖少年団」が4月2日に上海コンサート開催

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「X玖少年団」という9人組の中国ボーイズグループが4月2日に上海大舞台でコンサートを開きます。
「X玖少年団」は2015年に放送されたオーディション・リアリティショー「燃焼吧少年」(X-Fire)という番組で勝ち残った子たちから構成されるグループです。
番組は、16歳から24歳の16人の男子がアイドルスターを目指して様々な課題にチャレンジする、というもので、最終的に9人が選ばれて「X玖少年団」というグループになりました。
「玖」は数字の9を表す漢字です。“X9(エックスナイン)少年団”という意味です。


このグループは中国の大手芸能メディアグループ「天娯伝媒」(EE-Media)の所属で、大手動画サイト「テンセント動画」を主要配信プラットフォームとしています。つまり、天娯とテンセント(中国最大のITメディア企業)という強力なバックに支えられています。

オーディション番組「燃焼吧少年」(X-Fire)は、2015年11月21日から毎週土曜日夜10時から全12回に渡って放送されました。
制作は浙江衛視(浙江テレビ)、天娯伝媒(EE-Media)、騰訊視頻(テンセント動画)です。

番組「燃焼吧少年」の中で、まず、伍嘉成、谷嘉誠、郭子凡、趙磊の4人が選ばれて「X-Fire」というグループ結成に至りました。
そこから更に5名が追加されて「X玖少年団」になりました。
デビュー日はEP「以己之名」をリリースした2016年9月24日ということになるのでしょうか。

「X玖少年団」メンバー

伍嘉成 (X-Fireメンバー) リーダー
1993年7月18日生まれ、広東省台山出身、星海音楽学院出身
メンバーの中で一番人気。歌、ダンスともに安定した実力を持つ。
非常に明るい性格でムードメーカー。実力的にもキャラクター的にもグループの中心人物。褐色の肌でやや東南アジア系の顔立ち。

 

谷嘉誠 (X-Fireメンバー) 
1992年6月19日生まれ、雲南省昆明出身、成都体育学院 身長178cm
渋めの濃いルックスが特徴。RAP担当。

郭子凡 (X-Fireメンバー)
1997年7月11日生まれ、山東省青島出身、青島芸術学院舞蹈コース
柔和なルックスのダンス担当。

趙磊 (X-Fireメンバー)
1999年1月1日生まれ、福建省アモイ、アモイ第一中学(高校に相当)(声楽特待入学)
年少メンバーですが背が伸びてグループの中で最も長身になりそうです。
歌唱担当。二胡などの楽器もできる。

肖戦
1991年10月5日生まれ、重慶出身、重慶工商大学現代国際デザイン芸術学院、身長183cm
ネットドラマ『超星星学園』では主役を演じる。K-POPボーイズグループにいてもおかしくないルックス。
現在25歳で最年長ですが、もっと若く見えます。
切れ長の目が特徴。四川、重慶地方にはこういうかんじの目の人が多くいます。李易峰と同系統の顔立ちといえます。
特技はイラスト、デザイン。

 

彭楚粤 リーダー
1993年10月16日生まれ、広東省広州出身、星海音楽学院

夏之光
2000年1月4日生まれ、安徽省合肥出身、上海戯劇学院付属舞蹈学校

陳澤希
1992年3月24日生まれ、湖南省出身 カナダカールトン大学メディア専攻
留学帰りのRAP担当。

焉栩嘉
2001年9月23日生まれ、山東省煙台、深セン市南山区第二外国語学校
幼少期より芸能活動を開始。2017年4月公開予定の映画『容疑者Xの献身』(東野圭吾原作、中国版)では、主人公石神の少年時代役を演じる。
最年少メンバーで一番最後に加わった。

ほとんどのメンバーが、音楽、演劇、舞踏系の学校に就学しており、芸能人志望であったことが伺えます。
星海音楽学院、上海戯劇学院などは、有名な芸術系大学です。

アイドルなので、実際の年齢が多少高くても、童顔で細身のかわいいタイプのメンバーのほうが人気があるようです。
本来、平均年齢を引き下げるための年下メンバーの方が、ルックス的に先に大人になりそうなかんじがします。

番組「燃焼吧少年」や「少年頻道」では主力として活躍し人気もあったのに、「X玖少年団」のメンバーには入らなかった子もいます。そのため、ずっと応援していたファンはグループに対してやや複雑な気持ちを抱いているかもしれません。

ネットドラマ『超星星学园』(スーパースター・アカデミー)2016年9月29日配信開始 配信:テンセント動画 全30話


超能力を持つ少年少女たちが集まる学園を舞台とした、恋と友情と異能力バトルの物語。アイドルドラマです。
肖戦が主役のエリート超能力者の少年を演じ、伍嘉成がその友達役を演じました。趙磊、彭楚粤らはライバルチーム役で登場。

肖戦が演じる方天擇とヒロイン役を演じた王玉雯。


肖戦と伍嘉成。


2016年11月19日から毎週土曜日夜7時~「X玖少年頻道」(X9少年チャンネル)というネット生放送番組を配信していました。(2017年1月2日に1stシーズン終了)


2017年4月2日(日)には「X玖少年団」の上海コンサート(場所:上海大舞台)が予定されています。
チケットはすでに発売開始しています。チケットサイト:https://piao.damai.cn/116591.html
下記の画像は正式なポスターができるまでの仮画像です。
  

中国は社会が非常に速いスピードで変化しているため、ひとつのことをじっくりやるということは、なかなか難しい環境にあります。
ドラマを中心とした中国芸能市場は巨大で、俳優や歌手、いわゆる芸能人を志す少年少女は大量に存在します。
9人という大所帯のグループ活動を維持するのは相当ハードルが高いことではありますが、伍嘉成や肖戦などは逸材なので、これからの活躍を期待しています。

中国9人組ボーイズグループ X玖少年団「以己之名」上海コンサートに行ってきました

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「X玖少年団」という中国の9人組ボーイズアイドルグループの上海コンサートに行ってきました。
4月2日(日)の夜、上海大舞台で開催された公演は彼らにとって初の単独ライブになります。ライブの状況はテンセント動画でネット生中継されました。
「X玖少年団」については1個前の投稿をどうぞ。



中国のボーイズグループが上海大舞台という1万人クラスの会場で単独ライブができるのは快挙といっていいです。

韓国や日本と違って、中華圏にはいわゆる男性アイドルグループは少なく、台湾・香港を含めても、過去20年間に売れたグループは、小虎隊、F4、飛輪海、棒棒堂、TFBOYSなど、数えるほどしかありません。

ライブ当日、会場の周りには早くからファンの女の子たちが集まっていました。メンバーごとに私設ファンクラブが形成されています。

こんなにファン活動が盛り上がっていて楽しそうな現場は久しぶりです。

ファンはほぼ100%女の子で、20代が中心です。想像していたよりもファンの年齢層が高く、大学生以上、社会人が主力だと思います。
恐らく他のK-POPグループでの「ファン活動暦」を持つ、アイドルファンとしての経験値が高い子たちです。

特に人気があるのはリーダーの伍嘉成です。
歌、ダンス、トークなど幅広く才能があり、性格は明るく、華奢な体形で愛嬌のある顔立ちです。アイドルとしての素質に大変恵まれています。



万能リーダー 伍嘉成 という意味です。バックは赤いカーネーション、文字部分は白いカーネーションでできています。



伍嘉成と年が近く、名前もよく似ているメンバー・谷嘉誠とセットで「嘉成兄弟」として応援している人が多いです。



すべてファン有志によるものです。



「嘉成兄弟」ファンが応援を練習中。動画を撮影していました。


地下鉄1号線/4号線の上海体育館駅に出された「嘉成兄弟」ファンの手によるコンサート応援広告。





長身のイケメン・肖戦のファンクラブ


透明感のあるダンサー・郭子凡のファンクラブ


“水のような少年”メインボーカルの一人・趙磊のファンクラブ


ダンスリーダー・夏之光のファンクラブ


グッズ販売に並ぶ長蛇の列。本当に長蛇の列でした。


上海大舞台は約1万人収容できますが、「X玖少年団」のライブではアリーナ席が満席、1階スタンド席がほぼ満席、2階スタンドは正面エリアの前列のみ埋まっていました。

オープニングからデビューEPに収録されている「永字八法」と「以己之名」と続けて歌いました。

そして、3曲目からはカラオケでした。

五月天(メイデイ)の「離開地球表面」、ジェイ・チョウの「可愛女人」、王力宏(ワン・リーホン)の「盖世英雄」など、中国人なら誰でも知っている超メジャーなC-POPのカラオケ大会です。
ここでジェイ・チョウや五月天、蘇打緑の曲を使えるのは、「X玖少年団」のプロデュースにテンセントという強力な会社が加わっているおかげと思われます。

そもそも、このグループはEPを1枚出しただけで、オリジナル曲が4曲しかないので、カラオケになるのは仕方のないことなのです。

むしろ、安易にトークやゲームなどに走らずに、歌・ダンスのパフォーマンスで2時間埋めたのは立派だったと思います。

また、単なるメジャーC-POPのカラオケではなく、ユニット、ソロなどもあり、なかなか工夫が凝らされていました。
とくに「極楽浄土」を9人でやるセンスには感服です。あの衣装、あの振り付けで「極楽浄土」をやったのは大拍手です。

普段からネット媒体で活動を展開しており、ファンの声が届きやすいためでしょうか、ファンサービスに富んでいました。

テンセント動画 「X玖少年団」4月2日上海コンサート





BLというわけではないですが、とにかく伍嘉成と谷嘉誠のカップリング人気がすごいです。
ファンの期待に応えて(?)「嘉成兄弟」男同士のピアソラタンゴ。


ダンス担当・夏之光と郭子凡のダンス「大魚」。すごかった。


K-POPの実力のあるグループと比べると、技術的には劣るかもしれませんが、ダンス、歌ともに、アイドルとして人を楽しませる分には十分だと思います。
そして、メンバーはすごくスタイルがいいです。とにかく細い。足がマッチ棒のように細いです。
平均身長も高く、180cmを超えていると思われるメンバーが4人ほどいます。

ライブを実際に見てみて、いままであまり注目していなかったメンバーの良さが分かりました。
夏之光(※メンバーの名前です)は、まだ17歳なのに大人っぽいダンスが魅力です。ダンスのセンスが良く、余裕がみられます。
焉栩嘉は最年少ながら舞台度胸があり、あざとい可愛さを振りまいています。メンタル強そうです。

「X玖少年団」のオリジナル曲は悪くない、というか、かなりいいのですが、個性的とは言いがたく、EXOとSuperJuniorの中間のような楽曲です。
「Be A Man」や「B.O.Y.S」はすごくいい曲だと思うのですが、雰囲気がSuperJuniorにそっくりです。

彼らは主にネット媒体で活動しているにもかかわらず、映像の作りがあまり良くないのが気になります。
ライブはネット生中継され、生中継終了後は無料で動画を視聴できますが、映像よりもライブの方が全然よかったです。
カメラワーク、画質などがいまひとつ良くないので、もったいないです。

9人それぞれ個性もあり、素質もあるので、もっと売れてほしいです。
いまはK-POPの影響が強すぎるのが弱点になるかもしれませんが、パフォーマンスを披露する場が増えて、彼ら自身の個性を表現できることを期待しています。


東野圭吾『容疑者Xの献身』が中国で映画化--『嫌疑人X的献身』を観てきました

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東野圭吾の小説『容疑者Xの献身』が中国で映画化されました。
2017年3月31日より中国全土で公開され、公開から10日間で興行収入3.6億人民元(日本円で約58億円)を突破したと報道されています。
これは中国映画としては上々の成績です。

中国映画版『容疑者Xの献身』--中国語タイトル『嫌疑人X的献身』

  

『容疑者Xの献身』は、2008年に日本で映画化、2012年に韓国で映画化されています。

中国映画版で主人公の物理学者・湯川(中国版では唐川)を演じたのは、王凱(ワンカイ)という俳優です。

王凱(ワンカイ)1982年生まれ、身長182cm、北京出身。
王凱はいま中国でものすごく売れてる俳優です。2015年の大ヒット中国ドラマ『琅琊榜』(ろうやほう)の靖王役で知名度が一気にアップし、スター俳優に。


数学の天才・石神役(中国版では石泓)を演じたのは張魯一。
1980年生まれ、北京戯劇学院出身、身長182cm。俳優としてのキャリアは10年以上ですが、ここ2~3年の間に『麻雀』などヒット作品に恵まれ、第一線で活躍しています。



花岡靖子役(中国版では陳婧)は林心如(ルビー・リン)が演じました。林心如は20年以上第一線で活躍する、中華圏では誰もが知っている有名な台湾出身の女優です。



監督:アレックス・スー
アレックス・スー(蘇有朋)は台湾出身で元々俳優です。多くのドラマ、映画に出ています。3人組アイドルグループ「小虎隊」のメンバーとしてデビュー。最近は映画監督としても活躍。
写真左がアレックス・スー。本人は出演していません。中央が王凱、右が張魯一。



音楽:大島ミチル。作中では吹奏楽が重要な要素として出てきます。人物、特に石神の心情を表す上でも音楽の果たす役割は大きいです。

東野圭吾の小説は中国でものすごく人気があります。
大手書店の売上ランキングでは、常に東野圭吾の作品がランクインしています。
『容疑者Xの献身』を映画化する以上、話の面白さは保証されているのだから、出来が悪かったら完全に制作スタッフのせい。と思われており、制作側は大変なプレッシャーだったのではと思います。

また、主人公の物理学者・湯川は、日本版では福山雅治が演じて当たり役となっています。
福山雅治はアジア圏のファンの間では「理想の男性」の具現者として崇拝されており、このこともプレッシャーの一つになったのでは。

東野圭吾ファン、福山ファン、既存の日本・韓国の映画を観た人々からの期待と厳しい目に晒されながらの映画化となりましたが、中国版はとても丁寧に作られた良い映画でした。

今回の中国での映画化にあたり、東野圭吾先生からは次のようなメッセージが寄せられています。



メッセージの中でも「映画大国」と言われているとおり、2013年前後から中国の映画制作力は飛躍的に向上しました。

特に映像技術は、最新・最高級の設備と技法を取り入れ、本当に立派な映画を作れるようになっています。
俳優、女優の層も厚くなりました。

王凱(ワンカイ)をキャスティングしたのは、王凱本人が人気と実力を備え、お客さんを呼べるスター俳優だということもありますが、
福山の影響が大きかったのではと思います。「福山が演じた役」のイメージを傷つけない中国俳優・・・というと人選が限られます。
王凱の持つ、ストイック、知的、清潔感といった持ち味がこの役にも大いに生かされています。

■中国版のアレンジと解釈

基本的には原作に忠実に作られていますが、中国社会の現状に合わせるため、細かい設定がローカライズされています。

人物設定でも若干の変更があり、中国版では、湯川は警察大学の物理学の教授という設定になっています。
そのため、犯罪の謎を解くことに対する使命感がより強まっています。

そして、ラストに挿入されるシーンは中国版独自の解釈だと思います。
最後に湯川と石神の二人のシーンが挿入されたことによって、石神の性格の印象がだいぶ変わってきます。

中国版『容疑者Xの献身』は湯川と石神がダブル主人公のような形で描かれています。
友人であり、ライバルであり、理解者であり、追い追われる立場となる二人の男が命をかけた頭脳戦を展開する・・・という側面が鮮明になっており、「デスノート」みたいな雰囲気があります。
この2人で「デスノート」を始めても全然違和感がありません。

ちなみに、湯川の周辺には女性がまったく登場しません。

湯川と石神が二人で山登りに行くシーンがあります。これは日本映画版の雪山に登るシーンを踏襲したものと思われますが、中国版では登山日和のピクニックになっています。
男二人が山でピクニックするシーンを観ることになり、「何のためのシーンだったんだろう??」と後になって疑問が沸いてきます。



あと、ラスト近くで王凱(湯川)が河辺をランニングするシーンは、あれは王凱ファンのためのサービスシーンなのでしょうか・・・?

中国では多くの新作映画が作られているのに、日本ではほとんど公開されません。
一般公開が難しいとしても、映画祭、若しくはチャンネル銀河などで、この映画が上映・放送されることを願っています。
日本の観客、東野圭吾の読者が観たら、いまの中国映画に対して新たな認識が生まれるのではと思います。

【おまけ】王凱(ワンカイ)の出演作品。 イケメン役しか見たことありません。
中国の俳優は比較的年齢が上がってからブレークするケースが珍しくありませんが、王凱もそれに該当するといえます。
全国的に知名度を得るきっかけとなった2015年の大ヒットドラマ『琅琊榜』(ろうやほう)靖王役。



汪兆銘政権時代を舞台とする戦時スパイもの『偽装者』(2015年)。
胡歌 靳東、王凱など『琅琊榜』(ろうやほう)のメインキャストが出演。『琅琊榜』の爆発的人気により『偽装者』も注目を集めました。



難解な事件にあたる警察官の心理ドラマ『如果蝸牛有愛情』(蝸牛が恋に落ちたら)(2016年)では、有能な刑事役で主演。

官僚の汚職に迫る中国“反腐敗ドラマ”『人民的名義』大ヒット放送中

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いま中国では「人民的名義」というドラマが大人気です。2017年3月28日からテレビ放送開始(湖南テレビ)、大手動画サイトでも同時配信されています。
ドラマ「人民的名義」(人民の名義/人民的名义 /IN THE NAME OF PEOPLE)



監督:李路 脚本:周梅森 全55話(1話約50分) 出演:陸毅、呉剛、許亜軍、胡静、張志堅 、李光復など大量のベテラン俳優が出演。

京州市という中国の架空の都市の政府官僚による汚職をテーマにしたドラマです。
この種のドラマは「反腐敗ドラマ」というジャンルにあたります。

陸毅(ルー・イー)が演じる反汚職総局の若き局長・侯局長。検察官である親友の不審な事故の謎を追うため、京州市に赴任します。
急速な経済成長を遂げた京州市は、あらゆる領域で汚職が巣食っています。
複雑な人間関係を持つ役人たちの、いったい誰が汚職の黒幕なのか---。



反汚職総局(中国語:反貧総局)は実際に存在する政府機関です。検察機関に属する、官僚・役人の汚職を摘発するための機関です。
地名は架空の省、架空の市になっていますが、警察(公安)、検察、共産党組織、ドラマに登場する政府機関はいずれも実在する機関です。

警察、検察、市長、区長、省委員会(共産党組織)など多数の官僚・役人が登場しますが、誰が汚職の黒幕なのか、なかなか分かりません。
汚職はすでに刑事犯罪の域に及んでいます。黒幕つまり犯人は誰かを推理するというミステリー的な側面もあります。

登場人物はいずれも有能な高級官僚ですが、誰が汚職の黒幕であってもおかしくない、つまり全員怪しいというミステリアスなムードの中、話が進みます。

誰が汚職の黒幕なのか?汚職に至った理由と経緯は?
汚職に関わる人物は一人とは限らず、誰が誰を何のために幇助し、どういう利害関係が絡みあっているのか・・・。

脚本とベテラン俳優たちの演技が秀逸で、大人の心理ドラマが繰り広げられます。

分かりやすいヒーローである反腐敗総局の局長よりも、市政府の高官・李達康書記が大人気です。



直情的なところがあるけれど、庶民のためを思う心を持ち、社会と国の発展を願う人間味にあふれた人物です。多くの名ゼリフはネット上でも大流行。



一見普通の大学の恩師と教え子、夫婦、上司部下にみえても、その背後に複雑で意外な人間関係が隠されています。
大人の人間ドラマであり、恋愛要素はほとんどありません。

現実を鋭く描いてはいますが、ドラマとしてのエンタメ要素もあり、汚職役人の隠し財産を暴くシーンなどは、

漫画か!?

と叫びたくなる誇張された展開でした。しかしこんな漫画さながらの賄賂隠匿も「実際にありえる」との声もあります。
なお、予算をふんだんに使った重厚なドラマなので、こんなふうに誇張されたシーンでもチープになりません。

別荘に賄賂を隠匿。冷蔵庫に札束が。





白状した犯人。2階の寝室にもまだお金を隠してあるというので行ってみると・・・。

壁一面の人民元。



ベッドの下にも。



これは本当に漫画チックで驚きを通り越して爆笑のシーンなのですが、そのあと、現場でお金が全部でいくらあるのか、札束を数えるシーンになります。

そのシーンでは、おそらく本当の銀行業務経験者をキャスティングして、お札を高速で数えるさまざまなスキルが映し出されます。

こういったディテールのリアリティがすごいのです。

その優れた脚本を十二分に表現できるベテラン俳優たちの演技も素晴らしいです。

汚職は現代中国のもっとも大きな問題のひとつです。
ドラマの中では汚職を生み出す社会のありさまがリアルに描かれています。

汚職は急速な経済発展を遂げる上での必要悪なのか。
社会に矛盾があるから汚職が生まれるのか。それとも汚職があるから社会が歪むのか。
もし汚職役人を残さず逮捕したら、出勤できる人が一人もいなくなって本気で困ったことになるのでは・・・。

ということを考えさせられます。

本質的なテーマは、人間にとって本当の幸せとは何かということだと思います。

人々がお金しか信じない。
人間も政府も何も信じない。

という社会はいくら物質的に豊かになっても幸せな社会といえるのか。
理想を失わずに生きることは、本当に不可能なことなのか。

ということを、ドラマ『人民的名義』は描いています。

【おまけ】最近の中国ドラマのヒット作

『三生三世十里桃花』。2017年1月放送。古装ファンタジー。中国で最もヒットしやすいのがこのジャンルのドラマです。
架空の王朝や時代を背景とする色鮮やかな衣装と豪華なセット、CGを駆使した美しい映像が特徴。中国版特撮・・・?
主演は楊幂(ヤン・ミー)と趙又廷(マーク・チャオ)。


楊幂(ヤン・ミー)は中国で最も人気のある女優の一人。潤んだ大きな瞳と整った形の唇がトレードマーク。背が高く古装ものが似合うのが強み。


『微微一笑很傾城』2016年8月放送。
中国イケメン俳優の代表格・楊洋(ヤンヤン)主演。ヒロインは中国女優の鄭爽(ジェン・シュアン)。
オンラインゲームで知り合った大学生の男女が、ゲームの世界と現実を交差しながら恋に落ちるという現代ラブストーリー。
中国では大学生を主人公にしたドラマは意外と少なく、その中でもヒットする作品は更に少ないです。
ヒットしたのは楊洋(ヤンヤン)と鄭爽の人気と支持率の高さの表れといえます。



キャンパスライフとオンラインゲームの世界が巧みに絡み合います。オンラインゲーム、IT、大学生活、非常に中国らしい作品です。

中国女子アイドルグループSNH48の現在~上海版AKBからの“自立”

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「AKB48の上海版」としてスタートした中国アイドルグループSNH48。AKBの中国展開としてSNH48が設立されたのは2012年の10月、上海の専用劇場での定期公演がスタートしたのは2013年の後半です。
まず、一期生たちによるチームSができました。それからすぐに二期生のチームNが結成され、三期生、四期生・・・と積極的に展開してきました。

第3回総選挙(2016年7月) 第1位は鞠婧禕(キクちゃん)


2016年6月、日本のAKBサイドとSNH48の中国運営側が決裂したというニュースが流れました。今から1年ほど前のことです。

どうなることかと思いましたが、約1年が過ぎたいま、結果的にいうとSNH48はこれまでどおり上海で活動しています。

SNH48は5チーム体制で活動しており、七期生が各チームに配属され、全員合わせるとメンバーは100人近くに上ります。

さらに「姉妹グループ」北京BEJ48、広州GNZ48があり、最近は新しく沈陽SHY48もできました。
今後も中国の地方都市に拡大していく構想のようです。

結果的にいうと、日本側と提携関係が解消されても、SNH48のメンバー大量脱退はありませんでした。
メンバーがやめない(或いはやめることができない)以上、運営側に何らかの変化があったとしても、ファンは離れません。

これまでSNH48はAKBから提供された楽曲の歌詞を中国語に変えて歌っていました。
専用劇場での公演では、秋葉原のAKBシアターで上演されていたのと同じセットリストを、中国語版でやっていたのです。
「最終ベルが鳴る」や「シアターの女神」などをやっていました。

AKBの曲を使えなくなって、SNH48側は自力で楽曲を用意できるのか?というの疑問が持たれました。

これも結果的にいうと、現在オリジナル曲で公演をやれています。

今年に入ってから、各チームが次々と「SNH48オリジナルセットリスト」を発表しました。
チームH「美麗世界」、チームX「夢想的旗幟」、XⅡ「代號XII」など各チームのオリジナルセットリスト公演を観ましたが、構成や演出に改善の余地はあるものの、全体的にいうと悪くないです。

すごく感動するような名曲かといわれると、そこまでではないのですが、一定のレベルはクリアしています。

衣装や振り付けも、目を奪われるとまではいえませんが、なかなかよくできていると思います。

現在SNH48の常設劇場での公演チケットは非常に入手しにくくなっています。
(北京BEJ、広州GNZ、沈陽SHYは完売しない公演も多いです。)

チケット発売方法は、完全実名制が実施されています。
チケットを購入するためには、まず公式サイトでユーザー登録をし、身分証明書、パスポートなど写真付き身分証の画像をアップロードし、認証を受ける必要があります。
身分証でチケットを会場で発券し、入場する際に再度身分証チェックがあるという、かなり厳しい本人確認があります。

会場のチケット発券機。



会場ロビー。現在SNH48は5チーム体制で活動しています。




毎週火曜日の夜8時に翌週の公演のチケットを発売します。
平日(主に水、木)は夜19:30開演で、終演は22:30頃です。
金曜日は開演が30分早く、夜19時からです。
土日は、14時公演と19時公演の2公演。

上海の場合、5チームあるので各チームが日替わりで公演します。
先着制の公演と抽選制の公演がありますが、抽選販売が徐々に増えています。

5チームの中で圧倒的に人気が高いのがチームNです。総選挙で上位に食い込むメンバーが大量に所属するエース集団です。

一期生の多いチームSも人気があります。

各チームにエース級の人気メンバーがいますが、人気があるメンバーは特にひと目見て納得するかわいさです。

SNH48の中国での知名度はかなり上がっており、イメージキャラクターとして広告やイベントに出たり、女優としてネットドラマに出演したりしています。

メンバーの中には、芸能活動に対して明らかに貪欲な子と、欲はあるけれど表には出さない子と、あまり執着のない子がいると思います。

■これからのSNH48

SNH48は何もかもが順調というわけでは決してなく、常に変化と波乱、或いはトラブルと共存しています。

まず、いま心配されているのは劇場のことです。
SNH48の専用劇場がある地区は急ピッチで再開発が進んでおり、いつ立ち退きになってもおかしくない場所にあります。

もともと商店を兼ねた集合住宅が密集する旧市街地です。いまでは地下鉄も2路線開通し、再開発の波がすぐそこまで押し寄せています。
1ブロック先の地下鉄駅に近いエリアはもう立ち退きがほぼ完了しています。

SNH48専用劇場「SNH48星夢劇場」歴史建築物を改造して作られた劇場。



劇場のある十字路。



次に心配なのは、「AKBのセットリストをやる」という制約が外れたために、徐々にパフォーマンスのレベルが下がっていくのではという点です。
これまではAKBのセットリストをやっていたので、セットリストにある曲をこなさなければなりませんでした。
ひとつのパフォーマンスを完成させるには、覚える側には練習時間がかかり、教える側には労力がかかります。
時間と手間のかかる楽曲を披露するより、ステージ上でトークや簡単なゲームをして時間をつぶす方がずっと楽です。
いまはまだ「AKB式の公演」を維持していますが、そのうちに楽な方向に流れるのではと心配です。公演に覇気がないと、観ている側もなんとなくつまらなくなってきます。

SNH48が本格的に活動を開始したのは2013年後半です。あの時期は尖閣諸島問題で日中関係は非常に冷え込んでいました。
SNH48にとっても逆風でした。あの時期を乗り越えるのは本当に大変だったと思います。

現在中国ではSNH48は女子アイドルグループの成功例として認識されており、SNH48の亜流のようなグループがたくさんあります。

SNH48がここまで来れたのは、最初にAKBのフォーマットがあったからというのは疑いようがありません。
常時公演という概念からはじまり、ユニット、生誕祭、握手会、総選挙といった数々のイベントのノウハウがあったからこそです。

もう一つ気になるといえば、ファンは以前の方が元気でした。
売れてなかった頃の方が、会場が盛り上がっていました。
以前は、常時公演は7割くらいしか埋まっていませんでした。
それでも、いまよりもコールの声がずっと大きく、ファンが真剣に応援していました。客の半分以上が常連でした。サイリウムの振り方も力がこもっていました。
いまは公演中もスマホをいじっているお客さんが多いのが気になります。

インド映画『Dangal』(摔跤吧,爸爸! )中国で大ヒット~非米中映画・日本映画の可能性

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インド映画『Dangal/ダンガル』(中国語タイトル『摔跤吧,爸爸!』 )が中国で大ヒットしています。
『摔跤吧,爸爸!』 は「レスリングパパ」という意味で、アマチュアのレスリング選手だったインドの田舎町に住む父親と、レスリング選手として大成する二人の娘の物語です。実話をベースにしています。



エスニック色の強いインドの田舎町を舞台とし、インパクトとメリハリのある映像に引き込まれます。
役者の演技、演出、カメラワークは一流の水準です。
視覚的にはスパイスが効いていながら、情緒面では、家族愛、女性の地位、経済格差、夢の実現など普遍的なテーマが取り上げられており、自然に共感することができます。

『Dangal』にはインド映画おなじみの、登場人物が唐突に歌い踊りだすシーンはありませんでした。
中国公開版は140分で、インド原版は161分といわれています。約20分がカットされたことになります。
全体のテンポを上げるためインド制作側が編集処理を行ったと言われていますが、カットされた部分の中には歌・踊りのシーンがあったのかもしれません。

『Dangal』は6月30日までの時点で興行収入12.9億人民元を記録しています。
中国の2017年度の興行ランキングで4位です。(2017年の現1位は『ワイルドスピード8:アイスブレイク』の26.94億元=約430億円)
歴代の映画興行成績の中では、16位につけています。

ランキングの上位は常に中国本土・香港、アメリカの作品で占められているので、米中以外の映画が上位に食い込んだこと自体、画期的なことです。

中国でも『3 idiot』(邦題『きっとうまくいく』)が高く評価されており、インド映画に対する関心・信頼の土壌があったこと、
今年の上半期は似たようなハリウッド大作ばかりが続き、人間ドラマを描いた『Dangal』はとりわけ歓迎されるタイミングであったことなども、ヒットの要因になっていると思われます。

昨年2016年の12月、中国で『君の名は。』が公開され大ヒットしました。
『君の名は。』の中国での興行成績は5.76億元です。日本円にすると約92億円です。

この数字であっても、2016年度全体でみると25位にしかならないのです。

これはどう評価するべきなのでしょうか。

中国で『君の名は。』は大ヒットしました。しかし興行成績の数字からみると、このインドの映画の半分以下ということになります。

『Dangal』のヒットによって、「中国市場では、ハリウッド・中国以外の作品で最も競争力があるのはインド映画」という評価ができてしまうのです。

歴代映画興行成績のトップは、2016年正月映画として公開された、チャウ・シンチー監督の『美人魚』(マーメイド)の33.9億元です。
日本円に完全すると542億円になり、お化けのような数字です。この記録はなかなか破られないだろうと言われています。

映画は、商業映画である以上、ヒットしなければならないのでしょうか?

中国で「ヒット」といえるためには、10億元(約160億円)を軽々突破しなければヒットとは呼べません。
そのためには、作品の力だけではなく、上映期間やシネコンでのスケジューリングで優遇される必要があり、大資本のバックを持つ国内映画・ハリウッド映画が必然的に有利となります。

商業的に「大ヒット」といえなくても、評価と話題を集める作品も少しずつ出てきています。
現在上映中のチベット巡礼を描いた作品『岡仁波斉』(Paths of the Soul)は、上映館が限られる中、口コミで話題になり興行成績を伸ばしています。


日本では邦題『ラサへの歩き方 祈りの2400km』として、7月23日に公開予定です。
http://www.moviola.jp/lhasa/

2017年下半期は、何本かの日本映画の中国公開も予定されています。
『深夜食堂2』2017年7月18日公開予定



公開が待たれる『銀魂』実写版。 『君と100回目の恋』

  

映画の存在意義は決して興行成績だけではありません。
しかし、いまの日本映画が「日本カルチャー好き」という特定カテゴリの中国人以外も魅了することができるのか---?
その答えは、興行成績の数字として表れるのではと思います。

2017年夏の中国映画『戦狼Ⅱ』『建軍大業』『二十二』~『戦狼Ⅱ』が歴代興行収入記録を更新

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この夏公開された『戦狼Ⅱ』という中国映画が、歴代興行収入トップの記録を塗り替えました。
公開から1ヶ月足らずで興行収入人民元54億元(約870億円)を突破し、現在も記録を伸ばしています。

『戦狼Ⅱ』(Wolf Warriors Ⅱ/ウルフウォーリアー2)2017年7月27日公開 126分 監督・主演:呉京



あらすじ:
中国人民解放軍の優秀な特殊兵だった主人公は大切な人を失ったことによる葛藤から軍を離職し、アフリカに渡り用心棒のような暮らしをしている。
主人公の滞在する地域は疫病と武装集団が蔓延する危険な地域だが、中国資本の投資もさかん。
あるとき、現地の反政府勢力による武力行使が起き、奥地に建設された中国資本の工場が危険地帯の中で孤立してしまう。
工場の中にはたくさんの中国人労働者が残されている。主人公は同胞を救うため、圧倒的な武装力を有する敵の傭兵と戦う・・・
という、銃撃武装アクション映画です。

これまで中国映画市場の歴代興行成績トップだったのは、2016年の正月映画として公開されたチャウ・シンチー監督の『美人魚』(マーメイド)です。
『美人魚』(マーメイド)の33億元(約530億円)という数字は1年以上破られることがありませんでした。
ここ1年ほど、中国映画市場の成長速度はやや鈍く、ヒット作でも『美人魚』の33億元には到底届きませんでした。
ところが、『戦狼Ⅱ』は公開から僅か11日で30億元を突破し、23日で50億元を超える驚異的な興行収入を記録しました。

最近中国では「主旋律電影」というものが流行っています。
「電影」は中国語で映画のことで、昔からある言葉です。
「主旋律」というのは、割と最近使われるようになった言葉で、「国家の主流の価値観を宣伝・発揚する」という意味を持ちます。
つまり、国が掲げるイデオロギーを支持する映画のことであり、従来型の言い方をするとプロパガンダ映画です。
しかし、昨今の「主旋律映画」は、今の中国の潤沢な資金力と最新の映像技術を駆使したド派手なエンタメ映画に仕上がっています。

『戦狼Ⅱ』は、最初から最後まで激しい銃弾戦シーンが続きます。
冒頭のアフリカの市街地で逃げ惑う市民を乱射、爆撃するシーンや、孤立した工場の中で無防備な労働者がドローン武器に撃ち殺されるシーンなど、衝撃的な殺戮シーンの連続です。





そんな中、主人公を始めとする中国人の主要登場人物は、超人的な精神力と身体能力で危機を突破していきます。
中国人民解放軍がアフリカ洋上の駆逐艦からミサイルを次々と発射し、現代軍事力をアピールするシーンもありますが、大半は主人公の武術をベースとした格闘能力によって突破口が開かれます。

この映画の成功によって、中国の一般大衆が好む要素は、「武術アクション+愛国心」であるとことが証明されたと言われています。

元軍人が国や国民を守るために命を懸けて戦うというストーリー展開を通じて、最終的には、中国の軍事力の強さ、国際的影響力、政治力の強さを賞賛・アピールする作品となっています。
中国パスポートが画面いっぱいに映し出され、祖国はどんなときも国民を見捨てない---というメッセージも添えられます。
この一言のために、機関銃の音が2時間も鳴り続くアクション映画を作ったのか・・・と思うと、なんともいえない感動が沸き起こります。

『戦狼Ⅱ』の戦闘シーンは誇張された表現ではあるものの、現代の脅威としては、宣戦布告を経た国と国の戦争よりも、いつどこで巻き込まれるか分からない政治動乱やテロの方が危険性が高いと考えると、ある意味では現実味があります。



2017年は中国人民解放軍の建軍90周年です。

軍の創設記念日である8月1日に向けて、多数の政治キャンペーン色の強い映画やドラマが公開されました。
その代表といえるのが、『建軍大業』という映画です。



『建軍大業』2017年7月27日公開。監督:アンドリュー・ラウ、製作:韓三平 8月末現在の興行収入:3.85億元(約62億円)
主演:劉燁(毛沢東)、朱亜文(周恩来)、霍建華(蒋介石)、黄志忠(朱徳)

EXOのレイや、根強いアイドル人気を持つ俳優馬天宇(マー・ティエンユー)、ヒット作を飛ばすイケメン俳優・李易峰(リー・イーフォン)など、若手からベテランまで主役級の俳優が大量に出演する超豪華キャストです。

1927年4月の上海四一二反革命政変から、1927年8月1日の南昌武装決起、その後の三河壩戦役にいたるまでの約半年間を描いた作品なので、日本軍はまったく出てきません。

しかし、『建軍大業』は、せっかく近代史を描いているのに、時代考証の粗さが批判を浴びています。

当時ありえないはずの整った軍装、威力の強すぎる爆弾や銃弾の数々は、かなりの違和感を覚えます。
はっきりって突っ込みどころ満載で、最初は真面目に見ていた観客も、40分くらいすると何となくざわつき始め、1時間を過ぎた頃には耐えられなくなり、スマホをいじりだしてSNSのグループチャットに突っ込みどころを呟きはじめるという様相です。

EXOのレイ(張芸興)は、軍の創設に貢献を果たすも20代前半の若さで犠牲となった軍人・盧徳銘を演じる。
あまりにもキレイで儚く・・・なんといったらよいのかよく分かりません。


人民解放軍の創始者の一人である葉挺を演じるのは、男性ボーカルオーディション番組「快楽男声」から出てきた歌手・俳優の欧豪。
絵になりすぎる蜂起のシーンは賛否両論でした。歴史映画というよりはミュージックビデオのようで、いまにもライブが始まりそうとの声が続出。



そもそも、いまの価値観や美的感覚に基づいて、90年前の革命期を描くことに違和感があります。

しかし、仕方のないことでもあると思います。
なぜなら映画を観る側は、常日頃お金のかかったスピーディで華やかな映像を見慣れています。
そんな観衆を退屈させないためには、ド派手で刺激に満ちた戦闘シーンを用意せざるを得ません。
その結果、革命を崇めるための誇大表現により、本来の歴史を傷つけてしまっているように思います。

しかも敵陣の最終的なボスである蒋介石は作中では恋愛にいそしんでいるだけにみえます。それなのに共産党側は何万人もの犠牲を出し、なんて理不尽なんだ・・・・と悲しくなる映画でした。

「ものすごくお金をかけた軍装コスプレ映画としては最高」などとSNS上では揶揄されています。

元SuperJuniorのハンギョンが軍閥のプリンスであった張学良を演じる。結構似ていると評判に。



もうひとつ、この夏話題になった中国映画があります。

『二十二』 2017年8月14日中国全国で公開。 監督:郭柯 公開版の尺は99分。


中国の元慰安婦のインタビューをベースとして制作されたドキュメンタリー映画です。
タイトルの『二十二』は、「過去20万人以上存在した慰安婦は、映画撮影当時の2014年には22名しか生存が確認できず、その22人を訪問して撮影した」ということから、『二十二』というタイトルがつけられています。
作中では、主に4人の生存者とその家族を追っています。

2014年に撮影され、2015年には映画が完成していましたが、上映するための資金がなく、クラウドファンディングにより資金を集め、2017年7月に全国上映にこぎつけたという背景があります。
クラウドファンディングには32099人が協力し、エンドロールに協力者の氏名リストが流れることが話題となっています。

このような題材を扱ったこと自体は賛同を集めており、ドキュメンタリーとしては異例の1.65億元(約26億円)という良好な興行収入を上げています。
「中国で全国公開された慰安婦のドキュメンタリー映画」というと、身構える人も多いのではと思いますが、実際に観てみるとびっくりするほど淡々とした映画です。
ドキュメンタリーであることを差し引いても、かなり淡々とした作風です。政治的な訴えがあることを予期して観に行った人は、拍子抜けすると思います。
良くいえば、余計な脚色や演出を避けてありのままの姿を描いたといえますが、一方では、監督が何を訴えたいのかメッセージ性が感じられないという意見もあります。

この夏公開された3本の作品、『戦狼Ⅱ』『建軍大業』『二十二』はいずれも、いまの中国のある種の勢いに乗った映画とえいます。
色々な意見がありますが、変化を続ける中国のひとつの夏を刻んだ作品です。

【おまけ】銀魂 実写版 2017年9月1日中国で待望の劇場公開。
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